204話 パレード前

 準備が整ったら、みんなで兄さんとローラさんのところに向かう。


 すでに城の入り口にて、俺たちを待っているようだ。


入り口に行くと、白のタキシードを着たロイス兄さんと青いドレスをきたローラさんがいた。


「マルス、遅いぞ。もう、皆揃っている」


「ごめん、ロイス兄さん」


「だが……顔を見るにきちんとやったようだな」


「まあ、何とか頑張ったよ」


「うむ、偉かったな。さて……」


 すると、ロイス兄さんがリンの前に出る。


「リンよ、よく似合ってるな」


「は、はいっ、ありがとうございます」


「改めて、辺境にいくマルスに付いてくれたこと、ただの兄として感謝する」


「い、いえ! 私は、ただ……自分がマルス様の側に居たかっただけなんです」


 今、考えると……俺って馬鹿だなぁ。

 そんなリンに対して、奴隷じゃないし逃げてもいいよだなんて。

 あの時は記憶を取り戻したばかりで、色々と混乱していたとはいえ。

 ほんと、リンには感謝しないと。


「それでもだ。お主がいたから、我々兄妹は安心して追放することができた。それは、きっとライルやライラも同じ気持ちなはずだ」


「も、勿体無いお言葉です! 私は御三方にも、大変可愛がって頂きました……私は皆さんに感謝してます。なので、私にできることなら力になりたいと思います」


「うむ。これからは獣人の扱いについても考えていかねばならない。国を良くするために、お主の力も貸してくれ」


「はっ、私にできることなら何なりと」


「そして……できれば、この愚弟を末永くよろしくな」


「……ふぇ!? あ、あぅぅ……」


「くく、まだ早かったか。まあいい……皆の者、待たせた。それでは、パレードを始めるとしよう」


 兄さんの合図で、皆が動き出す。

 主役の兄さん達が、パレード台の上の先頭に。

 俺はシルクとリンと並んで、パレード台の上の真ん中に乗る。

 最後にルリを連れたラビとシロが最後尾に乗り込んで、馬が動き出す。


「き、緊張してきた」


「わ、私もです」


「僕もですっ……こんなところにいていいのかな」


「わたしですぅ〜!」


 俺達がオロオロしてる中、ただ一人落ち着いて佇んでいる人がいた。


「ふふ、皆さん平気ですわ。こういう時はにっこりと笑って、堂々としていましょう。特に、この結婚式には色々な意味があるのですから」


「そ、そうだよね。俺と兄さんが仲良いこと、シルクとリンを俺の婚約者って示すこと、自由人であるラビとシロを連れていることで、獣人扱いを変えるっていう意思を示すんだよね?」


「はい、そうですの。なので、変におどおどすると逆効果になりますわ。リン、シロにラビ、もっと堂々としてくださいませ。貴方達は、私とマルス様の大事な友人なのですから」


 そのシルクの言葉と強い瞳に、強張っていた三人が力強く頷く。

 それを見て、俺もしっかりしなきゃと思った。

 こんなんでも、シルクの婚約者になる訳だしね。


「くく、相変わらずシルク嬢は立派だな。俺がいうことがなくなってしまったぞ」


「ふふ、本当ですね。頼りになる義妹になりそう」


「ぎ、義妹!? まだ早いですの!」


「どうやら、こっちの耐性はないようだな。さて……そろそろ、城を出る。ここからは私語は厳禁だ」


「うん、わかった。ルリ、いい子にしててね?」


「キュイー!」


 そして、城下町への門が開いていく。


 いよいよ、パレードの開始だ。


 穀潰しと言われてきた俺だけど、頑張ろうと思う。


 これまで、俺をお世話してくれてきた兄さんや姉さん達のために。


 そして、俺についてきてくれたシルクやリンのために。


 それが、みんなに報いることだと思うから。






 ~あとがき~


 皆さん、おはようございます。


 読者の皆様、最新話まで読んでくださり、誠にありがとうございます。


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