第3話 不意打ちの愛されヒロイン
「おー・・・、ウワサをすれば、だな」
テーブルの向かいで呑気に人気定食、”おばちゃんの愛情たっぷりうどん定食”をすする太地。だが当の光輝はそれどころでは無い。あまりに不意打ちすぎて引きかけていた汗がまた噴き出していた。
「お・・・、おお! さっきぶりだな
「え?光輝くん、今日は曇ってるよ?そんなにお散歩したいの?」
「はぅぅ!? あ、いや・・・、そう!常にそういう気持ちでいなければ学生としての本分がだな・・・!?」
「そっかあ、あれだけ走ったのに才賀くんはやっぱり努力家だね?偉いよ才賀くん」
そう言って姫日葵は自然と光輝の横に立つといまだ疲労で上げる事の出来ない頭を優しく撫で始めた。不意に感じた柔らかい彼女の手の感触が火照った身体に染み渡り、ずっとそのまま彼女に身を委ねていたい気持ちになる。
(暖かくて気持ちいい・・・、このままずっと・・・)
「って・・・ちがあぁぁぁぁぁううっっっ!!!」
「キャッ・・・!? な、なに才賀くん?ごめんイヤだった?凄く疲れてそうだったからつい・・・」
(ああ、シュンとした顔も素敵すぎる・・・じゃなくてっ!! マズイ・・・何を言っていいか分からん・・・!?)
焦った光輝が太地の方へ助け舟を出してもらうべく目を向けると、視線の先で今にも吹き出しそうなのを肩を震わせてこらえる太地がいた。
(あのヤロウ・・・!!おい、太地!笑ってないで助けろ!!)
光輝は太地の事を思い浮かべて心の中でそう叫んだ。すると大地の方からも応答が返ってくる。
(お?緊急事態発生か?仕方ねえな、昼飯1回でどうだ?)
(この外道が・・・! 悔しいが乗せられてやるから早くどうにかしてくれっ!!)
(約束だな?はいはいっと・・・)
念話魔法。互いに繊細な魔力の扱いが出来、なおかつ両者の信頼関係が無いと使えない高等技術なのだがそれを駆使して光輝は太地に助けを呼んだ。無論、自分ではこれ以上姫日葵とまともに話せる自信が無いからだ。
「じゃあ・・・、ちょーいちょいっと」
そんな太地が箸を持った手を軽く振ったその瞬間、
「キャアッ!? や、やだ・・・」
「なァッ!!?」
姫日葵の学生服のスカートがひらりと舞い上がった。それはもう自然に。そして光輝はバッチリと可愛らしいピンク色の布を視界に収めてしまった。言わずもがな、太地の風魔法だ。
「なんで!? 才賀くん・・・、その・・・、見た?」
(ギャアアアアッッ!? 何してんだ太地!? でも恥じらう顔も可愛い・・・じゃなくてえぇっ!!違う・・・、何か違う事をっ!!)
そして咄嗟に光輝は口走っていた。
「は、はっ!お前の下着の事か?別にオレ様はそんな物見ても何も思わんぞっ! フハッ、フハハハハーッ!!」
「・・・っ! 才賀くんのいじわるっ!」
目に涙を溜めてそう言うと姫日葵はさっさと歩いていってしまった。
「あ・・・、ああ・・・。雛森さん・・・」
(またオレはやってしまったのか・・・! オレは雛森さんと仲良くしたいのに口を開けば皮肉な事ばかり言ってしまう・・・!くそっ!くそおっ!)
そんな悔しげに嘆く光輝に太地は厳かな表情で指を立てこう言った。
「光輝・・・、明日は”おばちゃんの愛情どっぷりカレー定食”でいいぜ?」
「うるさいっ! 奢るわけないだろう、交渉決裂だっ!」
「えー!? なんでだよー?」
光輝の魂の叫びが食堂に木霊するのだった。
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