第2話 神獣
(困ったわ…)
家の中に入った"魔女"レイナは離れた場所にいる子ども達に気づいていた。
家の周り半径50メートルにはレイナの察知魔法が張ってある。その為"例外"を除く何かが近づけばすぐわかるのだ。
「こんな森の奥までなんのつもりかしら」
レイナは窓のそばにいくと、カーテンの隙間からチラリと様子をうかがった。
(害は無さそうだけど…)
この森にはたくさんの獣や魔物がいる。しかも森が深く土地自体が神域に近い環境なので、普通の魔物や獣より格段にレベルが違う。その為この森には人が寄り付かない。
「はぁ…人と接触しないようにこの森を選んだのに。」
レイナは外にいる招いていない客人をどうすべきか頭を悩ませた。
(ちょっと
物騒な事を淡々と考えている時だった。
(!!!!何かくる!?)
「しまった!この気配、神獣!?」
たまに結界魔法や察知魔法などを張っていても気配に気づけない事がある。それは神域で育ったものや、ここのように神域に近い環境で育った獣によくみられる。獣はその土地や自然のエネルギーと共に成長するため、神の力を強く受ける。その結果、察知魔法などに反応しづらい獣が育つ。
これは、この世界の魔法のエネルギー源が"神の力"という理由が関係している。同じエネルギーを持つものの気配というのは感じづらいのだ。
「誰かたすけて!!!!」
移動魔法をつかい、子ども達と神獣の間にはいる。ギリギリのところを結界魔法で弾き返した。が、やはり相手は神獣。結界を張るために差し出した右手は神獣のエネルギーをもろに受け傷をおってしまった。
(間に合って良かった。)
だが、弾き返しただけで倒してはいない。
(人を襲ってしまった以上…生かしてはおけない。)
「ごめんね。」
小さな声で謝ると絶命の魔法を唱えた。
(できれば使いたくなかったな…)
そう思いながら静かに息をひきとる神獣をみつめた。
「さてと…」
後ろを振り返り、子ども達に目をやる。
「大丈夫?」
優しく問いかけたつもりだったが、子ども達は怯えてしまっていた。
「……………」
そんな姿になんて声をかけるべきか悩んでいた時だった。
「ケガしたの?」
1人の男の子が近寄ってきた。自分だって怖いハズなのにレイナの心配をしている。
「大丈夫よ。それより早く村へ…」
視界が歪む、レイナは片膝をついた。久しぶりの大魔法に体がついていけなかった。
「だっ大丈夫!?」
男の子が慌てた様子でレイナに手を伸ばす。
(…本当に優しい子ね。)
正直大丈夫ではなかったが、もう日暮れが迫っていた。優しいこの子を"無事に村に帰してあげたい"と思ったレイナは、守護の魔法が込められたペンダントを渡した。その直後
さっきまで怯えていたはずの二人が男の子の腕を掴み走っていったのだった。
(良かった。)
お礼を言っている男の子が遠くなっていくのを見送るとレイナはフラフラになりながら何とか家の中に戻った。
「思った以上に疲れたわ…」
このまま倒れる訳にはいかないと必死に意識を保ちながらベッドのある部屋までたどり着く。そして血が流れる右手に回復魔法を使うと、そのままベッドへ倒れこみレイナは意識をてばなした。
第3話に続く
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