第6話 初めての村2
「あぁ!良かった!本当に良かった。」
泣きながら赤ちゃんを抱きしめる女性。
その様子を見ていたルイ達が嬉しそうに走ってきた。
「やっぱり魔女のねーちゃんスゲーな!」
目をキラキラさせるルイ。
「赤ちゃん良かったね!」
女性と共に涙を浮かべながら喜ぶカレン。
「でもどうして?命をとるんじゃないの?」
そしてやはり的確な質問をしてくるトロワ。
「わたしはとるなんて一言も言っていないわ。"命をかけれるか?"と聞いただけよ。」
そう言ったレイナにルイの父親が怪訝そうに言った。
「だが、彼女は苦しんでいた。呪いか何かかけたんじゃないのか?」
その言葉に村人とルイ達が注目した。
「そんな事ねーちゃんがする訳ないだろ!」
「ルイ!子どもは黙ってろ!目の前で彼女が苦しそうにしていたのは事実なんだ!」
怒鳴られたルイは何も言えなくなってしまった。
「おい!どうなんだ?呪いをかけたのか?」
ルイの父親が詰め寄ってくる。
「呪いなんてかけていないわ。」
「じゃあ、なんで彼女は苦しそうにしたんだ?お前の唱えた呪文のせいじゃないのか!?」
「赤ちゃんは衰弱しきっていたの。だから母親であるあの人から赤ちゃんへ少しだけ生命力をわけ与えたのよ。」
淡々とレイナは説明した。
「生命力だと?」
「そう。生きる為のエネルギー、つまり
元気の源みたいなものよ。寝ればすぐ回復するわ。」
睨みあうルイの父親とレイナ。すると後ろから声をかけられた。
「あの…僕の母も助けて下さい。」
そこには素朴な青年がたっていた。
「ロアン!お前っ!!勝手な事をするな!」
ルイの父親はさっきとは比べ物にならないくらいの剣幕で青年に掴みかかった。
「兄さん!助けてもらわなきゃ。このままじゃ母さんは苦しんだまま死ぬんだよ!」
ひ弱そうに見えた青年だが、がたいの良いルイの父親、もとい自分の兄に負けずと言い返した。
「だからって魔女に頼るのか!?」
「魔女だからってなんだよ!僕たちが彼女の何を知ってるんだ!彼女が今まで僕たちに何か害をなしたのか!?」
言葉につまるルイの父親。
「この手どけてくれないか?」
ロアンに言われ、掴んでいた彼を突き放すとレイナに向き直り、
「オレの母に妙なことをしたらどうなるかわかってるだろうな。」
静かにレイナを脅すと村の奥へと歩いて行った。
「ごめんなさい。普段は凄く優しくていい兄なんです。」
ロアンが困ったように笑いながら言った。
「優しいからよ、村を守るために異物を嫌うのは仕方ないわ。」
さらっと自虐的な事を言うレイナに、今度は苦笑いを浮かべながらロアンは母親の元へ行く為、兄の後を追いかけるように村の奥へと案内した。
「ここです。」
村の奥にはレンガ造りの二階だての家が建っていた。家の中へ通されるとそこにはルイの父親が待っていた。
「…さっきは悪かった。俺の名前はランス。今、村は病人で溢れてるし、他にも色々と問題を抱えていて、余裕がなかった。だが、最後に言った事は取り消さないからな。お前のすべてを信用した訳じゃない。」
それだけ言うと、母親がいる寝室へとレイナを案内した。
「ロアン、ルイ、お前らは外で待ってろ。」
「なんでだよ!?親父!オレもねーちゃんと一緒にいる!」
ルイがワガママを言うとロアンがランスの様子を察し別の部屋へとつれていった。
「ルイ、僕と待ってよう。大丈夫だよ。」
ロアンに連れられていくルイがレイナの方を不安そうに見ていた。そんなルイにレイナは口パクで"大丈夫"と笑顔を向けたのだった。
コン、コン、、
「母さん、入るよ」
ソッとドアを開き部屋に入る。ベッドには苦しそうにランスの母親が寝込んでいた。レイナはベッドの
(これは…甲魔虫の仕業ではないわね)
その様子を見ていたランスが声をかけてきた。
「どうなんだ?治せるのか?」
「治せるわ…ただ…。これは普通ではないわ。」
「どういう事だ?」
「さっき、村は他にも問題を抱えていると言ったわね?」
「それが何か関係あるのか?」
「見てみないと分からない…。とにかく今は彼女を治すわ。話はそれからね。」
レイナはそう言うと立ち上がり、体の中心へと両手をかざし、呪文を唱えた。
するとベッドを挟むように下と上に大きな魔方陣が現れ光のベールが母親を包んだ。
その様子に驚きながらも、ランスはレイナから決して目を離さなかった。
7話へ続く
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