137話 再確認
その後、軽く食事を済ませて……部屋に案内してもらう。
ベットに寝っ転がり、ようやく一息つく。
「ふぅ……」
「主人よ、お疲れさん」
「疲れたよぉ〜」
「クク、しかし……俺と同室でよかったのか?」
「うん? どういう意味?」
「いや、レオと違って……俺は話す内容がつまらないと思ってな。あいつみたいに陽気にも振る舞えん」
「そう? 別につまらない面白いで判断しないけど? それぞれに良さがあるし。例えば、レオは確かに盛り上がりそうだけど……ベアはベアで落ち着いてるから楽だよ」
というか、俺は本来ダラダラしたい人だし。
もちろん、盛り上がるのも好きだけどね。
「そ、そうか」
「ん? ……もしかして、結構気にしてた?」
そういえば、ベアと二人きりって滅多にないかも。
レオとは見回りしたり、飯食ったりしてたけど……。
「う、うむ……俺はこの通りだからな……先ほどの人族も言っていただろう?」
「うん、怖い種族だって話だね」
「ああ、それは間違っていない。バーバラにいた者達は若者が多いからそこまでではない。しかし、俺より上の世代はこんなものではない——恐ろしいほどに人族を憎んでいる」
「……それは……そうだろうね」
そう、それを忘れちゃいけない。
たまたま、ベアやレオが親世代じゃなかったから上手くいった部分はある。
そして俺はリンを助けたけど、それだってリンじゃなければ仲良くなれたかわからない。
そもそも、リンがいなければバーバラで獣人達と仲良くなれたか……。
うーん、もっと感謝しないとね。
「いや、すまん。やはり面白い話はできんな……」
「いやいや、全然面白いというか……興味はあるし、知っていた方が良いかなと。よし! 今日は色々お話ししよう!」
「う、うむ……俺で良ければ」
その後寝るまで、ベアの話を聞くのだった……。
ちなみに落ち着いた声なので……すぐに寝ちゃったけどね!
今度、またじっくり聞きたいところです。
……うーん?
なんだ? 誰かに揺るられてる?
「主人よ、起きてくれ」
「ベア? どうしたの?」
「朝だ。そして、誰かがくる気配がする」
そして、足音がどたどたと聞こえ……誰かが、部屋に入ってくる。
「ここですわね!」
「あのぅ? どちら様ですか?」
「わたくしはセレナーデ王国第二王女にして、侯爵夫人であるマリア-ボルスですわ!」
……あっ、これはダメだ——ベアを見る目がシルクとは違う。
見た目は如何にもお嬢様って感じだけど、中身はそうでもない。
ほんと……シルクって貴重な存在なんだなぁと思う。
「そうでしたか。ご挨拶が遅くなりました、フリージア王国第三王子のマルスと言います」
「ええ、聞いてますわ。何でも、我が国を救ったとか……それより、どうして獣人がわたくしの屋敷の部屋にいますの?」
「……っ」
「ベア、平気だよ」
悔しいけど、この人の言うことがこの世界での常識だ。
この人が悪い人かどうかは別として……とりあえず、俺のやることは決まってる。
「私がボルス侯爵殿に許可を得たからです」
「どういうことですの? 護衛であるならまだしも、奴隷である獣人を部屋にまで入れて……」
「いえ、確かに護衛でもありますが……大事な友達なので」
「……はっ?」
あっ、ダメだ。
これは完全に理解できないパターンだ。
でも、こういう人達を説得していかないといけない。
そして、大事なのは……冷静に、喧嘩腰にならないこと。
「もう一度言います。獣人族は大事な友達です——少なくとも私にとっては。別に貴女に獣人族の扱いを改めろなんて偉そうなことは言いません。その代わり、私の考えもわかって欲しいです。それも含めて、ここに相談にやってきました」
「……なるほど……」
すると、再び足音が聞こえてきて……。
「こら! マリア!」
「あら、セシリアお姉様」
「マルス殿、すまない」
「いえいえ、特に問題はありませんでしたよ。ねっ? マリアさん?」
「……そうですわね」
「確かに、当主の奥方である貴女にも許可を取るべきでした。改めまして、ベアを部屋においても良いですか?」
「……仕方ありませんわね。我が国を救った英雄の頼みですし……」
そう言い、釈然としないまま去っていく……。
「ふぅ……どうにかなったかな?」
「マルス殿、ベア殿、本当に申し訳ない。そして冷静に対処してくれたことを感謝する」
「いえいえ、セシリアさんが謝ることじゃないですよ。えっと、確認ですけど……」
「ああ、あれが私の妹の一人……元、マリア-セレナーデ第二王女だ。甘やかされて育ったからか、獣人を完全に見下してしまっている。中身はそこまで悪い子ではないのだが……」
「いえ、育った環境は大きいですよ。なので、時間をかけてゆっくり理解して貰えたらいいなと思ってます」
そう! 育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めないのです!
あれ? これをわかる人っているかな?
「うむ、そう言ってくれると助かる。あとは私に任せてくれ」
そう言って、セシリアさんも去っていく。
「……主人よ、俺を連れてきたせいで……」
「はい、それ以上は言わない。頭も下げないし謝らないで。俺は何一つ困ってないから。それに、連れてきたのは俺だしね」
「……感謝する」
「うん、それなら良いかな。ほら! ご飯食べに行こう! 真面目な話は苦手なんだよねー」
「ククク……ああ、そうしよう」
気を取り直して、ベアと共に部屋を出ていくのだった。
~あとがき~
皆さま、いつもありがとうございます。
無事に一巻に収める分量も決まり、校正作業も大分進んで参りました。
九月辺りに入ったら、何かしらの報告はできるかなと思います。
そして、このお話しもそうですが……この辺りで少し『悪役かなぁ?』という人もちらほら出てくる感じかもですが、基本的に私は完全なる悪人を書く予定はありません。
それは、これを書き始めた時から決めていることです。
いい意味でご都合主義というか、そういう物語があっても良いかなと思っております。
というわけで、その辺りが不安な方も引き続き安心して読んで頂けたら幸いです。
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