206話 襲撃?
……なんだ? なんか、周りにいる兵士達の様子が変だ。
すると、一人の兵士が御者に近づき……兄さんに何かを渡す。
女性陣は三人で並んで手を振っていて、まだ俺以外には気づいていない。
なので、こっそりと兄さんに近づいていく。
「……なに? くそっ、こんな時に限って」
「兄さん、どうしたの? 何か問題あった?」
「マルス……パレードは中止だ。魔物の集団が、王都に向けてやってきている」
「えっ? こ、このタイミングで? そもそも、どうして……」
折角の兄さんの結婚式なのに……これは、兄さんの国民に対する信頼を得る機会でもあるのに。
パレードを中止なんかしたら台無しじゃないか。
「理由はわからんがどうでもいい、民の安全が最優先だ。折角の祝いに水を指すことになるのは残念だがな」
「兄さん……」
兄さんは、そう言い拳を握りしめた。
今まで結婚せずに、ずっと俺達と国のために頑張ってきた。
そして、ようやく自分が幸せになる時だった。
……そんな無粋な輩は俺が許さない。
「兄さん、パレードは続行しよう」
「マルス? なにを言っている?」
「民の様子をみるに、まだバレてないんでしょ?」
「ああ、一部の兵士達だけだ。お前達がきた方向から、魔物の集団が来ていると」
ほんとだったら、とっくに騒ぎになってるはず。
おそらく、みんながパレードを見にきてることも要因だ。
後は兄さんがパレード中は、警備の面から門は閉まって出入りが出来ない。
「だったら、なにもなかったことにすれば良い」
「……どういう意味だ?」
「俺が行って、そいつらを片付けてくるよ。兄さんの大事な祝いの日を邪魔はさせない」
「マルス……しかし、これはお前のための儀でもあるのだ」
「ありがとう、でも大丈夫。俺には、まだ本番があるから。それに、シルクとリンなら賛成してくれるはずだよ」
既にの目的であるお披露目は済んでいるし。
兄さんと仲が良いこと、シルクとリンと仲むずましい姿を見せることだった。
「それはそうかもしれないが……そもそも、お前を危険な目には」
「オーレンさんとローランドさんが認める腕だよ?」
「それはそうだが……だが、お前がいなくなる理由はどうする?」
「簡単さ。弟は余興のために、少し離席をすると言っておいて。さあ、兄さん時間がない……俺を信じて」
「勝算はあるんだな?」
「うん、もちろん。今度は、俺が兄さんを守るから」
「っ……生意気言いおって……わかった、お前を信じよう。マルス、どうか王都を救ってくれ」
俺はその言葉に、力強く頷く。
今まで王都の民や兄さんには、お世話になってばかりだった。
だから、今度は俺の番だ。
そのために、このチートを使うなら女神様も許してくれるよね。
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