150話 似た者兄弟

 魔物を倒し終えたら、みんなに魔石を拾ってもらう。


 その数は凄まじく、人海戦術を駆使しないと到底拾いきれない。


 しかも、俺が破壊した破片なども片付けないといけない。


「ごめんねー! みんなー!」


「気にしないでくださーい!」


「これくらいはやるので、マルス様は休んでてください!」


「きっと、お疲れでしょうから!」


 作業をしている人々から、励ましの声が聞こえてくるが……。


 ……正直言って、別に疲れてはいない。


 これくらいの魔法では、一割も消費していない。


 すると、ライル兄さんが耳打ちをしてくる。


「おい、マルス。疲れたふりをしろ」


「ライル兄さん?」


「マルス様、ライル様の言う通りに」


「リン? ……わかった」


 二人がそういうので……。


「疲れたぁ~! 悪いけど、後はよろしくね~!」


「「「はいっ!」」」


 住民達が、少しほっとした様子で作業を開始する。


「ん? どうしたんだろ?」


「いいから、いくぞ」


「その疲れた感じで、ワーレン殿の元に戻ってください」


「別にいいけど、理由を教えてよ」


「お前の力は強すぎるんだよ。それこそ、その気になれば何もかもを破壊できるだろうよ。んで、あれでも疲れてないんじゃ……怖がられちまう可能性がある」


「ライル様の言う通りかと。もちろん、抑止力や牽制にはなると思いますけど……それは、マルス様の望むところではないでしょう?」


「俺たちや、お前と付き合いのある奴は良い。お前がそんな奴じゃないことを知っているからな。だが、ここにいる人たちは違う。基本的に、他国の人間だ。それと覚えておけ……たとえ同じ国であろうと、お前を怖がる奴もいる」


 なるほど……本国にいる大臣とかかな?


 確かに、そういう可能性はある。


「まあ、そうだね。俺としてはそれは避けたいかなぁ……でも、最悪そうなっても平気だよ」


「あん?」


「俺にはリンやシルク達がいるし、そう言ってくれるライル兄さんがいるから」


「ええ、もちろんです。誰がなんと言おうと、私たちは貴方の味方です」


 すると、ライル兄さんが肩を組んでくる。


「当たり前だろうが。もちろん、姉貴や兄貴も同じだ」


「うん、わかってる。ありがとね、ライル兄さん」


「へっ、礼なんかいるかよ。兄貴が可愛い弟の味方をするのは当然だ」


 そういうと、先に前を歩いていく。


「あらら、照れてるみたいだね」


 後ろ姿でもわかるけど、頬をぽりぽりとかいている。


「ふふ、よくにてますよ」


「へっ?」


「今、マルス様も同じことやってますから」


「……ほんとだ」


 どうやら、無意識のうちに同じことをしていたらしい。


 結局、照れくさくなり……そのまま、頬をかくのでした。




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