205話 パレード
城下町に繰り出すと、そこには人々が溢れかえっていた。
「ロイス国王陛下ー! ご結婚おめでとうございます!」
「ローラ様! お綺麗ですわー!」
そんな声に兄さん達が笑顔で手を振る。
二人とも身長も高いし、見栄えするなぁと感心していると……。
「マルス様ー! ご婚約おめでとうございます!」
「なんでも、二人同時とか! こりゃ、両手に華ですな!」
「マルス様のおかげで新鮮なお魚が食べられるようになったんだから当然よ!」
「セレナーデ国と独自で交渉! そこからご心身の氷魔法を使って王都にまで届けてくれたもんな!」
お、俺の方にもきた!?
いや、ここに立ってる以上は当然なんだけど……でも、こんなに目立って良いのかな?
リンのことも狙ったわけじゃないし、あれは自分がサボる口実で旅行しただけだし。
「わわ……ど、どうしよう?」
「ほら、マルス様。手を振ってくださいませ。もちろん、リンも一緒に振ってください」
「わ、わかった」
「が、頑張ります」
何とか笑顔を作り、手を振ると……大歓声が上がる。
それは兄さんの比ではない。
そして、その歓声の正体は獣人達の声だった。
「「「ウォォォォォォ!」」」
「我らが英雄マルス様だァァァ!」
「誇り高く、最強の獣人と言われた炎狐族の方とご婚約するとか!」
「おかげさまで、我々の生活が変わりましたっ!」
「リン様のおかげです!」
……そうか、兄さんが言ってたのはこれだったのか。
俺がセレナーデ国と交易を再開したこと、魔の森から食材を取って辺境を改革し始めたこと、そして氷魔法で王都までの流通をよくしたこと。
そして獣人の扱いを変えていき、それを広げていったこと。
説明は受けてたけど、ようやく実感した。
「わ、私はどうすれば……」
「リン、堂々とするのです。それが、同じ獣人を救うことになりますわ。そして、未来の同胞を助けることに繋がりますから」
「シルク様……はいっ」
「よし。リン、一緒に手を振るよ」
そして、リンの手を握って一緒に手を振ると……再び歓声が上がる。
その中には人族もいて、彼らも好きで獣人を迫害していたわけじゃないと思った。
もちろん、心底悪い人っていうのもいると思う。
それでも、少しずつでも良くなっていくといいよね。
「でも、こんなに目立って良いのかな?」
「ふふ、平気ですわ。ほら、きましたの」
すると、ロイス兄さんが俺に近づいてくる。
私語が多いと叱られると思ったら、俺の手を握って上に持ち上げた。
「皆の者! この者が我が自慢の弟マルスだっ! これから辺境を改革し、いずれは栄えさせるであろう男だ! そして、ここにいないライルとライラと共に国を良くすると誓おう!」
「「「ウォォォォォォ!」」」
「ロイス陛下万歳! マルス様万歳!」
「ほら見ろって! 仲良いじゃねえか!」
「誰だよ! マルス様とロイス陛下が仲悪いとか言ってたのは!」
そんな声があちこちから聞こえてくる。
俺が兄さんに視線を向けると、コクリと頷いた。
「なるほど、これが狙いってこと?」
「ああ。俺より目立ったマルスを許すことで、国王としての度量を示した。そして、マルスのすることを俺は認めていると。ただ……自慢の弟という台詞に嘘はない。マルス、お前という弟を持ったこと誇りに思う」
「兄さん……そんなのは俺の台詞だよ。俺達は、全部兄さんに押し付けちゃったから。ライル兄さんと、ライラ姉さんも同じこと言うよ。ロイス兄さんは、俺達の自慢のお兄ちゃんだって」
「……そうか、それならば虚勢を張った甲斐があるというものだ。さあ、まだまだパレードは続くぞ」
その言葉に頷き、俺は再び手を振るのだった。
この行動によって、少しでも国が良くなると願って。
そして王都を巡り、いよいよ終盤となった時……辺りが違う意味で騒がしくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます