208話 出撃
そうとなれば、早速行動開始だ。
俺は手を振っているリンとシルクの元に行き、こっそり耳打ちする。
ローラさんは、兄さんが呼んでくれたのでこの距離なら聞こえないはずだ。
「シルク、リン、緊急事態みたいだ」
「……わかりましたわ。それで、私は何をすればいいですの?」
「私はどのようにしますか?」
「流石、話が早くて助かるよ。実は……」
簡単に二人に説明をする。
俺自身も状況は把握してないけど、どうやら魔物の群れが押し寄せていると。
そして、俺はそれを止めに行くということを。
二人は顔を見合わせて、コクリと頷いた……相変わらず、冷静で頼りになる二人だ。
「では、私はここに残って誤魔化しますわ。マルス様が何か催しをするということで。マルス様が悪戯する時の誤魔化しは得意ですの」
「うん、それでお願い……そういや、城を抜け出す時もシルクが言い訳してくれたや」
「では、私はいざという時のためについて行きましょう。貴方の身を守るのが、私の役目ですから」
「はは……二人とも頼りになるね。ほんと、俺には勿体ない婚約者だよ」
「「なっ……!」」
二人の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
すると、何を勘違いしたのか民達が騒ぎ出す。
「ヒュー! お熱いねえ!」
「あの城下町をうろついてたマルス様が……歳をとるわけね」
「あの二人と、良く出かけてるのを見たなぁ」
そんな言葉に、俺達は顔を見合わせて微笑む。
そうだった……記憶を取り戻したことで混乱してたけど、ここには俺の思い出……マルスの思い出が詰まってるんだ。
悪戯をしては怒られ、時に遊んでもらい……そこを壊させるわけにはいかないよね。
「すぅ……みなさーん! 今から、少しイベントがあります! 俺は席を外しますので楽しみにしててくださいねー!」
「おっ!? 何かやるみたいだぞ?」
「あら、楽しみだわ」
「みんなー! マルス様が何かやるらしいぞー!」
どうやら、民は俺が抜け出すことに疑問を持たないようだ。
うん、兄さんが説明するまでもなさそう。
「ふふ、日ごろのマルス様の行いのおかげですね」
「いや、本当に。良く行事やらを抜け出してたのは有名ですから」
「それはそれで複雑なんだけなぁ……まあ、今は良しとしますか。じゃあ、ルリ!」
「キュイ?」
まるで『どうしたのー?』と言いながら、俺の側にやってくる。
既に大きいので、二人くらいなら短時間なら平気かな?
「ルリ、俺とリンを乗せて飛べるかな? 君の力が必要なんだ」
「キュイー!」
「これは私にもわかりますね。もちろんって言ってますよ」
「みたいだね。それじゃ、行きますか!」
俺はルリに跨り、足にリンがぶら下がる。
そしてルリが羽ばたいて高度を上げていく。
そのまま俺たちは、城壁の向こうへと飛び立つのだった。
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