177話 歓迎される?

 道中の村々に話を聞きつつ、王都へと向かっていく。


 そして、聞き込みで分かったが……どうやら、出現率が高くなっているらしい。


 ただきちんと騎士団の方々が巡回をしており、大事には至ってないそうだ。


 その後、二回ほど魔物達と出会い……いよいよ、懐かしの王都の門が見えてくる。


「……ここを出て行った日が懐かしいや」


「ほんとですね……あの日、出て行った日が懐かしいです。あれから、半年以上が過ぎてるんですよ?」


「いやぁ〜あの頃はまだ寒かったもんね。それが、今じゃ暑くなってきてるし」


 すると、シルクがジトっと睨んでくる。


「もう、あの時は大変でしたのよ? 私を置いて行ってしまうんですもの」


「ご、ごめんなさい!」


「ふふ、許してあげますわ。今度は、置いていかないてくださいね?」


「うん、もちろん。俺には、シルクが必要だし」


「……えへへ」


「さて……またすぐに寒くなってきますから、その前に魔獣飼育計画を進めないとですね」


「だね。というわけで、ささっと結婚式を終わらせて帰りますか」


 ……あれ? 今、フラグっぽいことを言わなかった?

 平気だよね? 何事もなく帰れるよね?




 そして、門に到着すると……ゼノスさんが兵士さんに近づく。


「貴方は……そこの馬車は王家の紋章!?」


「セルリア侯爵家嫡男、ゼノス-セルリアだっ! この馬車にはフリージア王国の王族であるマルス様が乗っていらっしゃる! すぐに国王陛下に取り次ぎを!」


「は、はっ! 畏まりました! 誰か! すぐにお知らせしろ! あのマルス様が帰ってらしたと! 都市の人々にも知らせるんだっ!」


「「「はっ! 直ちに!!」」」


 後ろにいた兵士達が慌ただしく動き、次々と行動を開始する。


「な、なんか大ごとになってない? というか、ゼノスさんどうしたの?」


「ふふ、お兄様だって真面目な振りはできますわ……というより、普段がおかしいですので。あれでも、国内屈指の実力と知名度ある方ですから」


「まあ、仮にも侯爵家嫡男だもんね。それなりに、しっかりしてないとまずいか」


「マルス様も、たまにはしっかりしないと」


 ……あれれー? 盛大なブーメランが帰ってきたぞー?

 いやいや、俺だってアレくらいは……できるかな。

 というか、結婚式に出るからしっかりしないといけないよね。


「ん? 何だか揉めてる?」


「お兄様が兵士さん達と話し込んでいますわ」


「何か、あったのでしょうか?」


 すると、ニヤニヤしながらゼノスさんが戻ってくる。


「さて、マルス様。なんか、一騒ぎありそうっすね」


「ん? なんの話ですか?」


「まあ、行ってからのお楽しみってことで」


「は、はぁ……」


「とりあえず、シルクとマルス様は御者の方に乗ってくれ。リンは地上に降りて、歩いて馬を引いてれるか? そしたら、俺は護衛として先導するからさ」


「お兄様?」


「まあ、何か考えがあるのでしょう。ええ、わかりました」


「そういうことだ。まあ、悪いようにはしないから、とにかく急いでくれ」


 よくわからないまま、シルクと並んで御者の席に座る。

 そして門が開き、その中を馬車が通り過ぎていくと……歓声が湧き上がる。


「おおー! マルス様だぞ! シルク様もいる!」


「並んで仲が良さそうですわ!」


「やっぱり、婚約破棄したって話は噂だったんだな!」


「なんでも、こっそりと辺境開拓をしていたそうだっ!」


「獣人の労働改革などもしてたらしいぞ!」


「今も二人で、領地開拓を進めているとか!」


「最近噂の便利な魔石は、マルス様が作成したらしい!」


「穀潰しと言われた姿は仮の姿だったのか!」


「マルス様ー! ありがとうございます!」


 な、なんだ!? 何が起きてるの!?

 めちゃくちゃ人が多いんだけど!


「シ、シルク……どういうこと?」


「……そういうことですの。マルス様、失礼しますわ」


「へっ? えっと……」


 何やら腕を組まれてしまいました!

 はいっ! おっぱいが当たって気持ちいいです!


「デ、デレデレしないでくださいませ……!」


「し、仕方ないじゃん……! なに、どういうこと?」


「とにかく、手を振りますわ」


「わ、わかった」


 わけもわからないまま、俺とシルクが手を振ると……再び、大歓声が沸き起こった。


 一体、何がどうなってるの!?


 俺はロイス兄さんの結婚式に来ただけなのに〜!!

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