第4話 甲魔虫
「そうね、魔法を使える女性を魔女と呼ぶのなら確かにわたしは魔女だわ。」
レイナはあっさり認めた。
「じゃあ、お婆ちゃんにならないのも魔法なの?」
トロワがさらに突っ込んで聞いてくる。完全にレイナに安心感を抱いているようだ。
「それは…」
言葉につまる。この姿の事をなんて説明しようか、子ども相手にどこまで話していいものか考えていた。
「ルイ!どうしたの!?」
カレンの慌てた声で思考は遮られた。ルイを見ると青い顔で苦しんでいる。
「やっぱり毒いりだったのね!?」
カレンがレイナを睨む
「違うよカレン!それならボクのほうが先に苦しくなるはずじゃないか!」
トロワが否定する。
「じゃあ、ルイは!?ルイが死んじゃう!!」
とりみだすカレンに優しく声をかける。
「大丈夫。死んだりしないわ」
するとトロワが言った。
「これ、、村と同じだ…」
トロワの顔が暗くなる。
「それ、どういうこと?」
「村でもルイみたいに苦しんでる人が何人かいるんだ。それでルイのパパとボクのパパが一生懸命、原因をみつけようと頑張ってるんだけど…」
手掛かりがないのだろうトロワは悲しい顔をしてうつむいた。
「うぅっ…」
苦しむルイの体をレイナは慌てることなく調べた。
「いたわ、原因はこれね。」
ルイの右脇腹に小さな虫が噛みついていた。
「なにこれ!?」
カレンは小さく悲鳴をあげる。
「これはね、
レイナは急いで空の小瓶を用意すると、蓋を外し虫の上へ被せた。
「捕まえるの?」
トロワが聞くとレイナは首を横にふる。
「いいえ、甲魔虫は熱に弱いの。だから熱をあたえるのよ。ルイ!少し熱いかもしれないけど我慢してね。」
そう言うと、被せた小瓶の底に人差し指を当てて呪文を唱えた。すると指を当てていた部分が熱を帯びて赤くなる。すると、噛みついていた甲魔虫がコロリとビンのなかへ落ちた。
「とりあえずこれでよし。」
ビンの中の虫が死んでいる事を確認すると、今度は液体のはいった瓶をもってきて、ルイに飲ませた。
「ゆっくりでいいから飲みなさい。」
ルイは苦しみながらもレイナの言うとおりゆっくりと液体を飲んだ。
「イイコね。どう?大丈夫?」
そう声をかけると、
「…魔女のねーちゃんありがとう。」
とさっきまで苦しんでいたルイがお礼の言葉を口にした。
「「ルイ!!!」」
心配していた、トロワとカレンはその瞬間ルイに抱きついたのだった。
ルイの様子が落ち着いた頃、レイナは村の様子を聞いた。
「さっき村の話を少し聞いたのだけど…」
そうきりだすと、
「そうなんだ!村の人もねーちゃんのあの薬で治してやってくれよ!」
「それは同じように甲魔虫に噛まれていた場合よ。もし病気だったり、別の何かが原因だったらこの薬では治らないわ。」
ルイを治したあの薬は甲魔虫の毒専用に作られている為、他のものには効かないのだ。
「じゃあどうしたらいいんだよ!?」
「それは…」
レイナは一つだけ解決策を思いついていたが、口にするのをためらっていた。あまり気がのらなかったからだ。しかし…
「それじゃあお姉さんも一緒に村に行こうよ!」
またもやトロワがズバリと言ってきた。
「おっ!それいいじゃねーか!」
「トロワもたまには良いこと言うじゃない!」
ルイとカレンも名案だといわんばかりに盛り上がっていた。
「ちょっ!ちょっと待ちなさい!あなた達!わたしが"魔女"だってこと忘れてない?」
すると3人は目を丸くした後、ニコニコしながら言った。
「ねーちゃんは魔女だけと、良い魔女だから大丈夫だよ!」
「そうね、全然怖くないもの。」
「優しいし、お菓子も美味しいよ。」
子どもらしい能天気な考えをきいたレイナは大きなため息をつくしかなかった。
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