165話 ライラ姉さん
いやぁー、まさか全部避けられるとはね。
実はかなり無茶なことを要求してみた。
あの状態でも、やる気があるのかどうか。
だから、本当は寸止めで止める予定だったんだけど。
これは、予想外の収穫になったかな?
「キュイー!」
「ふふ、良かったですわね?」
「キュイ!」
「ルリちゃん! 一緒にお出かけしよ!」
「キュイ!」
俺が考えている横で、美少女と幼女と小さいドラゴンが戯れている。
……うむ、ほっこりしますなぁ。
こういう風景が日常的になるように、少しは頑張りますかね。
その後、ラビにルリを任せて、シルクと自分の部屋に戻る。
「これから、どうしますか? 幸い、まだお時間はありますわ。やるべき仕事も、大分終わりましたから」
「それなら、ダラダラとしようかと」
どうせなら、シルクとイチャイチャしたいです。
……なんて、言えるわけないけど。
俺は、まだ死にたくないもん。
「それでしたら、ライラ様のところに行ってあげたら良いかと思いますの」
「ん? どうして?」
「いえ、少し元気がなさそうでしたので」
「……そうなの?」
「私の見立てですけど……もしかしたら、寂しいのかもしれませんわ」
「寂しい? ……あっ、そういうこと。今はお茶会をする相手もいないもんね」
仲が良くなったセシリアさんや、ライル兄さんもいない。
ゼノスさんやバランは、あくまでも臣下だし。
でも、姉さんは自分から寂しいって言う人じゃないよね。
「ええ、そういうことかと思いますわ」
「どうして、シルクはわかったの? 俺ってば、全然気づかなかった……弟失格だね」
「そんなことありませんの。私はただ……気持ちはわかりますから」
「ん? どういうこと?」
「その……私も、寂しいってあんまり言えないですから」
そうか……シルクもお母さんがいないし、立場上友達も少なかったっけ。
穀潰し王子とはいえ、俺の婚約者だから男性は近づけない。
そして、気位が高いだけのご令嬢とは話が合わない。
「さ、寂しかったらすぐに言ってね!」
「ふえっ!?」
「あれ? いや、これはダメだな……自分で気づけるようにならないと」
「……ふふ、ありがとうございます。ですが、今は寂しくないので大丈夫ですの。マルス様もいますし、ルリちゃん達や獣人の方々もいますから。何より、親友のリンがいますわ」
「そっか……んじゃ、とりあえず姉さんのとこに行ってくるね」
「ええ、それが良いですわ。きっと、私にとってのリンのような存在になったのかなと」
シルクの一人で行った方がいいという言葉通り、俺は一人で姉さんのところに向かう。
すると、扉の前にバランさんが仁王立ちしていた。
ちなみに男性だけど、特別に部屋の前にいることを許されている。
「おや、マルス様」
「バランさん、ご苦労様。ライラ姉さんに話があるんだけどいいかな?」
「無論です。それでは、お入りください」
バランさんの許可を得たので、姉さんの部屋に入る。
「ライラ姉さん」
「あら? どうしたの?」
「いや、その……お、お茶でもしようか?」
「……ふふ、ありがとう。それじゃ、お願いしようかしら」
「あっ、俺が入れようか?」
「いえ、私にやらせてね。マルスは、大人しく座ってなさい」
「う、うん」
仕方ないので、大人しく二人掛けのテーブルに座る。
「それで、どうしたの?」
「い、いや、たまにはいいかなって」
「ふふ、どうせシルクの差し金でしょ? 私が寂しそうだから、行ってくださいとか」
「……ははは」
すると、姉さんが紅茶を持って席に戻ってくる。
「本当に良い子よね」
「まあ、それは間違いないかな」
「あんないい子を逃しちゃダメよ?」
「……それは大丈夫」
一応、進展もあったし。
……ただ、次はいつしていいのかわからないけど。
「あら? ……何か、進展があったみたいね」
「ま、まあね……それよりも、平気?」
「ええ、大丈夫よ。確かに、セシリアとの日々は楽しかったわ。ただ、一人には慣れてるから。今のマルスは人気者だから、私が独り占めするわけにはいかないしね」
「慣れちゃダメだよ。寂しかったら、俺を呼んでよ。俺が寂しかった時に、姉さんが側にいてくれたように」
小さい頃、俺が泣いてると、いつも姉さんが駆けつけてくれた。
自分だって、忙しかっただろうに……それこそ、恋人や友達を作る時間もないくらいに。
「あら、生意気言って……でも、ありがとう。じゃあ、甥っ子や姪っ子をできるのを楽しみにしてるわ」
「へっ? い、いや、気が早いよ! それより、自分が相手を……ゴニョゴニョ」
「そうね……みんなに心配されてるし、私も色々と考えないと。ライルのバカも頑張ってるみたいだし」
うーん、俺の中ではゼノスさんよりバランさんなんだけど……。
姉さん的には、その辺どうなんだろ?
今度、シルクやリンから聞いてもらおうかな?
「ロイス兄さんも結婚したしね。というか、ロイス兄さんに先に子供ができないと」
「それもそうね。ロイスお兄様に会ったら、きちんと話をするのよ? 多分、小言を言われるとは思うけど」
「うっ……が、頑張る」
「大丈夫よ、ロイスお兄様も流石に……いえ、なんでもないわ」
「ちょ!? やめてよ! そうだ! 姉さんから手紙を……」
「可愛いマルスの頼みでもそれは聞けないわ。しっかりと、可愛がられてきなさい。お兄様も、マルスが可愛いんだから」
「……はーい」
「ふふ、いい返事ね」
その後、姉さんと昔話に花を咲かせる。
姉さんは我慢しちゃうから、俺たちの方で気をつけないとね。
……こっちでも、色々と動いてみますか。
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