第10話 クソ勇者のパーティーは弱い

 ステータス可視化アイテム『ステイル』を手に入れた俺は、魔王城にいるヤツに会いに行き、片っ端から強さを確認した。

 だが、当たり前のことがだ、俺に敵うヤツはいなかった。


 というわけで、正直言って、俺は退屈していた。

 ロクサーヌとユーフェンは忙しいようで、会いに来てくれないし、不満は募るばかりだ。

 ああ、早くロクサーヌとユーフェンのスタイルを確認したい。

 きっと、ユーフェンはすごい数値になるだろう。

 B115、W59、H94とかかなぁ……。

 想像しただけで興奮してくる。


 俺が妄想を膨らませていると、偵察隊が任務から帰ってきて、興味深い報告をした。


「カーライル様、勇者がパーティーを結成したようです」

「パーティーだと!」

「はい、4人で徒党を組んで、我々に戦いを挑んできています」

「ふん、性懲りもなく」


 偵察隊の話では、リードハルトの他に、ダース、マーサ、ライアスという人間がパーティーに加わっているらしい。

 ダースとマーサは知っているが、ライアスというヤツを、俺は知らない。

 名前の響きからすると、何となく戦士っぽい感じがするが、実際のところはわからない。

 どんなヤツであっても、俺の敵ではないことには間違いない。


「本日、神の山付近に勇者一行が現れるという情報があります。我々としては、待ち伏せをして勇者を叩くつもりです。是非、カーライル様もご参加ください」

「いいだろう。どうせ、暇だし。アホ勇者のパーティーがどのくらいのものか見てやろう」

「ありがとうございます。では、後ほど」


 神の山か、あの辺には、伝説の金属オリハルコンがあるとかいう噂がある。

 オリハルコンで伝説の名剣でも作る気だろうか。

 あんなひ弱な勇者がどんな剣を持ったとしても、俺の足元には及ばない。

 だが、魔界に存在する伝説の金属を人間に渡してしまうのはもったいない。


 勇者が神の山に来るのは、夕方頃だと予想されている。

 俺はユートの魔法で一瞬で移動できるから何の問題もないが、偵察隊は神の山を目指して、今から出発するとのことだった。


「じゃあ、俺は後で行くから。夕方頃でいいんだろ」

「はい、お願いします、カーライル様」


 それから、俺は自分の部屋で時間を潰していたのだが、嬉しいことにユーフェンが部屋に来てくれた。


「カーライル様、今、お時間よろしいですか?」

「おお、ユーフェン、もちろんだ。早く入れ」

「嬉しい。では、お邪魔します」


 俺はステイルを使って、ユーフェンのスタイルを確認した。


 ◇◇◇◇◇◇◇

 ユーフェン 女


 L V:9


 H P:430

 M P:560


 攻撃力:180

 防御力:120

 魔 力:190

 精 神:130

 敏 捷:160


 スキル:癒し魔法


 B:119

 W:59

 H:97

 ◇◇◇◇◇◇◇


 俺は目を疑った。

 B:119、W:59、H:97だと!

 バストが119!

