160話 バレンタイン特別編

 ……うーん……なんだ? 誰かに揺さぶられてる?


「マルス! 起きなさい!」


「……まだ眠いよぉ〜……シルク、おはよう」


 目の前にはセーラー服に身を包んだ幼馴染のシルクがいる。

 どうやら、俺を起こしに来たらしい。

 そういえば、両親が旅行に行ってるから誰もいないんだっけ。

 というか、馬乗りは色々と危険である……俺の下半身が。


「おはよう……じゃなくて、遅刻するわよ!」


「えぇ〜別にいいし……うん、今日は学校休む」


「そ、それなら私も学校休んで……ダメダメ! ほら、起きて!」


「うひゃぁ!?」


 思いきり、布団を剥がされる!


「うぅ……めんどくさいよー」


「な、何よ、こんなに可愛い幼馴染が起こしに来てあげたのに……」


「ふぁ……ん? 何か言った?」


「な、何も言ってないわよ!」


「あっ、忘れてた。シルク、今日も可愛いね。あと、おへそが見えちゃうよ?」


 今日もサラサラロングの銀髪が光り輝いてる。

 そして、この位置からだとセーラー服なので、可愛らしいお腹が見え隠れしている。


「な、な、なっ——知ってるし! ほら! さっさと起きる!」


「わかったよ……よっと」


「な、な、なんで服を脱ぐのよ!? 何をする気なの!?」


「へっ? いや、着替えないとだし」


「わ、わかってるわよ! は、早く来なさいね!」


 そう言って、部屋を出ていく。


 ツンツンしてるけど……相変わらず、可愛い女の子だよなぁ。





 朝の準備をして、一階に降りると……。


「やあ、マルス君」


「リンさん、おはようございます」


 もう一人の幼馴染であるリンさんが、ブレザー服にエプロンという姿でキッチンに立っていた。

 ポニーテールが似合っていて、そのエプロンの上からでもわかるお胸が凶器である。

 一つ年上の先輩で高校二年生なので、かなり大人っぽい。


「朝からシルクがすまないね」


「いえいえ、平気ですよー」


「ふふ、私が起こしたかったんだが……この通り、手が空かなくてな」


 そう言い、菜箸を片手にウインクをしてくる。

 ……うむ、相変わらずカッコ可愛い人だなぁ。


「いえ、いつもありがとうございます」


「そんな他人行儀にしないでくれ。私と君との仲じゃないか」


 そう言い、俺の腕に絡めてくる。

 すると、豊満な胸が俺に直撃する。


「ちょっ!?」


「ふふ、何を照れているんだい?」


「ちょっと!? 何抜け駆けしてるのよ!!」


「ふっ、残念……さあ、ご飯を食べよう」


 ひとまず、三人でリビングのテーブルに着いて、一緒に食事をする。


 両親が旅行でいないので、二人に俺の面倒を頼んだのだろう。


 そして、食べ終わる頃……二人の視線がぶつかる。


 何やら、不穏な空気を感じる……なんだろ?


「さて、今日はなんの日かわかるかな?」


「マルス、今日こそ選んでもらうわよ」


「うん? どういうこと?」


 すると、二人が机に綺麗な箱を置く。


 それは、どこからどう見ても……チョコレートが入っている箱だった。


「……バレンタイン?」


「そ、そうよ……ありがたく受け取りなさい」


「できれば、受け取ってほしいな」


「やった! ありがとう!」


 俺がチョコに手を伸ばそうとすると……。


「「ただし、どっちか一つを」」


「……へっ? 一つ?」


「もちろん、私のを選ぶわよね?」


「いやいや、ここは私の方を選ぶだろう」


「い、いやいや! 選べないよ!」


「ダメよ、どっちなの?」


「今、ここで選んでくれ」


「「どっちを選ぶの!?」」


 ……ど、どうしよう? どうしたら良いんだ?


 俺にとって、二人共大事な人だし……。







「……きめられないよぉぉ!!!」


「何がですか?」


「ようやく、起きましたの。朝寝坊さんですわ」


 俺がいるソファーから、仲良くお茶をしている二人が見える。


「あれ? 今って何時?」


「もうすぐお昼ですわ」


「マルス様は起こしても起きなかったので、そのままにしときました」


「ありゃりゃ……まあ、昨日は頑張ったし」


「そうですね。おかげで書類の山も減りましたし」


「……オモイダシタクナイ」


 ふぅ、あれは夢か……良かった、色々な意味で。


 また二人の制服姿を見れたのは良かったが、最後のあれは困る。


「うん、二人が仲良くて良かったよ……」


「何やら、また変なこと言ってますね」


「私とリンが仲が良いのは当然ですの」


「ウンウン、そうだよね。二人はそうじゃないと、俺が困っちゃう」


 夢で見た二人も良かったけど……シルクのツンツンした感じとか。


 あとは、リンがお姉さんっぽい感じとか。


 でも二人には、この感じでいて欲しいな。


 俺も一安心し、二人と一緒にテーブルに着く。


「それで、なんの話をしてたの?」


「マルス様についでですよ」


「はい、そうですわ」


「うん? どんなこと?」


 すると、二人が顔を見合わせて……微笑み合う。


「「内緒です」」


「えぇ〜気になるなぁ」


 ……まあ、二人が仲良いならいっか。


 バレンタインチョコは貰えないけど、二人が側にいるなら良いよね。


 それ自体が、物凄く恵まれてるってことを自覚しないといけない……。


 そんなことを思った、マルス君でしたとさ。






 ~あとがき~


 皆様、おはようございます(((o(*゚▽゚*)o)))ぺこり


 今回はストーリーに乗せた特別編といたしました。


 ちょうど、投稿日がバレンタインデーかぶったので……というより、私が書きたかったのです(´∀`*)


 おそらく、メロンブックスさんの特典付きを購入した方は、さらにニヤニヤできたかなと思います。


 たまにですが、こういう感じも書いていきたいですね。


 それでは、引き続きよろしくお願いいたします。





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