第9話

 回転寿司を割り勘して、その日は帰路についた。

ずっとユージ君が、割り勘はねぇよな、とうるさかったが、シメの杏仁豆腐2人前だけ多めに払ったんだから文句言わないの! と一喝した。

ちなみに、100円寿司の為、おごったのは200円分。

……まあ、これで文句ある奴は食べなきゃいいのよ。

それから家に帰るまでは問題無かったのだけど……









「あっついなぁ……」


 5月に入り、急に夜の気温が高くなってきた。

26.5℃。

寝る前に見たテレビのニュースでは、そんなことが告げられていた。


(ちょっと、窓開けよう)


 私は布団から這い出て、外に面している窓の扉を開けた。

ふわり、と涼しい風が部屋に入り、顔を撫でる。


「窓開けて正解ね」


 そう独りごち、再び布団に入った時、うめき声のような妙な音に気が付いた。

幽霊!?

科学が発達した現代、そんなモノは無いと思っていたが、最初に過ったのはそれだった。

でも、よくよく聞いてみると、違う。


「許して、下さい…… ちゃんと、電線引っ張りますから……」


 電線を引っ張る?

しかも、この声はマナブ君だ。

うなされているのか?

このアパートには部屋が3つあり、私とユージ君、マナブ君はそれぞれ別々に生活している。

部屋は横並びで、端々が私とユージ君、真ん中がマナブ君だ。

結局、そのうめき声はしばらく続いた。

 翌朝、私はマナブ君のことがきにかかり、本人に気付かれないよう、こっそり職場まで尾行することにした。





 

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