「溶解」
「…君も、パパとママと、同じ事、言うんだね。」
「えっ?」
思わぬ返答にまごつく。パパ?ママ?
「私が、最初にはっきりと空を飛びたいって思ったのは、小学五年生のとき。」
彼女はゆっくりと外へ向かい歩きながら
「友達と遊んでた時に、ふざけ過ぎてブランコから落ちたの。頭を強く打った気がしたんだけど、それよりも目に飛び込んできた空の青さが体を突き抜けて、信じられない
彼女の
それは多分、彼女の言う“初めて空を飛びたいと思った時”と同じ輝きを
「帰ってから、頭を打った事も忘れてパパとママに言ったわ。『あたし、空を飛びたい!将来は空になって、青とまざるの!』って。その時の二人の顔は忘れられない。まるで、
それからすぐに病院へと連れていかれた。と彼女は続けた。
「パパとママは私にずっと言って聞かせた。『お前は世界一可愛いんだ。死ぬなんて
それがたまたま僕だったというだけだった。つまり代わりはいくらでもいる。突き付けられた事実が
「じゃっ、じゃあ、僕と飛ぼうよ。こうなったら
空でもどこでも、二人だったら飛べるでしょ⁉」
彼女は
彼女を失いたくない
「世界一綺麗な青空なんて、僕らが空を飛んだら
腕を伸ばして、今度は僕が彼女の手を取る。
街の中心に建つ
こうなったら二人、美しく死んでやろうじゃないか!!!
二人走って、走って、走りまくった。坂を上り、下り、塔の下についてからも、とにかく階段を、彼女の手を引き上りまくる。
しばらく上った後、僕らは息も
その時の空と言えば、雲が全体的に薄くかかっていて、とても青空とは言えなかった。
「僕の事、まだ好きかな」
「好きじゃなかったら殴ってる」
「そうだよね、
「せーので空、飛ぶでしょ?」
「もちろん!」
『せーのっ!』
そうして僕らは空の青さに消えてった。空から見れば、僕らなど
青空に溶けていく。 つばめんぬ @Tubamennu
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