ドリームシティの名前を出してからと言うもの、こんは赤信号で止まる度にもう着くの?と訊ねてくる。あそこには大きい看板があるから、見えたら直ぐに分かるよ。と答えたのだが、その質問が途絶える事はなかった。

「テレビのせんでんでみたの!ずっといってみたかったの!」

そう言ってはしゃぐこんは、出会ったばかりの路地裏で小さくなっていた頃とはまるで別人だ。もしかしたら、今の自分も、こんから見ると別人に見えているのだろうか。そうだといいな、と強く思った。

そうこうしている間に、もう目的地は目の前だ。ドリームシティの看板が見えると、こんはうきうきして手をバタバタと動かしながら、あそこ!あそこ!と嬉しそうに指を指していた。ドリームシティの駐車場は、平日の昼にも関わらず誘導員がテキパキと合図灯を降っている。支持に従い車を停めると、こんのシートベルトを外してあげた。

「いこ!」

「そうだね。」

自動ドアに吸い込まれると、こんが手を握ってきた。それは、とてもとても温かくて、優しい気持ちになることの出来る魔法のようだった。

エスカレーターを降りて、まずは子供服売り場へと向かう。そこではTシャツとジャケット、履物から下着まで一通り揃えることが出来た。支払いを済ませると、試着室を借りる。着替えを済ませてカーテンを開けると、店員さんが

「とっても可愛いですね!ありがとうございましたー!」

と声をかけてくれた。それは、まるで自分の事のように嬉しかった。

そのままぶらぶらと色んなお店を見てまわった。車に乗っていただけの先程とは違い、こんは自分の足で歩いている訳で、鳴っていた腹の虫なんてお構い無しに、まるでリードを引っ張る大型犬のように、繋いだ手を引っ張って来る。ゲームセンターやおもちゃ屋さんなどを粗方物色し終わると、さすがに胃の容量に限界を感じたようで

「おなかすいた…」

と空気の抜けた風船のように、その表情が萎んでしまった。

まだピッチピチの20代の筈なのだが、お恥ずかしい話、かなり疲れてしまったので、正直これは助かったと思い、休憩がてらレストランゾーンへの提案をする。それはこんに速攻で承諾され、2人はレストランゾーンの入口にある回転寿司屋さんへと入る事にした。お昼時は混む印象のある回転寿司屋さんだが、今日は運良く並ぶことなく入る事が出来た。

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