175話 今までのこと、これからのこと
……懐かしいや。
王都への道を進みながら、そんなことを思う。
「懐かしいですね」
「奇遇だね、リン。ちょうど、同じことを思ってたよ」
「だと思いました。まだ、あれから半年くらいしか経ってないんですね」
リンの言う通り、俺が王都を追放……まあ、結果的に追放されてから、まだ半年足らずだ。
この道を通って、勉強都市バーバラに行ったんだよね。
「あの時は、こんな感じになるとは思ってなかったよ」
「それは私もです。正直、これからどうなるか不安だらけでしたから」
「わかるわかる! いきなり領主になってるし、問題は山積みだし!」
あの時は、本当にびっくりした。
記憶を取り戻したばかりだったし、いまいち自分のこともわかってなかったし。
「マルス様が領主ですからね。いやはや、どうなるかと思いましたが……なんとか、形になってきましたね」
「まあ、みんなのおかげだけどね。リンはもちろん、マックスさんやヨルさん。レオ、ベア、シロ、ラビ……特に、ここにいるシルクのね?」
「ええ、そうですね」
すると、それまで黙って頷いていたシルクの顔が……驚きに染まっていく。
「……ふえっ!? わ、私ですの?」
「そりゃ、そうだよ。シルクが来てくれなかったら、こんなに早く進んでないし」
「わ、私は無理矢理押しかけたようなものですし……」
「いやいや、本当に助かったから」
「その通りですね。来るとはわかってたので、それまでは頑張ろうと思ってやってましたから」
「あれ? そうなの?」
そんな話を聞くのは初耳だ。
あの時は急だったけど、話をするタイミングなんてあったっけ?
「別に示し合わせたわけじゃないですけど……まあ、こんな日が来るかもとは話していたので」
「ふふ、そういえばそうですわ」
「へぇ、そんな話をねぇ……酷くない?」
「「マルス様が悪いです」」
「はい、ごもっともです」
いかんいかん、これは分が悪いや。
えっと、なんの話をしてたっけ?
「……ああ、シルクが来て色々と滞ってたことが進んで……ついでにライル兄さんもきて」
「その後に、ライラ様が来たんですよね」
「あとはルリが生まれて、セレナーデ王国に旅行したり。そしたら、セシリアさんもついてきたり」
兄さんや、レオやベアは元気かな?
まだ別れてから時間は経ってないのに、やっぱり少し寂しいね。
「楽しかったですわ。最後に、お兄様やバラン様がきたり……本当に楽しかったですの」
「うん、そうだね。あんなメンバーで揃うことなんて、初めてだったかも」
「また、みんなで会えると良いですね」
「王都に行って、無事にロイス兄さんの結婚式を終わらせて……そして、領地に帰ろう。その頃には、兄さん達も戻ってきてるはず」
「ええ、そうですわ。その後は、いよいよ……中断してた魔物飼育計画ですね?」
「そうなるかな。それが終わったら、また旅行とか行ってみたいね」
敵対してる東の国ならともかく、東南にある小国ゼノリアなら行けそう。
確か、獣人が多い国だとか。
「もう! 気が早いですわ! それに、領主がほいほいと出かけてはいけないですの!」
「全くですね。落ち着くまでは、しばらく待つ必要があると思います」
「とほほ……」
あぁー、またのんびりと過ごしたいよぉ〜。
だらだらして、美味しい物を食べたいよ〜。
「……ですが、頑張ったらいけるかもしれませんの」
「ほんと!?」
「そのためには、まずは国王陛下に功績を認めて頂かないといけませんわ」
「ふんふん……どういうこと?」
「あのですね、他国に行くには本来なら国王陛下の許可が必要なのですわ。功績を積めば、国王陛下も許してくださるかと思いますの」
「ああ、そういうこと。それじゃ、なおの事頑張らないとかぁ」
頑張る……俺って頑張ってばかりじゃない?
いや、頑張る先にスローライフが待ってると信じてはいるんだけど。
目指せ! スローライフ! ……忘れてないからね?
~あとがき~
みなさま、おはようございます。
今回はまとめ回というか、これからの流れについてのお話でした。
ありがたいことに、沢山の方に買って頂き、本作品は三巻が決定いたしました。
そんな中、ウェブ版は終わりを見据えた構成を考える段階に入ります(今は折り返し地点?)
書籍は二巻や三巻が売れれば、四巻が出せるはずです(その場合は書き下ろしの可能性)
コミカライズも決まってる本作品を、できれば長期シリーズにしたいと思っております(六巻くらいまでは)
まだ買ってないよという方がいましたら、買ってくださると幸いです。
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