第10話
(ここみたいね……)
やって来たのは、都内某所の建設現場。
電車が比較的空いていた為、私はマナブ君を尾行することが出来た。
オレンジのバリケードに覆われた一角に扉が付いており、そこをくぐり抜けると中はコンクリート剥き出しの男臭い現場だ。
入り口にはヘルメットがぶら下げられ、ゾロゾロと男たちが階段を下っていく。
どうやら、地下が詰め所のようで、そこにグレーの色をした長方形のロッカーが敷き詰められている。
辺りを見回すと、長机に座るマナブ君を発見した。
マナブ君は机の上に教科書を開いている。
多分、「電気工事士」の資格の本だろう。
まじまじとそれを見つめているが、向かいに座っていたひげ面のやや強面の男が手を伸ばし、それをヒョイ、とつまみ上げた。
ペラペラとめくりながら言う。
「お前の脳みそで理解出来るわけねぇだろ」
マナブ君は一瞬、唖然としたが、返して下さい、と手を伸ばす。
「はあ、お前、返して欲しかったら横までくんのが礼儀だろッ!」
ばあん、と教科書を床に叩きつけ、怒鳴り声を上げる。
今度は私の方が硬直してしまった。
男が続ける。
「桑田さぁ~ん、俺、もしかして今日もコイツとペアっスか?」
桑田、と呼ばれた一番端の男が答える。
「仕方ねぇだろ。 おめぇ、一人で電線ひけんのか?」
「コイツと一緒だと仕事進まないですよ。 マジいる意味ねぇ!」
マナブ君はじっとしたまま動かない。
そんな会話をしている内、朝礼の時刻になった為、みんな机から立ち上がり始めた。
(……ど、どうしよ)
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