第3話 あのときの……
誰もいないはずの夜の校舎に向かって永遠に走り続けている、一人の命を救うために……
夢から覚め、ハッと自分は起き上がった。
気がついたらそこはこの学校の保健室のベッドの上だった。
そして隣には木雀火帆もいた。
「大丈夫!?結月君!」
そう言って俺に抱きついてくるすずめ
「ちょ、やめろって!!汗だらけだしくっつかない方が……」
そんなやり取りをしているとカーテンが開けられ養護教諭の先生が話しかけてきた。
「あぁ……お熱いところ申し訳ないんだけど、ちょっといいかな……?」
あ、これ絶対勘違いされてるやつだ……
瞬時に俺は悟った
それから普通の体制に戻りそのときに起きたこと、容態はどうなのかという話をした。
「見た感じ、体には何も無いと思うよ。それと聞いた感じだと結月君のやつは重度のストレス障害の可能性が高いかもね。」
「ストレス障害ですか……」
重度のストレス障害か……
これでもまだ前と比べたらだいぶ良くなった方かな……
まぁ、でもこれが俺自身に対する罪への報いなのだからこうなるのも当たり前か……
「どうする?一応、知り合いの心理士の人にカウンセリングできるか聞いてみようか?」
心配してくれているところ悪いけど……
「いえ、大丈夫です。わざわざありがとうございます。」
そう言って自分達は保健室をあとにした。
三十分程眠っていたらしく、日は落ち薄明るいオレンジ色の光が空の端に光っていた。
そして学校を出た後、すずめが心配そうに俺に話しかけてきた。
「あの、結月君……本当に大丈夫?……ごめんね、多分私のせいだよね……私が変わったねなんて言ったから。」
「いや、すずめは何も悪くない!」
何しているだ俺は、小学校時代の友達にこんな思いをさせて……悪いのは全部俺なのに……
そう思いながら俯いていると
「本当にごめん!、結月君を苦しめるってわかっているけど、でもどうしても聞きたいの!!、結月君、……本当に何があったの!?、うなされながらずっと謝り続けてて涙を流して、ずっと呼び続けてた葉月さんって誰なの?……」
俺の事を心配しているからこそ、聞いてくれたのだろう。
きちんと話だけはしたい、そう思った。
そして、この時のことを思い出すと必ず頭に出てくる……
「葉月……」
この名前を口にした瞬間、またあの苦しみが襲ってきた。またその場でうずくまった。
幸いさっきよりは軽く話すことは出来る状態だった。
「結月君、大丈夫!ごめんね……、やっぱり……」
いや、すずめが勇気を出して俺に聞こうとしてくれたんだ。その気持ちを踏みにじれるわけが無い……。
「だ、大丈夫……だから……。ちゃんと話す……から……、カバンの中にある薬を出してくれ……」
力を振り絞ってその旨を伝えた。
そして、素早く薬を取り出してくれ、症状はなんとか収まった。
自分が持ち歩いているこの薬は、あのことがあった中学のときから精神科から処方され続けている精神安定剤だ。症状自体は軽くなってきているものの、この薬の量は増えていく一方だ。
だが、これからあの時のことを話すためにはこの薬が必ず必要不可欠だ。
そして、これから全てを話すとすずめに伝え、学校から少し離れた人気の少ない公園へ向かった。そして二人分の飲み物、俺は水、彼女は紅茶、それらを買って近くのベンチに座った。
俺の手の中には精神安定剤が入っている薬入れがある。まずは、その薬入れから3錠取り出し服用した。
いきなりこの量を服用することは当然禁止されている。そして、いくら大量に服用したとしてもその分、効果が大きいという訳では無い。
でも、いくら物理的に効果がなかったとしても俺にとってはこの薬を服用することによって気が落ち着くんだ。安心できるんだ……。
そして、俺から話を切り出した。
「これから話すことは、もしかしたら……すずめの精神状態を歪めてしまうかもしれない。それでもいいのか……?」
正直、これが一番不安だった。
すずめならこれから話すことを信じてくれはするだろう。
でも、そうだからこそ、この話を心身に受け止めすぎて気分が悪くなったり、最悪、精神状態がおかしくなってしまったら……
自分がまた、大切な人を傷つけてしまったら……
こう考え続けていた中、すずめが俺に被さるようにして強く言ってきた。
「大丈夫!私は、平気だよ!!。それよりも……、結月君は自分の心配をして!! たしかに、結月君に何があったのかは私は聞きたい。でも、私は結月君が苦しんでいる姿を見たくない。」
「あ、ありがとう……」
俺を心配してくれていること、何よりも俺の事を気づかってくれることにすごい嬉しさを感じた。
そして一旦、深呼吸をして ……
この話をしたらもうすずめとは関われないかもしれない、でも話しておきたい。
そして、中学のあの時のことを俺は語り出した。
〜続く〜
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