163話 これからのこと
俺にドラゴンを預けそうな存在は、普通の人じゃないよね。
わざわざ俺を選んだということなら、相手は天使以外にはあり得ないだろう。
俺の魔力がチートなことも知ってるわけだし、というか与えた相手だし。
ただ、その理由がわからない。
確か、俺にはなんの役目もないはずだし。
そのなんちゃら邪神とかは、聖女様とやらが倒してくれるわけだし。
それが転生か転移かはわからないけどね。
それとも、何かしらの役目が与えられているのだろうか?
「マ……マル………マルス様!」
「うわっ!? ど、どうしたの?」
いつのまにか、シルクが下から覗き込んでいた。
はい、相変わらずの美少女です。
それこそ、聖女と言われてもおかしくないくらいに。
「どうしたのじゃないですの。ずっと話しかけてるのに、遠くを見ていましたわ」
「あっ、そうだった? ごめんごめん、少し考えことをしてたよ」
「さっきの件についてですの? ごめんなさい、気になるようなことを言ってしまって」
「いやいや、気にしないで」
まあ、今考えても仕方ないし。
何か役目があるとしたら、そのうちわかるでしょ。
とりあえず初志貫徹ということで、スローライフを目指しますかね。
その後、視察をしつつルリを探し続け……。
最後に、獣人達が元々住んでいた場所にやってくる。
ここには人は住んでおらず、放牧をするための改装を行っている。
これが完成したから、いよいよ鹿や牛に似た魔獣を飼育する予定だ。
「大分、形になってきましたわ」
「うん、そうだね。家を壊して更地にして、その後で草木を植えたし」
目の前には、少しだけ草木が生え始めている。
これを初めてから3ヶ月程度だけど、ようやく先が見えてきた。
「この様子なら、そろそろ始められますわ。いつからやる予定ですの?」
「うーん、とりあえず帰ってきてからだね。どうせ、行き帰りと滞在を含めたら1ヶ月はかかるだろうし。その間に指示を出しておこうかな。帰ってきたら本格的に乗り出すって。その頃には、レオやベアも帰ってきてると思うし」
「わかりましたわ。では、そのように調節しますの」
「うん、よろしく……おっと、ここが正解だったみたいだね」
「あら、ほんとですわ。きっと、ここは広いから楽しいのかもしれないですね」
俺のシルクの耳に、ドラゴンとうさ耳少女の声が聞こえてくる。
そのまま、声のするほうへ近づいていくと……。
「キュイ〜!」
「待ってよぉ〜! 速いよぉ〜!」
家が撤去された広い場所で、二人が追いかけっこをしている。
俺とシルクは意思疎通を図ることなく、それを黙って見ている。
「うーん、実に微笑ましいね」
「ふふ、そうですの。ただ、ルリちゃんも大っきくなってきたので広い場所は必要になってきますわ」
「そこだよなぁ。もう、シルクや俺くらいなら軽く乗せられるもんね」
大体、大型犬くらいの大きさになっている。
そして、当然ながらこれからも大きくなるだろう。
「ルリちゃん専用の広場を作っても良いかもしれないですわ」
「そうだね。とりあえず、あとで考えるとして……おーい!」
「キュイ!?」
「あっ! ご主人様〜!」
「二人共、こっちこっち」
俺の声に反応して、ルリが物凄い勢いで飛んでくる!
「キュイ〜!!」
「ちょっ!? まて——うぎゃぁぁぁ!?」
そのまま体当たりを受けて、覆い被される!
さながら、文字通り大型犬に戯れられかのように!
「マ、マルス様!?」
「わわっ!?」
「キュイキュイ!」
「わ、わかったから! ぺろぺろやめなさい!」
「キュイ〜」
俺の声に反応して、パタパタと空に浮く。
そして、俺の周りをクルクルと回り出す。
どうやら、ご機嫌な様子だ。
「全く、元気がいいこと。さて、ルリ」
「キュイ?」
「今から、君の試験を行うよ。王都に連れて行ってもいいかどうか……良いかな?」
「っ!? キュイキュイ!」
「よし、気合い充分だね。じゃあ、場所はここで良いか。ここは丁度広いし、動きやすいでしょ。ルリ、少し距離をとってね」
「キュイー」
俺とルリは少し距離を置いて対峙する。
すると、シルクが心配そうな表情をする。
「マルス様、どんなテストですの?」
「心配しないで。別に大したことはしないよ。俺の魔法を避けたり相殺できるか試すだけだし。もちろん、手加減はするし」
「ほっ……最悪、怪我しても私が治しますわ」
「うん、お願いね」
さて……ドラゴンの力を見せてもらおうかな。
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