第6話

「あっ、おはよう、双葉さん!」


 呼び鈴を鳴らし、扉の奥から現れたのは、金髪のユージ君。

そして、奥からもう一人、黒髪でメガネのマサル君が顔を出した。


「初めまして、草木マサルです」


「あ、私、山田一葉と申します。 よろしくお願いします」


 お互いがお互いを恐縮し合う感じで、ペコペコお辞儀をしていると、双葉さんが言った。


「うまくやれそうだね。 じゃあ、私は退散しましょうか」


 双葉さんはそのまま仕事の続きに戻ってしまった。

とりあえず、部屋にお邪魔する。

リビング、キッチンと通されるが、ネットに載っていた部屋とは思えない程、荷物でごちゃごちゃしている。

キッチンも、流しに食器がそのままにしてあり、片付けが停滞している。


(2人とも、独り暮らしは初めてだろうし、こうなっちゃうよね……)


「キッチンは後で俺らで片しとくんで、スイマセン……」


 やや申し訳なさそうにはにかむユージ君。

次はそれぞれの部屋を見せてもらったが、そこで2人のこれからの目標を聞くことが出来た。

まず、ユージ君はサッカーが趣味らしい。

部屋には外国の選手のポスターが壁面にとめてあり、雑誌が机に無造作に置かれている。


「中学高校とサッカー部だったんで。 でも、別に選手目指してる訳じゃ無くて、今、図書館の司書目指してます」


「えっ、司書? 意外……」


 マサル君が割って話をする。


「ユージは実家が農家で、いつかは継ぐらしいんだけど、親に世の中知ってこい! って言われて渋々こっち来たんですって」


 ユージ君が面倒くさそうに返事する。


「そ、回りくどいんよ。 だから、こっちでは出来るだけ楽な仕事と思って、図書館の司書を」


 ふ~ん、と相づちを打ったけど、司書って男の人もなれるのだろうか?


 次はマサル君の部屋に入れてもらった。

マサル君の部屋には机に簡単な本棚が置かれ、そこに何やら資格の本が何冊か置かれている。


「僕は電気工事士の資格を取ろうと思ってます」


「えっ、すご…… でも、何で?」


「電気の仕事はこれからも需要が無くなりません。 それに、事務員などより、現場関係の仕事の方が給料が良いんです。 僕、高校の時は理数系の成績も良かったんで、向いてるかと」


 マサル君は見た目通り、色々考えて行動するタイプみたいだ。

もしかしたら、私よりしっかりしてる?


「山田さん、荷物重いでしょ。 こっち」


「あ、ありがと」


 ユージ君とマサル君に案内され、私は自分の部屋に荷物を降ろした。



 


 


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