 今までユーフェンのバストを思う存分堪能してきた俺でも、119という数字は衝撃だった。


「おお、ユーフェン。素晴らしい」

「カーライル様、私、嬉しい。もっと褒めて」

「ああ、何回でも言おう。ユーフェン、君は本当に素晴らしい」


 ユーフェンは俺の隣へ座り、頬を赤らめた。

 そして、優しく唇を近づけてきた。


 しばらくの間、俺たちは唇を奪い続けた。


 そして、お互いが重なり合って1つになり、最高の時間が過ぎていった。


「カーライル様、では私はこれで」

「ああ、ユーフェン。今日も最高だった」

「私こそ、カーライル様に喜んでもらえて、嬉しいです。また、来ます」

「わかった。俺はこれから戦いに行かなけばならない。また、会おう」


 ユーフェンは甘い香りを残して、去っていった。

 俺はその余韻を味わってから、部屋を出た。


 そろそろ、神の山付近に勇者が現れるだろう。


「ユート」


 移動魔法ユートにより、俺は神の山の近くまで一瞬で移動した。

 偵察隊はすでに到着していて、陣形の確認やら、武器の手入れを行っているようだった。


「カーライル様!」

「ああ、隊長、来てやったぞ」

「ありがとうございます。カーライル様がいらっしゃれば、勝ったも同然です」

「はは、まぁ当然だな」


 クソ勇者一行が現れたのは大分時間が経ってからだった。

 報告通り、4人パーティーを組んでいた。


「勇者リードハルトが来たぞぉ!」


 見張りの雄たけびのような声と共に、戦いの狼煙があがった。


「よう、嘘つき勇者」

「カーライルか、今度は負けない!」

「パーティーを組んだって聞いていたが、本当だったようだな。お前みたいな嘘つき最弱勇者と組むヤツがいるとは、驚きだぜ」


 俺がリードハルトを挑発していると、マーサはすでに何かの魔法を詠唱していた。

 この前のような氷属性の魔法ではないようだ。


 そして、ライアスとかいうヤツは、思った通り戦士のタイプで、大きな斧を振りかざして俺に突っ込んできた。


「カーライル、俺の必殺技をくらえ! アックスボンバー!」


 リードハルトよりはスピードもあるし、筋も悪くないが、俺にとっては五十歩百歩といったところだ。

 目をつむっていても避けられるような、遅い攻撃に変わりはなかった。


 ここで、後ろから魔力を帯びた何かが飛んできた。


「魔法の矢か! ダースとかいうアーチャーの技だな」


 魔力を感知できる俺に、その攻撃は効かないというのに。

 こいつらは、学習能力がないんじゃないのか。


 ここで俺は、4人の強さをステイルを使って確認することにした。


 ◇◇◇◇◇◇◇

 リードハルト 男


 L V:28


 H P:860

 M P:480


 攻撃力:360

 防御力:300

 魔 力:270

 精 神:220

 敏 捷:280


 スキル:退魔神剣、挑発

 ◇◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇◇

 ダーズ 男


 L V:30


 H P:640

 M P:290


 攻撃力:300

 防御力:310

 魔 力:290

 精 神:200

 敏 捷:190


 スキル:魔力の矢

 ◇◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇◇

 ライアス 男


 L V:33


 H P:1200

 M P:120


 攻撃力:470

 防御力:390

 魔 力:180

 精 神:230

 敏 捷:180


 スキル:アックスボンバー

 ◇◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇◇

 マーサ 女


 L V:23


 H P:560

 M P:780


 攻撃力:240

 防御力:230

 魔 力:460

 精 神:390

 敏 捷:220


 スキル:氷属性魔法、補助魔法


 B:86

 W:57

 H:87

 ◇◇◇◇◇◇◇


 予想していたことだはあったが、やはりステータスは話にならないくらい低い。

 こんな人間が4人集まったところで、烏合の衆に過ぎないだろう。


 俺がステータスの確認を終えると、4人は何か新しい動きをし始めた。

 俺を囲むようにして距離をとり、それぞれが魔法や必殺技の構えをしている。


「カーライル! 4人の連携攻撃を喰らえ!」

「連携だと!」

「そうだ、カルテットバスターだ!」


 4人は一斉に、俺に向かって攻撃をしてきた。

 だが俺は、得意のユートの魔法で空中に移動し、難を逃れた。


「空を飛ぶとは、卑怯だぞ」

「そうだ、卑怯だ」

「卑怯よ」

「降りてきて、正々堂々と戦え」


 魔王の息子である俺に、卑怯という言葉を浴びせるこいつらの頭の悪さに、俺は吐き気がしてきた。


「バカ、何が卑怯だ!」


 だが、このクソ勇者一行は、俺を非難し続けた。

 こんなヤツらが勇者として認められている人間界は、本当に終わっているとしか言いようがない。


「あーもう、面倒だから、終わらせるぞ。エビルファイア-クロス!」


 俺はエビルファイアを両手に発生させ、下にいる勇者どもに放った。


「うわああああああ」

「ぐがあああああ」

「きゃーーーーーーー」

「ほげーーーー」


 4人は気持ち悪い悲鳴を上げた後、リードハルトの使った移動アイテムの効果によって、どこかに消えてしまった。


 今回もあっけない戦いだった。


「リードハルト様、ありがとうございます」

「パーティーを組んだっていっても、全然大したことがなかったな」

「リードハルト様のお力があればこそです」

「それじゃ、俺は城に戻るから。お前らも気を付けて戻って来いよ」

「はい」


 俺はユートの魔法で城に戻り、ユーフェンと体を重ね合ったベッドで休むことにした。

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