第5話 鬼ごっこからの空き教室
「くっそ・・・、どうしてこうなったーっ!?」
「待てゴラァ!?」
「パンツは・・・パンツだけは許しちゃいけねぇ!!」
「いい機会だから天才はここで殺すっ♪」
現在、光輝は絶賛校内をクラスメイトという名の刺客から逃走していた。魔法学園というだけあってこの学校、とてつもなく広い。教室以外にも資料室や倉庫、特殊な植物や生き物を飼育、栽培する部屋など多岐に渡りいまだ光輝もその全てを把握出来ないほどだ。そんな広さだから教師が生徒の動向全てを把握出来る訳もなく・・・。
「なぜこのオレが授業中に鬼ごっこなんて真似をー!?ちくしょうめっ!!」
廊下を全力疾走する今の構図が出来上がる訳である。
「くそっ!誰でもいいから止めてくれっ!オレは・・・、オレは授業をさぼりたくないんだぁぁぁぁーっ!!!」
「るせぇっ!人生という名の授業を一生さぼれるようにしてやるよぉっ!!」
怒声と共に後ろから火炎魔法が飛来。光輝の頬をジュッ、と掠めていく。
「あっちぃ!? あいつら殺す気かっ!?」
魔法の射線から外れる為、光輝は魔力強化を利用してジグザグに廊下を疾走、曲がり角を次々と曲がって躱していく。
「どうにか次の授業までに教室に・・・、教室に戻らなければ・・・!!」
そんな命懸けの逃走の中、光輝が考えるのは次の時間に授業をちゃんと受ける事だ。何故なら才賀光輝という男、姫日葵の前でこそ奇行が目立つが元々は天才も天才。それはただ成績が良いだけではなく、根の部分で物凄く真面目なのだ。だからこそ。
「オレは全力で授業に戻るぞ姫日葵ィィィッ!!!」
顔を赤くしながらそんなことを叫び、己に喝を入れる。もちろん、教室に戻ってあの素敵な女の子の笑顔を見たいという下心はしっかりセリフの中に入れつつも。
「くっ!?だがどうすれば!?ヤツら、半端な事じゃ逃がしてくれんぞ!?」
後方には悪鬼のようなオーラを宿して追随するクラスメイト達。その数は十を超える。
「さあさあどこまで逃げられるかなっ!?」
「うっふふ、追い詰められて苦しげな天才・・・、脳が震えるっ!!」
「いや、明らかにさっきから関係ない私怨を撒き散らしてるヤツがいるよなっ!?」
だが、ツッコミを入れている間にもヤツらは接近してきていた。元々、体力の無い光輝だ。いくら魔力でカバーしても限界は近い。
(どうするどうする!? 謝るか!? いっそ土下座すればさすがに次の授業には帰してくれるのでは・・・)
そんな期待を込めてちらり、と光輝が後ろを見れば・・・、
「「「オロロロロロロロローーーン!!!」」」
憎悪、嫉妬、そんな感情が渦巻く怨念集合体が迫っていた。
(いや絶対に殺される・・・)
一瞬でそう悟った光輝は走る、走る。
「くそっ!もうヤバい、先に体力が限界だー!」
疲労で足がもつれそうになる光輝。そうして曲がり角を曲がった所で突然、光輝は身体がふわりと浮くのを感じ、そのまま空き教室へと引きずりこまれた。
「うおっ!?これは・・・!?」
突如、感じた柔らかい感触。その正体は。
「しーっ・・・。こーくん、捕まえましたよ♪」
「おま、えは・・・!?」
光輝の身体に腕を回して密着し、口元に指を当てて可愛く微笑む小柄な女生徒だった。
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