第9話 神アイテムゲット

 ロクサーヌを取り戻してから、しばらくは平穏な日々を過ごしていた。


 ロクサーヌとユーフェンは毎日のように俺の部屋に遊びに来るようになり、俺は二人の愛を存分に受け止めた。

 最初は遠慮気味だったロクサーヌは、どんどん情熱的になっていき、二人で過ごす時間は激しいものになっていった。


「カーライルよ」

「はい、何でしょうか」


 そんなある日、俺は久しぶりに父である魔王デスカールに呼ばれた。

 クソ勇者の討伐を依頼されるのかと思っていたが、意外なことを告げられた。


「実はカークスが新しい道具を発明したのだ」

「カークス、あのカークスですか?」


 カークスは魔界一の科学者としてその名を轟かせていた。

 戦闘はそこまで得意なヤツではないが、頭脳明晰で魔物でも扱える武器や防具を発明するのが得意だ。

 最近では、魔法使い系に大人気の『ドラゴンローブ』を発明したことで有名だった。


 まぁ、俺には武器や防具など必要ないのだが、カークスのようなヤツが発明したものは見てみたくなる。


「それで、どのようなものを発明したのですか?」

「それはな、カークス本人から説明させよう」


 10分ぐらいで、カークスが登場した。

 ドワーフ族のカークスは背が低く、遠くから見れば人間の子供のように見える。

 ゴーグルのようなものをつけていて、それを外した姿を見た者はいないという。

 一説によれば、ゴーグルを外した姿は、自分の愛した人にしか見せないのだという。


「カーライル様、お久しぶりでございます」

「おお、カークス、久しぶりだな。今日は何か発明した物があるとのことだが」

「はい、これでございます」


 カークスは懐中時計のようなものを、俺に見せた。

 俺の掌よりも少し小さいくらいの大きさで、ボタンが2つ付いている。


「カークス、これは何だ?」

「はい、ステイルでございます」

「ステイル?」


 カークスは自信ありげな表情を浮かべた。

 普段は慎重なカークスが、こんな表情をするのなら、すごいアイテムなのは間違いなさそうだ。

 俺はどんなアイテムなのか知りたくて仕方がなくなってきた。


「カークス、説明してくれ」

「はい、カーライル様。これは自分や相手の強さを数値化し可視化するためのアイテムです。2つのボタンがありますが、右のボタンを押せば自分の強さが、左のボタンを押せば相手の強さが数値となって見えます」


 おおおおおおおおっ!

 それはすごいではないか!

 やっぱり、カークスは天才だ!


