第2話
「くーっ……」
私は目を覚ました。
薄ぼんやりする視界の中、目覚まし時計を見ると時刻は7:05分。
(起きなきゃ……)
ゆっくり体を起こし、そのまま冷蔵庫へと向かい扉を開ける。
100均で買ったグレープジュースの中身をコップに移し、飲み干す。
今日も気怠い一日が始まるな、とため息をついて洗面台へと向かうと、何か忘れていることに気が付いた。
「……そーだ」
重要な事を忘れてた。
今日、リカを殺すんだった。
一日ぐっすり眠ったせいか、昨夜の怒りなんて何処かへ消えてしまっている。
でも、このまま出社してリカの顔を見れば、すぐに殺意が湧くだろう。
包丁はカバンの中にしまったまま、私は身支度を整え、8時に家を出た。
駅まではアパートから徒歩で10分。
いつも8:15分の電車に乗って、大体8:30分頃会社に到着する。
(リカを殺したら、刑務所行きかな?)
冷静になって考えてみたら、差した後の事はノープランだ。
まあ、それが普通なのかも知れない。
大概、カッとなって人を殺してしまう人が多いに違いない。
というか、余程恨みでも無ければ、計画的に人は殺せないだろう。
(あ、お昼買わなきゃ……)
うっかりして、コンビニを通り過ぎてしまった。
迂回して来た道を戻ろうとした時、道路を挟んだ反対側の通路の交差点に、誰かが屈んで何かしているのが目に入った。
(……花?)
その人物は、花を交差点に添え、手を合わせている。
年は20代半ば位だろうか。
落ち着いた感じの若い女性だ。
「あ……」
その時、私はとあるニュースを思い出した。
約1年程前、近所の交差点で交通事故があった。
信号無視をした車が生まれたばかりの子供をベビーカーもろとも跳ね、死亡させてしまった事故。
テレビに映し出された、母親が泣き叫んでいた光景が胸に残っていた。
(あの時の……)
……そうだ。
誰かが死ねば、当然、誰かが悲しむんだ。
もしそれが他殺なら、殺した人間は一生、その身内に恨まれ続けるに違いない。
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