第5話 初めての村

「「「お願い!村へきて!」」」

3人の子ども達に頭を下げられ、どうにも困ったレイナはついに白旗をあげた。

「わかった!わかったから、頭をあげなさい。仕方ないから村へいくわ。」

その返事に子ども達はわーい!と大喜びした。

「そのかわり!!」

大きな声で子ども達を制す。

「村で何が起きてもあなた達は口をだしてはダメよ!それが約束できるなら村へ行くわ。」

レイナの真剣なに子どもたちは静かに頷いた。




守護の呪文を使い、特に問題もなく村の入り口へと着いた4人。が、レイナは村に入れずにいた。120年、人との関わりを絶っていたレイナにとって初めて村にはいるのに、ものすごく勇気が必要だった。

「お姉さん、大丈夫?」

村に入れず立ち尽くすレイナに声をかけるトロワ。その問いかけが聞こえていないのか、真っ直ぐ村を見つめたまま、手は拳を作って固く握りしめている。

カレンとトロワは困った様子で顔を見合あすしかなかった。その時…

「みんな!出てきてくれよ!病気を治せるぞ!!」

ルイが大声で村に入っていった。

「ル、ルイ!ちょっと待ちなさい!」

カレンが慌てて呼び止めるが、時すでにおそく声を聞いた村の人々が家から出てきた。


「ルイ!どこに行っていたんだ?まさかまた森にはいったんじゃないだろうな?」

ルイの父親が声をかけてきた。

「親父!病気を治せるぞ!魔女のねーちゃんが治してくれる!」

ルイの指差す方向、その言葉と共に沢山の村人の視線がレイナへと向けられる。

村の入り口にいる魔女の姿に村の大人達に緊張がはしる。

「ルイ!お前がここに連れてきたのか!?」

ルイの父親はひどく険しい顔で問いかける。

「…そうだけど、そんなに怒るなよ!病気を治してくれるんだよ!」

必死に話すが子どもの言葉は村の大人達には届かなかった。

「なんて事をしたんだ!」

その言葉をかわきりに何人かの村人は逃げるように家の中へと戻っていった。

「ルイ!トロワ!カレン!こっちへ来なさい!家にはいるんだ!」

大人たちの異様な雰囲気にルイたちは戸惑うしかなかった。

「出ていけ!魔女!」

1人の村人が心ない言葉と共にレイナに石を投げた。

「!っ…」

避けるわけでもなく、立ち尽くすレイナの頭に石が当たり血がながれる。


「やめて!やめてよ!」

トロワが止めにはいろうと走ってこようとした。

「トロワ!約束したでしょう?」

レイナは強く、しかし優しく言った。

約束という言葉にトロワはその場に立ち止まった。それを確認した後レイナは村人達へ向けて言った。

「わたしはこの子達に頼まれて来ました。今、村では病気を患っている方が多いと聞いています。話を聞く限りではわたしでお役にたてると思います。ですがもし村人の方々が魔女と呼ばれるわたしの助けを必要としないならわたしはこのまま村から、いえ、この森から出ていきます。」

森を出ていくという言葉に何か言いたそうにするルイ達。

そしてレイナは少し待った後、村から出て行こうとした。


「まって下さい!!」

若い女性が声をかけてきた。その人の腕の中では小さな赤ちゃんが苦しそうにしている。

「本当に治せるのなら、この子を!どうかこの子を助けて下さい!」

女性は泣きながらレイナの足元へ駆け寄ってきた。

「やめな!!魔女なんかに頼んでわが子を殺す気かい!?」

別の村人が女性に注意する。しかし、

「このままでもこの子は死んでしまうわ!それならわたしは命をとられてもこの人にお願いする!」

そう強く言いきる女性に村人は誰も何も言えなくなった。


「本当に命をかけてもかまわないの?」

レイナは冷たい声で聞く。

「かまわないわ!でも!必ずこの子を助けて!」

「わかったわ。」

レイナは赤ちゃんを抱くと座りこむ女性の目の前に膝をついた。そして女性に赤ちゃんの頭へ手を置くように言った。

呪文を唱えるレイナ、すると赤ちゃんの頭の上に置いてある女性の手が光る。

「うっ…」

苦しそうにする女性。その様子をみた村人はやはり命をとられるのだと恐れていた。少しずつ収まる光。そして…


「終わったわ。」

「え?」

「もう、大丈夫よ。」

その瞬間、赤ちゃんの元気な泣き声が響いた。



6話へ続く




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