第3話 この世界の魔法
「う、う~ん…」
どのくらい気を失っていたのだろうか。体はだいぶ楽になっていた。ゆっくり起き上がると自身の右手に違和感を覚える。
…?「っ!」
違和感の先には汚れたままになっていた右手があった。それを見たレイナは急いでお風呂場へとむかったのだった。
身綺麗になったレイナは遅い朝食を食べていた。しかしふと手をとめる。
「誰かしら…」
起きた時から遠くのほうで気配を感じていたが、まさかこの家を目指してきているとは思わなかった。
コン、コン、、、
「……………」
コン、コン、コン、コン、、、、、
「………………」
コン、コン、コン、コン、コン、コン、
「しつこいわねっ」
無視すればあきらめると思っていたが、相手はなかなか帰らない。仕方なくドアをあける。
「お姉さん!良かった!」
玄関には昨日助けた男の子が立っていた。
「あなた、どうしてここへ?1人できたの?」
「僕トロワ!友達のルイとカレンも一緒だよ。」
そういうと後ろの方を指差した。その先には庭の入り口にある小さな門に隠れて様子を伺う二人が見えた。
「まったく、危ないから森に入ってきてはダメよ。」
優しく
「でも、お姉さんに助けてもらってから毎日来てたのに全然出てきてくれないから心配で!」
トロワが不思議な事を言う。気を失ったのは数時間程度だと思っていたがどうやら違うらしい。
「えっと、何日くらいここへ来ていたの?」
「え?う~んと…今日で4日め!。」
(嘘でしょ!?3日も寝込んでたの?)
青い顔をしているレイナをみて、トロワが声をかける。
「大丈夫?まだどこか痛いの?」
その言葉にハッとすると、
「ごめんね。大丈夫よ。それよりこんな危ない所までわざわざ来てくれてたなんて。お礼もしたいし、少し休んでいって。」
トロワを家に招きいれた。
「いいの!?わーい!」
喜んで家の中へ入っていく、トロワ。
「そこの二人も良かったらどうぞ。」
門のそばの二人にも声をかけた。が、なかなかこちらへ来ない。
「あら、後ろから何かきているわ」
レイナがそういうと、ルイとカレンは一目散に走って家の中に飛び込んだ。
「フフッ。いらっしゃい。」
少し意地悪な方法だったが、外にいるより安全なのは確かだった。
3人をテーブルに案内すると、クッキーとココアを用意した。
しかし、ルイとカレンはうつむいたまま微動だにしない。一方のトロワは警戒心や恐怖心などまったく感じていないらしくだされたお菓子を嬉しそうに食べていた。
「毒なんかはいってないから安心して。お友達が食べているのが何よりの証拠だと思うんだけど。」
そう言うとふたりは顔を見合せた後、お菓子を勢いよく頬張った。
「お姉さんは魔女なの?」
先にお菓子を食べ終わったトロワが
「こら!魔女に魔女って言ったらダメなんだぞ!」
「しー!ルイ!あなたも言ってるじゃない!魔女って!」
人差し指を口の前にもってきて静かにのポーズをとっているカレン。
目の前で漫才のようなやり取りをしている3人をみてレイナは可笑しくなった。
「アハハ!あなた達面白いわね。何故わたしが魔女だと思うの?」
「パパもママも村の大人はみんな言ってるよ。魔女がいるから森には行ったらダメって。」
トロワは正直に話す。
「フフ。わたしが魔女かはともかく、確かに森に入ってはダメね。ここの森は神域に近いから危険な生き物たちが沢山いるの。」
「しん、いき?」
カレンは聞き慣れない言葉に頭をかしげていた。
「神域というのはね、神様が住む土地の事。あなた達はこの世界の魔法が神様からの贈り物だという話を聞いたことある?」
レイナはなんだか学校の先生になった気分だ。
「あっ!それは知ってるぞ!えっと…確かコップがなんとか…で…」
ルイは自信満々に手をあげてみたが、答えきれずにいた。するとカレンが
「魔法は神様からの贈り物で、それは人によって与えられる量が違うの。でも大体の人はコップ一杯分の贈り物をもらってるって話よ。」
カレンはやれやれといった感じでルイをみた。
「わ、わかってるよ!」
「その通り。神域はね、普通コップ一杯しか与えられない神様のエネルギーつまり贈り物が湧き出ている場所なの。」
「スゲー!!じゃあこの森にいればオレもこの前の魔女みたいな魔法使えるのか!?」
興奮しながらルイが聞いてきた。
「残念だけどそれはムリね。さっき話した"コップ一杯の話"があるでしょ?あれは神様のエネルギーをうけとるのに普通の人ではコップ一杯くらいが限度だからなの。それ以上は人の体が壊れてしまうわ。」
そう話すとルイはガッカリしていた。すると今度はトロワが聞いてきた。
「じゃあお姉さんはやっぱり魔女なの?あんなすごい魔法、村の大人の人でもつかってるの見たことないもの!」
フワッとしていると思っていた彼にいきなり確信のようなものをつかれてレイナはすこし動揺してしまった。
4話に続く
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