第10話 水源
次の日、レイナは用事ができたランスに代わりロアンに案内され水源まできていた。
「昨夜はよく寝れましたか?」
「ええ、お陰様で。」
昨日レイナはロアンの所に泊まった。家に帰るつもりだったが、ロアンの母が水源まで行くのには村から行った方が良いからと治療のお礼も兼ねて泊めてくれたのだ。
「おば様には、すごくお世話になってしまったわ。」
「気にしないで下さい。母は元々世話好きなんです。」
そんなたわいもない話をしながら村の水源となる広い湖を見て回っていた。
すると湖の端のほうに何か大きなものがあるのをみつけた。
「こ、これは…」
ロアンが息をのむ。
「…神獣ね。でもだいぶ弱ってる。」
(それに…本来黄金色のオーラをまとっているはずが淀んできてる。このままじゃ…)
その巨大な神獣の姿は大きな犬に似ている。薄く開いた瞳は金色で背中には真っ白な翼がはえていた。だがその翼もボロボロの状態だ。近くによると気配を感じたのか弱った神獣が牙をみせ唸ってきた。
ヴヴっグルルっっ!!!!!!
「レイナさん!危ないですよ下がって!」
神獣の威嚇をもろともせずスタスタと近づくとレイナは神獣の側で膝をついた。
「わたしの名前はレイナ。この世界の主、
クリエイト神により
頭を下げるレイナを金色の目が睨みつける。
「ふざけるな!この傷は人間にやられたのだ!それを今度は助けるだと?我をバカにしているのか!!!!」
怒りにみちた殺意を向けられたレイナだったが表情ひとつ変えずにさらに続けた。
「貴方を傷つけたこと、そのものに代わり深くお詫び申し上げます。ですが、このままでは貴方は
冷静に落ち着いてレイナは神獣と対話した。
「…わかっている。だが、許せぬ!我をこのような惨たらしい姿にした人間を!!許せぬのだ!!」
神獣が泣くように叫ぶと周りの木々は枯れはて、湖は濁り始めた。そんな姿を目の前にしてもレイナは臆することはなかった。
「…本当にごめんなさい。こんな姿にしてしまって。愚かな人間を許して下さい。これ以上貴方の心が憎悪で穢れないように、神獣である貴方の誇りを守るために。わたしが力を貸します。」
荒ぶる神獣にソッと触れると歌のような呪文を唱えた。その声は優しく、暖かく、聴くもの全てを癒していた。それと同時に神獣の体はサラサラと光の粒になり消えはじめた。
「……すまぬ…神獣でありながら穢れてしまい無様な姿をさらしてしまった…」
「いいえ、謝らないといけないのはわたしのほうです。こんなかたちでしか貴方を助けられないのだから。」
金色の目がレイナを見る。がその目にはもう怒りなどなかった。
「…ありがとう…神の愛し子よ…」
それが光の粒になった神獣の最後の言葉だった。
「あ、あの、レイナさん?」
少し離れた場所でみていたロアンがレイナに声をかけた。
「ここに社を建てて。」
いきなりな話にロアンはびっくりした様子でレイナに聞いた。
「どうしてですか?あの
「もともと人間があの神獣を傷つけたのが原因なの。あれは神に近い獣。この湖の守護獣だったのよ。」
それを聞いたロアンは言った。
「神…ですか…。わかりました。じい様達に話してすぐにでもお祀りします。」
二人がその場を去った後、辺りはレイナの魔法で癒されいつもの静けさと穏やかさを取り戻した。
第11話へ続く
転生なんか望んでいません! 卯瑠樹 夜 @UKIYORU
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