第27話 便箋

雪村小梢様。


この手紙をあなたが読んでいるという事は、私は無事に死ねたのかな。

死ぬのに無事というのも変だけどね。


あなたも知っての通り、私は虐めにあっていました。

でも、私が死ぬのはそれが原因ではありません。


昨日、私は耐えられない程の酷い目に会いました。

とても、この先を生きていけないくらいの出来事でした。



私は、小学生の頃から虐められていました。

理由は、私が醜いかららしいです。


私も、できれば雪村さんみたいに可愛く生まれたかった。

そんな事を考えても仕方ないのにね……。


だって、私はブスに生まれてきたんですもの。

これまでも、何度も死にたいと思いました。そのくらい虐めは酷かったです。



そんな時でした。彼に会ったのは。



中学一年の遠足、覚えてますか?

海の近くの水族館。小さな水族館でしたね。


そこでも私は男子からからかわれていました。



酷いんですよ私の事を『どんこ』って醜い魚に似ているって言うんだもの。


辛くて、苦しくて……。



でも、その時、彼が庇ってくれたんです。


『醜くなんてないよ、愛嬌のある顔だって』



なんだか、フォローにもなってないけど、私は凄く嬉しかったの。



彼は、森岡圭君。


雪村さんは知ってるかもね、成績は学年一位を争うくらい良かったから。




そして私はその時、初めて恋をしたのです。



恋をして、私は強くなりました。

どんなに酷い事を言われても、負けないって思えるようになったんです。


それに、私には頑張れる理由もできました。

森岡君が、私に勉強を教えてくれるようになったんです。


どういうつもりで私に勉強を教えたのか、今となっては分かりませんが、きっと、虐められている私の事を可哀そうだと思ってくれたんだと思います。



だから私は、一生懸命に勉強しました。少しでも森岡君の気持ちに応えたかったからです。



何度も、森岡君に気持ちを伝えようと思いました、でも、私はブスだし、気持ちを伝えるなんてできませんでした。



そうこうしているうちに、森岡君は転校していきました。



だけど、そのおかげで私には目標ができたのです。

森岡君は、田舎を出て東京の大学に行くんだと言ってました。


きっと、森岡君なら有名な大学に進学するだろうと私は思っています。


だから、私も頑張って勉強して東京の大学、それもできる限り有名な大学に行こうと決めました。


そうすれば、森岡君にまた会えると思ったのです。

だから、、目標があったから頑張れたのに、もう無理です。



こんなことを、友達でもない雪村さんにお願いするのは見当違いだと十分に分かっています。

でも、お願いできるのは雪村さんだけなんです。



東京の大学に行って、森岡君を見つけて、伝えて欲しいんです。



私が森岡君を好きだったことを。



私がいっぱい頑張ったことを。




雪村さんは頭が良いから、きっと有名な大学に入れると思います。


だから、お願いです。

私の気持ちを届けてください。



もう、森岡君には会えない、私のために。



お願いします。




圭君が好きだって



伝えてください。




     土門華子





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