第8話 魔女との契約
レイナは村の出口まで戻ってきていた。
「お姉さん!」
家に帰ったはずのトロワが駆け寄ってきた。
「トロワ。わたしに近寄ってはダメよ。見ていたでしょう?親御さんが心配するわ。」
「大丈夫だよ!そんな事より、さっきケガしたとこ大丈夫なの?」
「平気よ。あれくらい魔法でどうとでもなるわ。」
前髪をあげ、傷も残っていないことをトロワに見せて安心させた。
「良かった!でも、ごめんね。村の人たち本当は凄く良い人たちばかりなのに…」
泣きそうな顔で謝られたレイナはトロワの頭を優しく撫でた。
「わかってる。みんな不安なのよ。さっきも言ったけど、わたしに出来ることならなんでもするから。だからそんな顔しないで。」
トロワとそんな話をしていると、
「レイナさん!こんな所にいたんですね。」
ロアンがやってきた。
「どうするか決まったの?」
レイナが真剣な顔つきでロアンに聞いた。
「えっと、兄さんが村のじい様達に話しをしていたんですが、その、じい様達が貴女を呼んでこいと…」
「わかったわ。行きましょう」
トロワがレイナの服をギュっと握った。
「大丈夫だから。トロワは家に戻りなさい。また後で会いましょう。」
そう言うとレイナはロアンと一緒に歩きだした。
「失礼します。魔女レイナを連れてきました。」
少し緊張した声音で言うとランス達がいる家に入って行く。すると中にはテーブルを囲んで座る3人の老人と、その側に立つランスの姿があった。
「これが噂の魔女か。」
レイナから見て右に座るアンテと言う厳格そうな老人が言う。
「うーむ、普通のおなごにしか見えんがの?」
アンテの向かい側に座るノウロという髭が長い老人が言う。そして最後に口をひらいたのがダンテというどこか気品のある老人だった。
「村人たちの無礼、本当にすまない。みな、魔女と言われるそなたに恐怖しておるのだ。」
「いえ、承知のうえで村にきたので。お気になさらないで下さい。」
それを聞いたアンテは
「歓迎されぬ事をわかっていてこの村にきたのか?変わりものだな」
と鼻で笑った。
「村のためを思ってきてくれたのだ、あまり失礼な言い方はするものではないな。」
ダンテがそう言うとアンテは眉間にシワをよせ黙ってしまった。
「先ほども言ったようにお気遣いは無用です。村のためではなく、優しい子ども達のために来たまでです。」
レイナが冷たい声で一線をひく。
「あぁ、ランスんとこの坊主か?話を聞けば色々世話になったとか。」
ノウロが言うとランスが気まずそうな顔をした。
「なんにせよ今、この村で起きている事を解決していただけるのなら私たちはとても助かります。よろしくお願いできますか?」
少しの沈黙の後でレイナは答えた。
「もともとそのつもりで来たので出来る限りのことはします。ですが、村人全員に1つだけ守っていただきたい事があります。」
「なんですかな?」
「ここで起きたこと、わたしの
「皆に必ずや伝えましょう。もし、守れぬものが出た時は私がその者を厳しく罰します。それでよろしいかな?」
「ええ、それ…」
レイナが返事をしようとした時だった。
「ただの口約束でいいのか?」
アンテが言った。
「もう一度聞く、本当に口約束だけでかまわないのか?」
「わたしはそれでもいいわ。でもそちらが何か形に残したいと言うのであれば契約書をつくりましょう。」
そう言うと手を差し出し呪文を唱えた。すると手の上で青い炎が燃え盛ったかと思うと一瞬にして一枚の紙が現れた。ヒラリと落ちてくる
"ここに魔女レイナとの約束を
「これでいいかしら?」
レイナが契約書を3人の囲むテーブルにおいた。
「ちょっとまて!命をとるなど俺は認めないぞ!!だいたいさっきと言ってる事が違うだろ!」
ずっと黙っていたランスが声をあげた。
「ランス、口をだすな。これは我々と彼女の契約だ。それに約束を守れば良いだけの事だ。」
そう言うとアンテはサインをした。
「私も村の人たちを信じている」
といいながらダンテが、そして
「なんだかドキドキするのう」
と呑気な事をいいながらノウロまでもサインをした。
「あら、1人でかまわないんですが…。まあとりあえず契約は完了ということで、わたしは早速、皆さんを治してきますね。」
レイナは契約書をもって家を出ていった。
「こらっ!待て!俺はまだ納得してないぞ!」
「落ち着け!ランス。お前に話がある。ロアンはレイナのサポートをしてくれ。」
「わ、わかりました!」
さきに出ていったレイナを追いかけて家をでたロアンを見送った後、ダンテが静かに話し出した。
「ランス、お前には話しておかなければならない事がある。魔女…いや彼女、レイナ・タチバナについて。」
第9話へ続く
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