176話 王都への道にて

 辺境都市バーバラを出て、王都に向かっていると……俺達は、魔物の襲撃に遭っていた。


 それも、かなりの団体様である。


「ブヒヒ!」


「邪魔です!」


 オークを、リンが一刀の元に斬り伏せていく。


「僕もやれます!」


「わ、わたしも!」


 シロやラビも、ゴブリン程度なら問題なく倒せるみたいだ。

 シロはナイフで、ラビは弓を使っている。

 俺達がいない間に、二人は連携の練習もしてたらしい。

 これなら、少なくとも足手纏いにはならない。


「マルス様! あちらですわ!」


「任せて! フレイムアロー!」


 御者の位置に立ち、シルクの指示に従い、そこから魔法を放つ。

 そして俺の放った火の矢達が、スケルトン達に直撃する。


「グカカ……」


 そして、数体のスケルトンが魔石と化す。

 こいつらは、魔法しか効かないからなぁ。


「キュイ!」


「ルリちゃん?」


 シルクの護衛として側にいるルリが、何かを訴えている。


「なるほど、ルリも戦いたいと?」


「キュイー!」


「で、でも、戦えますの?」


「キュッ!!」


 ルリの大きさは、もう一メートルを超える。

 いつまでも、子供扱いではいけないよね。

 幸い、低級の魔物ばかりだし……やらせてみるか。


「わかった。じゃあ、ゴブリンを倒してきなさい。魔石は、そのまま食べちゃって良いからね」


「キュイー!」


 その言葉を受けて、ルリがゴブリンに突撃し……。


「……全く、心配いらないね」


「ル、ルリちゃん、強いですの……!」


 爪や尻尾でゴブリンをねじ伏せ、口から吐く水のブレスで敵を貫く。

 そこには甘えん坊のルリの姿はない。

 もはや、立派なドラゴンと言って良いかも。


「いやぁー、成長が早いや」


「でも、少し寂しいですわ」


「まあ、気持ちはわかるけどね。ただ、俺の感覚からすると……シルクを守りたいんじゃないかな?」


 親だからなのかわからないが、俺にはルリの考えがなんとなくわかる。

 伝いたいことや、したいことなどは特に。


「どういうことですの?」


「シルクのこと、お母さんだと思ってるのかもね」


「お、お母さん……まだ早いですわ……!」


 あと本人には言えないけど……俺の大事な子だから、ルリも守りたいと思ってるのかもね。

 でも正直な話、シルクの護衛になってくれるなら助かる。

 そうすれば、森の中でもシルクを連れていけるかも。

 最悪、ルリに乗れば良いんだし。


「でも、まだ早いよね」


「そ、そうですわ!」


「でも、それもすぐだよね」


「……ふえっ!? そ、そうなんですの? ま、まだ心の準備が……」


「おいおい、何かが致命的に噛み合ってない気がするぞ」


 すると、それまで何もしてなかったゼノスさんが馬車から出てきた。


「お、お兄様!? 聞いてましたの!?」


「やれやれ、我が妹は恋愛になるとポンコツだ」


「う、うるさいですわ!」


「なになに? どういうこと?」


「なんでもありませんわ! ほら! お兄様も戦ってくださいませ! 小さいルリちゃんが頑張ってるんですよ!」


「いや、小さくねえし……どれ、俺もやるとするか——火炎斬り!」


「グカァァァァァ!?」


 敵に突っ込み、ゼノスさんが剣に炎を纏わせ振るっている。

 その姿は、厨二心をくすぐる。


「おおっ! カッコいい!」


「ふふ、お兄様ったら珍しく気合いが入ってますわ。そういえば、マルス様は見るのは始めてですね?」


「うん、そうだね。なるほど、魔法剣士そのものだ」


「本当に、お父様にそっくりですの」


 魔物に襲われてはいるが、今のところ余裕がある。

 リンは遊撃のポジションで、縦横無尽に大地を駆けている。

 俺とゼノスさんは、リンが倒せないスケルトン系を倒せば良い。






 そして、一通り魔物を片付け終わる。


「街道沿いにしては……魔物、多くない?」


「そうですわね……私がくる時よりも、会う確率が高いですの」


「私達がバーバラに行くときも、こんなにいませんでしたね」


 リンの言う通りだ。

 あの時にこれだったら、結構大変だった。


「もしかして、俺達が開拓した影響かな?」


「どうでしょう? ここから距離は離れてますし……お兄様、何かわかりますか?」


「……確かに、俺達が来るときには数が増えていたな。その時よりも、今のが会う率が高い……だが、たまたまの可能性もある」


「そうですね。じゃあ、道中の村々で聞いてみますか」


「それが良いっすね。それをまとめて、国王陛下に報告をしましょうや」


 そして、再び移動を開始する。


 理由はわからないけど、油断しないようにしないと


 もし開拓が原因なら……責任はとらないとね。






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