八章 マルス、帰還する

148話 開拓開始

セシリアさんとマリアさんが和解してから、二週間くらい経ち……。


そのおかげか、街道の整備も順調に進んでいる。


「皆さん、そっちの木はこっちです! 煉瓦はこちらに!」


リンが現場指揮官として、獣人達や人族に指示を出して、木材などを運んでいく。


炎狐族というのは、獣人達にとっては敬意の対象らしい。


なので、割とスムーズにことが運ぶ。


さらに、人族である俺に従っているので、獣人も俺のいうことも聞いてくれたりする。


そして人族も、俺の従者であるリンに従ってくれる。


ほんと、リン様様ってやつだ。


「あの木は重い! レオ! 俺達で運ぶぞ!」


「おうよ!」


レオとベアは、ペアであちこち動き回り、手薄なところを手伝っている。


「我々は軽いものを運ぶぞ!」


人族は身体が強くないので、軽作業を行なっている。


マックスさんはその者をまとめたり、獣人族との調整などをしている。


そして、セルリア王国のまとめ役として、ワーレン殿が指示を出している。


セシリアさんとマリアさん、シルクは怪我人の手当てや、飲み物などを提供している。


言い方は悪いけど、これで平民達には少しは印象が変わるはずだ。


えっ?俺ですか? 俺は一応フリージア王国側のまとめ役なんですが……。


「マルスゥゥ! いくぜぇ!」


「うひゃあ!? 待ってライル兄さん!」


ライル兄さんが、俺をおんぶしてあちこちを走り回る。


理由は簡単で、リンは手を離せないし、俺は体力はない。


ライル兄さんは体力だけはあるってことで……こうなった。


「ほら! さっさと魔法を撃て!」


「もう!わかったよ——アースランス!」


魔法で地面に穴を開けたり、柔らかくして大地をならしたりする。


その後のことは、平民の方や獣人達に任せる。


「次はこっちだ!」


「ァァァ! もう! どんとこい!」


ひたすら、作った水路に水魔法を撃ったり……。


まだ街灯がないので、火魔法で松明に消えない火をつけたり……。


まあ……言ってしまえば雑用係に近い。


そりゃ、頑張るっていったけどさ……早く休ませてよぉ〜!!






その後働き続け、今日の俺の仕事はひとまず終わった。


天幕の中に入り、地べたに寝転がる。


「つ、疲れたァァァ!」


「ふふ、お疲れ様ですの」


シルクから飲み物をもらい、それを喉に流し込む。


「プハッ! ……あぁ、美味い、生き返る」


「かァァァ! ……だな、生き返るぜ」


倒れこむ俺とは違い、兄さんは立ったままだ。


魔法を撃っていないとはいえ、何時間も走り回ったというのに。


「ほんと、体力お化けだね」


「ははっ! お前は体力がなさすぎだな」


「くぅ……身体を鍛えるかぁ」


「マ、マルス様は、このままでいいと思いますの」


「シルク? ……ならこのままでいいかな」


俺がゴリマッチョとか、自分自身でも嫌だし。


そもそも、めんどくさいし。


「まあ、好みはそれぞれか。俺は鍛えるけどな」


「セシリアさんが、そっちのが良いって?」


「いや、そういうのは聞いてないが……まずいのか?」


……どうなんだろ? 俺を夜這いしようとしたくらいだし。


俺が好みじゃないってことはないと思うけど。


「うーん……わからないや」


「でも、もしかしたら……嫌かもしれませんわよ?」


「し、しまったァァァ! どうする? 今からマルスみたいになれるか?」


「いや、なれないから。というか、見た目が違いすぎるし」


ふと隣を見ると……シルクが微笑んでいる。


「ふふ、いつも私をからかう罰ですの」


「なるほどね。それにしても……ふぁ……眠い」


「ひ、膝枕しますか?」


「……なんだって?」


振り返ると、そこには美少女……シルクさんがお座りして膝を叩いています。


その顔は恥ずかしそうで、いつまでも見ていられます……眼福ですね!


「けっ、羨ましいぜ。んじゃ、邪魔者は去るとする……ん?」


「どうしたの?」


「何やら、騒がしい気がするな」


すると……誰かが、天幕に飛び込んでくる。


「マルス様!」


「リン?」


「魔物が押し寄せています!」


……どうやら、のんびりできそうにはないそうです。


ほんと、俺のスローライフは何処へ?








~あとがき~


みなさま、おはようございます。


近況ノートには書きましたが、見てない方もいるのでこちらにも書かせて頂きます。


いよいよ、発表できます。


カクヨムコンテスト7にて受賞した「国王である兄から辺境に追放されたけど平穏に暮らしたい」の発売日が決定しました!


電撃の新文芸様より、来年の 一月刊行となります!


題名やペンネームは変わっていないので、探しやすいかと思います。


イラストを担当してくださったのは神絵師100展にも選ばれた『夜ノみつき』様です!


可愛らしいイラストとケモ耳を書くことを得意としている方で、すでに私の手元には素晴らしいイラストが届いております。


今後、許可がおり次第、キャラデザや追加情報などを載せていきたいと思います。


書籍化作業も最終段階に入っておりますので、一月刊行できるように頑張っていきます!


最後に、ここまで来れたのも、応援してくださった皆様のおかげです。


本当にありがとうございました!












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