142話 ラブコメからの真面目な話
話し合いのあとしばらくして、昼ご飯を食べた俺たちは……。
午後からは、それぞれ好きに過ごすことにした。
えっ? 俺? そんなの決まってるじゃん!
「俺はのんびりするんだァァァ!」
「久々に出ましたね」
「ほんとですわ」
自分の部屋に帰ってきた俺は、ベットの上でゴロゴロする!
「疲れたよぉ〜真面目な顔するの苦手だよぉ〜表情筋が痛いよ〜」
「はぁ……仕方ありませんね」
「まあ……マルス様にしては頑張りましたわね」
「でしょ? ここのところ真面目な話ばかりで疲れちゃったよ。ねえ! みんな!?」
「マルス様? 空に向かって叫んでどうしたのです?」
「誰に言ってますの?」
「いや、気にしないで。なんだが、言わないといけない気がしただけ」
というか、自分がこれ以上シリアスに耐えられそうにない。
早いところ終わらせて、またダラダラしたいし。
明日から進められると良いなぁ。
「大分お疲れのようですね……シルク様、ご褒美でもあげたら良いのでは?」
「わ、私ですか? でも、何をすれば良いですの?」
「そりゃ……膝枕とか」
シルクの膝枕は天国ですので……モチモチは正義。
「べ、ベットの上ですの?」
「でも、前に添い寝はしたじゃないですか。確か、森を探索してるときに」
「ベットと添い寝は違いますの! あ、あれは不可応力ですし……」
「……うん、やめよう。俺はまだ——シニタクナイ」
俺の脳裏には、オーレンさんの顔が浮かんでくる。
膝枕とはいえ、結婚前にベットで一緒にとか死ねる。
「では、私がしてあげましょう。私なら問題ありませんから」
「むぅ……そ、それなら、私がしますの」
「いえいえ、ここは私が……」
「リン……私を誘導しましたの?」
「なんのことですかね?」
ん? なんだろ? 二人の間に火花が飛んでる気がする……。
「あの? お二人さん?」
「私がしますの!」
「いえいえ、シルク様にやらせるわけにはいかないですね」
「あ、あのぅ?」
「マ、マルス様に選んでいただきますわ!」
……よくわからないけど、このままではよくない気がする。
「に、庭にでもいこうか!」
「まあ、いいでしょう」
「そ、そうですわね」
その後庭に出て、シートを敷いたのは良いけど……。
俺の目の前には悩ましい選択が迫っていた。
どうやら、さっきの話は終わってなかったらしい。
「さあ、マルス様」
「ここでなら、わ、私の膝でも良いんですよ?」
何これ? ドユコトー?
なんで二人して、俺の膝枕をする取り合いしてるの!?
「……ふむ」
かたやモチモチ系のシルク……その感触は高級な枕に相当する。
しかし、ドキドキするので落ち着かないのが難点だ。
かたや少し筋肉質のリン……その感触も捨てがたい。
何より、リンの膝枕は慣れてるし安心感がある。
「そ、そんなに見られると恥ずかしいですね」
「わ、私も……」
「では——今日はシルクにしておこうかな」
「えへへ」
「そうですか……」
「それで、明日にはリンにしてもらうよ。今日の理由は簡単で……シルクは生足だからさ!」
シルクさんはスカート系が多く、リンはズボン系が多いからね。
「明日……私にも生足にしろと?」
「い、いえ! 冗談だから! 怖い顔しないで!」
「ふふ、マルス様らしいですの」
「全くですね」
すると……何やら視線を感じるので見てみると。
「……奴隷なのに主人に口答えしたわよ」
「それよりも、奥様に張り合ってるわ……」
「でも、なんだか仲が良さそうにも見えるぞ?」
どうやら、獣人の使用人達が俺達を観察してるらしい。
「お、奥様だなんて……」
「奴隷ですか……」
「……ふむふむ、さっさと見せた方が早いか。シルク、失礼」
「ひゃっ!?」
「うーん……膝枕は素晴らしい」
やはり、モチモチは正義だね!
「い、いきなりですの……」
「ごめんごめん、時間がないからさ」
「どういうことですの? まだ午前中なので時間はありますわ」
「少し考えがあってね。リン、悪いけど庭にみんなを集めてくれる? あと、できれば領主さん達も」
「……なるほど、わかりました。では、使用人達も集めつつ、庭を使う許可もいりますね」
「流石はリン。じゃあ、頼んだよ」
「ええ、お任せを」
リンは立ち上がり、再び屋敷の中に入っていく。
「……悔しいですの」
「ん?」
「私には、なんのことだが……」
「ああ、そういうこと。別に良いんじゃない? リンにわからないことは、シルクがわかったりするし。それに立場の違いってやつもある」
「マルス様は……どうして、そんなに人の気持ちがわかるのですか?私は考えてるようで、まだまだわからないですの」
……そりゃ、人生経験が違うしなぁ。
俺は前世では平民で、今世は王族だ。
別に俺が立派とか、そういう話ではない。
むしろ、生粋の侯爵令嬢であるシルクが、そこまで考えられるのが貴重だ。
「そんな立派なもんじゃないよ、俺は……シルクのが立派さ。ほら、暗い顔しないで。それより、頭でも撫でてくれると良いなぁとか」
「……ふふ、仕方ないですの」
……思ってるより、平民や貴族、獣人達の溝は大きい。
それは今まで見てきてないから。
ならば、直接見せるしかないよね——俺自身の手で。
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