第7話 守り神

「ねーちゃん大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。」

ロアンとルイは1階の部屋で待っていた。

しばらくするとランスとレイナが2階から降りてきた。

「兄さん!どうなったんだ!?母さんは!」

「…助かった。今はゆっくり眠ってる。」

それを聞いたルイとロアンは喜んだ。そしてレイナの手をとると、

「ありがとう!本当にありがとう!」

何度もお礼を言うロアン。

「べ、別にたいした事ではないわ。」

レイナは手を握られたこと、そして久しぶりに人から感謝された事に少し照れくささを感じた。

「ロアン、喜ぶのはまだだ。少し話がある。ルイ、お前は家に帰って俺は遅くなると伝えてくれ。」

「えー!…しょーがねーな。わかったよ!」

ルイは不満そうにしながらも素直に家に帰っていった。

「いったいどうしたんだよ。母さんは助かったんだろ?他に何かあるのか?」

兄の曇った表情にロアンにも不安がうつる。

「今、村でおきてる事には何か原因があるらしい…、そうなんだろ?」

レイナに目をやるランス。

「それどういうこと?えっと、魔女、さん?でいいのかな。」

ロアンが呼びかたに困りながら聞いてきた。

「名乗ってなかったわね。レイナよ。」

「えっと、改めてレイナ。どういうこと?村に何がおきてるの?」

少し考える素振りをしたあとレイナは言った。

「まず、村を見せてもらってもかまわないかしら?そしたらきちんと説明できるわ。」




その後、ランスに連れられ村のなかを見て回った。

「これはなに?」

最後に村の西側の奥にある広場に案内された。そこの花壇に不気味な形をした置物、いや、カカシに近いものが立てられていた。

「確か、村の商人が王都で手に入れた厄災から守ってくれるっていう守り神だ。」

(守り神ね…)

レイナは村を見回すとため息をついた。

「おい、いったい何なんだ?」

「この守り神様とやらが原因よ。」

それを聞いたロアンとランスは驚いた様子だった。

「どうして?これは本当に守り神なんだよ。これが立ってから長雨にも嵐にも悩まされなくなったんだ。」

「そうだ、ここ何ヵ月か平穏に暮らせていた。お前の勘違いじゃないのか?」

二人にそう言われたレイナは頭を抱えながら説明した。

「あのね、確かに小さい村なんかでは自然災害は厄災の一つと言われているけど、長雨も嵐も理由があっておこるものなの。それを人為的に抑えこんでしまったら別の障害がおきるのは当たり前よ。」

「理由だと?あんな最悪なこと理由があっても起きないほうがいいに決まってる。」

ランスが苛立ちながら言う。

「そうだね。毎年つらい思いばかりだ。」

ロアンも悲しげな顔をした。

「…それでも必要なことなのよ。わたしたちは自然に生かされていて、自然と共にある。でも今この村でおきてる事は不自然なこと、それは全部あのバカげた置物のせいなのよ。」

レイナが指さしながら言う。

「あの置物が原因だとして、どうやったら村の皆は良くなるんだ?撤去するればそれだけでいいのか?」

「そうね、とりあえずそれで苦しむ人は増えないわ。でも現状苦しんでいる人達は治らない。」

それを聞いたランスが顔を歪めた。

「治らないだと?じゃあ何の為にあれを撤去するんだ?自然の流れだからと厄災を招くためか!?」

「違うわよ!あれを撤去したでは治らないと言ったの。村の人達が魔女の助けを甘んじて受けてくれるなら助けられるわよ。」

ランスとレイナがまた言い合いをし始めた。

「ちょっと、二人とも落ち着いて。それでレイナ。今は何からすればいいの?」

ロアンが冷静に訪ねてきた。

「…あの置物を撤去して。そして村の人たちを説得して。魔女のちからを借りることを。でなきゃ治せないわ。」

それだけ言うとレイナはその場を離れた。


「兄さん。どうするの?」

ロアンが聞くと

「…撤去する。それからじい様達を集めろ。」

「僕は良い兄をもったよ。それに村にとっても良いリーダーだ。」

ロアンは嬉しそうに走っていった。


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