151話 シルクのミスと膝枕
その後、ワーレンさんとマリアさんの元にいく。
すると、一緒にいたシルクが駆け寄ってくる。
「マルス様! お、お怪我はありませんの!?」
「平気だよ。あれくらいなら楽勝だし」
「あ、あれを楽勝……」
「なるほど……国王陛下が英雄と仰るわけですな」
あっ、しまった……少し引いてるかも。
シルクが心配するかと思って、余裕ぶってしまった。
さっき、兄さんとリンから言われてたのに。
シルクも何かに気づいたのか、顔がこわばる。
そして、珍しくオロオロしだす。
「え、えっとですね……」
「マリア、ワーレン殿。マルス殿は、ああ見えて疲れているのだ」
「むっ? そうなのですか?」
「私には、全然そんな風には見えませんけど……」
「ふふ、お二人はマルス殿の魔法に目がいって視野が狭くなっているようだ。私は慣れてきたからわかるが、結構お疲れの様子だ。きっと、可愛い婚約者に心配をかけないためだろう」
そのセシリアさんの言葉に、二人の表情が柔らかくなる。
どうやら、助け舟を出してくれるみたいだ。
「うむ、確かにそうですな。男として、好きな女性の前ではカッコつけたいものです。いやはや、確かに視野が狭くなっていたようです」
「確かに、殿方ってそういうところありますわ。シルクさん、素敵な婚約者さんですわね!」
「は、はい……ありがとうございますの」
……ありゃ、少し落ち込んじゃったかな。
うーん、どうしようかな?
すると、兄さんとリンが俺の肩に手を置く。
「マルス、後は俺がやっておく。お前はシルクを連れて休んでろ」
「ええ、まだマルス様には仕事がありますから。今のうちに、魔力を回復させてください。見張りは私がしますので」
今のうちに魔力を回復……なるほど、そういうことか。
全然減ったうちに入らないけど、減ってるふりをしろってことか。
「あらら、バレちゃった……かっこ悪いったらないや。シルク、疲れちゃったから付き添ってくれるかな?」
「……はいっ!」
リンとシルクに付き添われながら、疲れたふりをしてテントの中に入る。
リンが見張りをしてくれるなら、これ以上疲れたふりをする必要はないよね。
ひとまず、柔らかな場所で二人で並んで座る。
「……もう、平気かな?」
「………」
「シルク? どうしたの?」
「ご、ごめんなさい……! 私のせいで……マルス様のお立場を悪くするところでしたの……」
シルクは下を向いてしまい、今にも泣き出しそうな雰囲気だ。
こ、こういう時って、どうすればいいの!?
リンエモン〜!! ……いや、いつまでもリンに頼るわけにいかないよね。
「え、えっと、気にしないでいいから」
「ですが、私のミスですの……お父様に会わせる顔がありませんわ」
「……でも、それだけ俺を心配してたってことでしょ?」
「ふえっ?」
「やっと顔を上げてくれたね。大丈夫、俺は気にしてないし。さっき、リンとライル兄さんには言ったんだけど……別に、最悪怖がられてもいいんだ。シルクやみんながいればね」
「マルス様……」
「忘れてない? 俺が穀潰しだって言われていたこと」
「……ふふ、そうでしたの。でも、今は違いますし」
「いや、俺は昔から変わらないよ。穀潰しと言われた時からね。あの時も、みんなが馬鹿にする中、シルクやみんなが味方になってくれた。だから、大丈夫だったし……それは今も同じさ」
「私はマルス様の味方ですの……ずっと」
「なら俺は平気だよ」
「ですが……むぅ」
責任感の強い子だから、どうしても気になるようだ。
えっと、こういう時は……。
「ぁ〜さっきは言い訳して大変だったなぁ〜」
「マルス様?」
「これは罰として、シルクに膝枕でもしてもらわないと〜」
わざとふざけた感じで言うと……。
「……良いですわ、して差し上げますの」
そう言い、自分の膝を軽く叩く。
「それじゃあ、失礼しますっと……」
「あぅぅ……」
おぉ……柔らかい。
筋肉質なリンとは違い、ふわふわっとしてる。
もちろん、両方素晴らしいことに違いはない。
「ふふふ、良い気分じゃ」
「もう! マルス様ったら!」
そして、ようやく笑顔を見せてくれる。
やっぱり……好きな子には笑ってて欲しいからね。
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