第14話 JC母は見ていた
僕もスマホを取り出し、佳那のQRコードを読み込み、友達登録を済ませる。
「あ、メッセージアプリ用のアカウント名になっているから、『佳那』に変更しておいてね」
そう言うと僕の手を取り、スマホの画面を操作し、立った今登録した自分のアカウント名を『佳那』に変更した。
腕に佳那の胸のふくらみを感じて、僕は下半身がモヤモヤしてくるのを感じた。
顔もくっ付きそうなくらい接近している。
と、そこへ。
「ちょっと、何やってるのよ!」
痺れを切らせたのか、陽菜が自分の部屋から出てきてリビングに居る。
「もう~、圭。勉強するよ!
ママも邪魔しないで!」
そう言うなり、陽菜は僕の手を取り、佳那から引き離す。
「あらあら、陽菜ちゃん。そんな乱暴しないのよ、【圭君】が困ってるじゃないの。
じゃあ、圭君、あとで連絡するわね。
陽菜ちゃんも勉強頑張ってね」
陽菜は、憎々しげに佳那を睨むと、「イコ!」と言って部屋へ僕を連行していった。
(いったい、何なのだ……? この母娘は)
母娘で、こんなに仲が悪いなんて、僕には理解不能だった。
部屋に入ると陽菜は、今度は僕を睨みつける。
「ママにはパパが居るんだから、変な気を起こさないでよね!」
「変なって、何もしてないじゃないか」
僕が弁明すると、陽菜は目を細めて『アヤシイ~』といった視線を向ける。
「だって、さっき凄い近かった!」
「あれは、連絡先を交換してたんだよ」
「なんでママと直接連絡先を交換するのよ?」
「そ、それは……、ご飯を食べさせてくれるって……」
「どこで?」
「ここで」
そう言うと、陽菜は何か考えを巡らせている風だった。
「あの女狐、何か企んでるわね」
「いやいや、自分のお母さんに向かって『女狐』って、言い過ぎじゃない? 陽菜ちゃん」
「『ヒナ』! 呼び捨てにしてって言ってるじゃん!」
さっきまで機嫌良さそうだったのに、今ではすっかりご機嫌斜めだ。ホント、JCって分からない。
「陽菜、とにかく勉強しよう。な?」
「はい」
そう言うと、陽菜は大きく手を広げて、目を閉じた。
「え……と、陽菜?
それは、何のマネかな?」
「キスして。キスしてもらうとワタシ、やる気出るの」
陽菜は目を閉じて、唇を差し出すので僕も覚悟を決め、唇を合わせた。
(もういいかな?)
僕が唇を離そうとすると陽菜は広げていた手を、僕の背中に絡めてきた。
「ちょ、陽菜ちゃん?」
「『ヒナ』! 何度も言わせないで!
圭も、ちゃんとハグして」
僕も陽菜の背に左手を回し、右手で彼女のうなじを支えた。
数秒はそうしていただろうか?
「陽菜、もう良いかな? そろそろ勉強を始めようか?」
「分かった。勉強するけど、もう一つ」
「な、なにかな?」
どうにも嫌な予感しかしない。陽菜の次の言葉に、僕は戦々恐々とした。
「明日、お休みでしょ? ワタシとデートして」
「(キター、やっぱりキター。無理な要求だ!)陽菜、明日はダメなんだ。ちょっと予定があって……」
「予定って?」
この場合、馬鹿正直に小梢とデートなんて言ったら、せっかく良い感じなのに、またへそを曲げて反抗されかねない。
「だ、大学生ともなれば、休日と言っても色々とやることがあるんだよ」
「だから、何をするの?」
「えーと、その、レポートをまとめたりとか、自分の課題を済ませたりとか……だな」
少し苦しいが、もっともらしい理由が言えた。我ながら嘘が上手くなったと思う。きっと、こうやって誰もが大人になっていくんだ、と納得した。
「ほら、家庭教師やっていると、自分の勉強時間がなくなるからさ、日曜日に集中して勉強するんだよ」
「ふ~~ん」
まだ陽菜は離れようとしない。考えてみれば、子供とは言え女の子と抱き合うのは初めてじゃないか? 自覚すると、だんだんと下半身がマズい事になってきた。
(イカン! イカン! 子供相手に何を反応してるんだ!)
とにかく、陽菜と離れないと……、僕に焦りが生じる。
「嘘つかなくて良いよ……。カノジョとデートなんでしょ、どうせ」
(くっ! 相変わらず鋭い!)
陽菜は頭の回転が速く、感の鋭い子だ。安易に嘘をついてもバレるのは分かっていたのに、やり方を間違ってしまったと後悔する。
「ゴメン、陽菜。嘘をついて」
こういう時、どう取り繕えば良いのだろう? 残念ながら僕が持ち合わせていないスキルだ。
ならば、変に策を講じるより自分の思いのままに行動をするしかない。
「陽菜とはデートはできない。君はまだ子供だ」
言っておいて、その子供とキスをしている自分に矛盾が生じている事に気づき、言いなおす。
「いや、違うな。キスもしてるのに、今のは狡かった。
分かった。明日じゃなくて別の日にデートしよう、ちゃんと時間を作るから」
「ほんとに 」
「ああ、約束するよ。だから……、離れてくれないか?」
「ん? ねえ、圭。どうして腰が引けてるの?」
それは、下半身がJCの身体に反応してるからだ、なんてことは言えない。
「あ、いや、これはだな、実は、トイレを我慢してたんだ。あはは」
「なんだ、はやく言ってくれれば良かったのに。さっさと行ってきなさいよ」
そう言うと、ようやく陽菜は離れてくれた。僕はホッと安堵する。
「じやあ、トイレに行ってくるから、それまでに勉強の準備をしとくんだよ」
「はーい」陽菜は机に向かう。
僕も言った手前、トイレに行かなければならない。陽菜の部屋を出たのだが……。
(!!)
ドアの外に佳那がいた。
(マズい! 今のやり取りを聞かれたか? 見られたか?)
ドキドキしながら、心を落ち着かせる。そして、何事もないように「すみません、ちょっとトイレに行きたくなって」と愛想笑いした。
「あら、どうぞ。トイレはそちらよ」
そう言い、すれ違いざまに「今度、ご飯食べに来てね。圭君」と耳打ちしてリビングに戻っていった。
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