164話 ルリ

 ……わたしの最初の記憶は、温かいものが流れてくる感覚でした。


 それが身体中を巡って……なにやら狭い所から出ることが出来ました。


 それが卵ってモノで、魔力ってモノを与えられたから生まれたと知った。


 そして、目の前にいるマルスって人がくれたことも。


 多分、この人に会えなかったらわたしは生まれることもできなかった。


 だから、この人がわたしのパパなんだ。


 優しいし面白いし、わたしはすぐに大好きになりました。


 ママはもちろん、シルクって言われてる女の人だ。


 お姉さんやお兄さんもいっぱいいて、ここは毎日が楽しい。


 もっと、みんなと一緒にいたい。


 だから……今度は、置いていかれたくないもん。


「キュイー!」


「はいはい、やる気は十分だね」


 ワクワク。


 パパが、わたしの実力を見るとか……よーし! 頑張るぞぉー!


 でも、何をしたら良いんだろう?


「キュイ?」


「うーん、どうしようかなぁ? まずは、ルリに攻撃してもらおうかな? 姉さんから聞いたけど、何か出せるようになったんでしょ?」


「キュイ!」


 パパのお姉さんには、色々とお世話になったよ!

 あちこちを触わられたりもしたけど……ブルブル。


「んじゃ、決まりだね。魔法系だったら、いくらでも撃ってきて良いよ」


「キュイ!」


 よーし! わたしは水と風が使えるらしい。

 えっと、大きく息を吸い込んで……水の球を発射する!


「スゥ——キュアー!」


「おっ、水の球だね。なら——アクアボール」


「キュイ!?」


 わわっ!? 簡単に相殺されちゃった!

 思いっきり放ったのに!


「さて、次は何かな?」


 むむっ! 悔しい! えっと、あとは風の技を覚えたよね?


「キュアー!」


「風の玉ね。じゃあ、ウインド」


「キュイ!?」


 これも、防がれちゃった……やっぱり、連れてってもらえないかな?


「ふーむ……なるほどなるほど。ルリ、それをどれだけ出せるかな?」


「キュイキュイ!」


 もっと出せるよ! いっぱい!


「よし! じゃあ、どんどんいこー!」


「キュイ!」





 その後、ひたすら水の球や風の玉を出すけど……全て簡単に防がれてしまう。

 やっぱり、パパは凄いや! ただ、わたしは弱いなぁ。

 よくわからないけど、強いって言われるドラゴンなのに。

 ……だめだ、もう魔力が残ってないや。


「ギュー」


「ふんふん、限界って感じかな? 魔力はともかく、体力はどうかな?」


「キュイ!」


 体力だけなら、まだ残ってるよ!

 最近は、 いっぱい動いてるもん!


「良い返事だね。じゃあ、次は攻撃を避けていこー!」


「キュ、キュー!」


「それじゃあ……いくよ?」


 すると、パパの手から次々と魔法が打ち出される!

 水の玉、火の玉、風の玉、土の玉などたくさん!


「ほらほら! どんどん避けて! 」


「キュイー!?」


 わぁァァァ!? よ、避けなきゃ!

 翼を動かし、何とか魔法を避け続ける!


「おっ、避けるのは上手いね。じゃあ、上下左右から行こうか」


「キュ?」


「これはただの魔力の矢だ。ただ、当たれば痛いからね?」


 すると視界いっぱいを、パパの魔法が埋め尽くす。

 右を見ても左を見ても、下も上にも魔法が浮いている。


「マ、マルス様! それでは避けられませんの!」


「うーん、そうかもね。ただ、これくらいは対処してもらわないと」


「そ、そうかもしれないですけど……」


 マ、ママが心配してる……わたしが弱いから。


「ルリ、どうする? ここでやめるかな? 俺としては、ルリには強くなって、シルクとかを守ってくれる存在になってほしいんだけどね」


「キュイ……」


 わたしが……ママを守る?

 ママには、たくさん可愛がってもらった……だったら決まってるよね!


「キュイ!」


「よしきた! それ!」


 上下左右から、魔法が飛んでくる!

 どうしよう!? どこなら逃げられる!?

 その時、私の目の前に何か


「キュイー!」


「へっ? ……全部避けた」


「キュ?」


 あ、あれ? 避けられちゃった……。

 なんか、よくわからないけど……ここを通れば避けられるって思って。


「ルリちゃん! すごいですわ!」


「キュー!」


 ママに思い切り抱きつかれます!

 これ、ものすごく好き!


「マルス様!」


「そうだね……うん、合格だ。ルリ、君を王都に連れて行くよ」


「キュイー!」


 えへへ〜! 嬉しい!


 これで、みんなといられるね!








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