「カークス、お前は本当にすごいヤツだ!」

「ありがとうございます」

「右のボタンで自分の強さがわかるんだな。では、さっそく使わせてもらうぞ」


 俺は勢いよく右のボタンを押した。


「おおぉ! 見えるぞ! 俺の強さが見えるぞ!」


◇◇◇◇◇◇◇


カーライル 男


L V:12


H P:3450


M P:4560


攻撃力:2930


防御力:2780


魔 力:5670


精 神:3910


敏 捷:2350


スキル:火属性魔法、氷属性魔法、雷属性魔法、無属性魔法、究極魔法、補助魔法


◇◇◇◇◇◇◇


 俺ってレベル12だったのか。

 それなのに、魔界随一の実力者なのか。

 ということは、まだまだ成長して、もっと強くなるということか。


「カークス! でかしたぞ!」

「カーライル様、ありがとうございます。お役に立てて嬉しいです」


 俺は左のボタンも押してみた。

 カークスの説明では、相手の強さを見ることができるというが、今はカークスと向き合っているから、カークスの強さが数値化されるに違いない。


◇◇◇◇◇◇◇


カークス 男


L V:35


H P:670


M P:1240


攻撃力:780


防御力:560


魔 力:890


精 神:1390


敏 捷:350


スキル:錬金術、メカニック、交渉術


◇◇◇◇◇◇◇


 ふむ、どうやらカークスは非戦闘員がお似合いらしいな。

 レベルは35もあるが、ステータスは俺よりもずっと低い。

 このまま発明に専念してもらった方が、魔界のためになるだろう。


「カーライル様、実は……」

「ん、何だ、カークス」

「ステイルで女の強さを見てみてください、グヒヒ」


 どういうことだ。

 気持ち悪い笑い方だな。

 でも、カークスは適当なことは言わないヤツだから、何かあるのだろう。


「よし、それじゃ、そこのハーピィの女、こっちへ来い」

「はい、カーライル様」

「じっくりと見てやるぞ」


 俺はハーピィの女を見て、左のボタンを押した。


「何! これは!」


◇◇◇◇◇◇◇


フレイ 女


L V:7


H P:120


M P:170


攻撃力:80


防御力:50


魔 力:130


精 神:90


敏 捷:120


スキル:風属性魔法


B:94


W:56


H:88


◇◇◇◇◇◇◇


 おおおおおおお!

 何と!

 女のスタイルが見えるぞ!


「カークス! よくやった!」

「はい、ありがとうございます」

「ははははははっ、こいつはいい!」


 カークスがステイルにこんな小細工を仕込んでいたとはな。

 中々味なことをするヤツだ。


 これは、ロクサーヌやユーフェンのスタイルも確認せんといかんな。

 二人のことをしっかりと把握しておくのも、魔界の実力者として当然のことだからな。

 グフフッ。


 俺は近くにいるヤツを見ては、左ボタンを押して、そいつの強さを見てみた。

 わかってはいたことだが、俺より強いヤツなどはなく、俺の3割くらいの強さがあれば、相当にマシな方だった。


「では、私はこれで」

「ああ、ありがとう、カークス」


 俺は改めてカークスのすごさに感動した。

 こんなヤツが魔界にしてよかったと思った。


「カーライルよ」

「はい、何でしょう」

「ステイルを手に入れて嬉しい時に、こんな頼みをするのもアレだが……」

「頼み?」

「ああ、大したことはないのだが、人間のウィザードに苦戦しているという報告があってな。さくっと行ってきてはくれぬか」

「わかりました」


 どうせ大した相手じゃないとはわかりつつも、俺は少し嬉しかった。

 このステイルを実戦で使うことができるからだ。


「ユート」


 俺は戦場に飛んでいった。


「カーライル様、助けにきてくださったのですね」

「ああ、デスカールに頼まれてな」

「ありがとうございます」

「それで、人間のウィザードというのはどいつだ」

「アイツです。あの帽子をかぶっている女です」


 女とはちょうどいい。

 このステイルで強さを見れば、スタイルもわかるということ。

 戦いの楽しみが1つ増える。


「カーライルか!」

「ああ、そうだ。お前は初めて見る顔だな」

「私はマーサだ」


 はっきり言って、ロクサーヌに比べれば、全然好みじゃない。

 だが、厚手の服を着ているせいで、服の上からではプロポーションがよくわからない。

 ここはステイルの出番だな。


 俺は女を見て、左ボタンを押した。


◇◇◇◇◇◇◇


マーサ 女


L V:23


H P:560


M P:780


攻撃力:240


防御力:230


魔 力:460


精 神:390


敏 捷:220


スキル:氷属性魔法、補助魔法


B:86


W:57


H:87


◇◇◇◇◇◇◇


 おいおい、がっかりだな。

 弱いにもほどがあるし、スタイルも大したことない。

 コイツはエビルファイアでさったと片付けることにしよう。


「つまらんな」

「何! そんな余裕を見せていられるのも、今のうちだ。私の氷魔法をくらえ!」

「そんな魔力で俺に敵うはずないだろ」

「うるさい! アイスボール!」


 マーサの手から氷の玉が発射された。


「ふん、エビルファイア!」


 俺は掌から、炎を出した。

 マーサの氷の玉の数十倍はあろうという巨大な炎だ。


「何! そんな……」

「燃え尽きろ!」

「うわあああああああああああ」


 マーサは氷の魔法を使って、炎のダメージを和らげたが、すでに立っているのもきつそうなくらいダメージを受けていた。


「それじゃ、俺はこれで帰る。あとは、お前たちでも何とかなるだろ」

「はい、カーライル様、ありがとうございました」

「ああ、それじゃ」


 俺はユートで魔王城まで戻った。

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