135話 関所到着
説明を終え、再び移動を開始して……。
村々を尋ねながら、懐かしいセレナーデ王国への道を進んでいく。
そして、二日ほど経ち……。
「むっ、見えてきたか」
「セシリアさん、あそこが関所ですか?」
「うん? 行きにも通ったのだろう?」
「それが……あんまり覚えてなくて」
「……どういうことだ?」
すると、リンとシルクが話に入ってくる。
「すみません、セシリアさん。マルス様ってば、休暇のことで頭がいっぱいだったのかと」
「……そうなんですよね〜ごめんなさい!」
あの時はお休みと、とにかく白米が食べたい一心だったし!
というか、セレナーデ王国の出来事が大き過ぎたし。
「でも、仕方ありませんの。当時はお忍びでしたし、責任者の方も不在だったのです。本当に、ほとんど素通りといった感じでしたわ」
「なるほど、それならば仕方あるまい。一応言っておくと、関所の責任者はボルス公爵家だ。そして、以前言ったが私の妹が嫁いでいる」
「……シルク、なんの話?」
「もう! 前にセシリアさんが言ってましたわ!」
「な、なんだっけ?」
「シルク嬢、そう言ってやるな。まあ、あまり仲が良いとは言えない妹がいるってだけだ」
「仲悪いんですか?」
「悪くは……ないと言いたいところだ。価値観の違いなどはあるがな」
「そうですか……」
「まあ、気にしなくて良い。あちらも体面上は普通に接するだろう」
うーん……こっちの兄弟も色々ありそうだ。
まあ、特に気にしないで良いかな。
そして馬車は進み……関所に到着する。
「えっと、基本的には俺が話すのかな?」
「おう、お前が領主だからな。俺はレオとベアと一緒に、後ろの方で控えてるぜ」
「えぇ〜兄さんがやってよ。こういうのだって出来るでしょ?」
「まあな。だが、俺はいつまでいられるかわからん」
……そっか。
この事業が終わるまで、ここにいられるかわからないんだ。
……寂しいなぁ。
「おいおい、そんな寂しそうな顔するなよ。まだ先の話だぜ?」
「そ、そんな顔してないし! セシリアさん! バカな兄さんは放っていきましょう!」
「ふふ、仲が良くて羨ましい……ああ、ついてきてくれ」
いなくなる前に……大好きな兄さんに何かできたら良いんだけど。
セシリアさんについていき、関所の中に入ると……。
玄関前に、銀の鎧をきた偉丈夫が立っていた。
「セシリア様、お久しぶりでございます。お元気そうで何よりです」
「出迎えご苦労、ワーレン公爵。とりあえず、上手くやっている」
「それは良きことですな。さて、私も挨拶をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。マルス殿、こちらにきてくれるか?」
「は、はい」
うわぁ……緊張する。
俺ってば、こういうきちんとした場からは逃げてきたし。
セレナーデ国王の時は、まだ遊び半分だったし。
「大丈夫ですわ、私がついてますの」
「シルク……うん、頑張るよ」
シルクをつれて、公爵の前に出る。
「マルス様、初めまして。ボルス侯爵家当主のワーレンと申します」
「ご、ご丁寧にありがとうございます。フリージア王国第三王子のマルスと申します。慣れてないのでご無礼があるかもしれませんが、よろしくお願いします」
えっと、俺は王族だから、あんまりへりくだってもいけなくて……。
かといって、ここは相手の領地だし、仮にも侯爵家当主だから、こっちも偉そうにしちゃダメで……むずいよぉ〜!
「いえいえ、気楽になさってください。貴方様は、我が国にとって英雄なのですから」
「……はい?」
「おや、お忘れでしょうか?」
すると、シルクに小突かれる。
「マルス様、シーサーペントとキングオクトパスを倒したことですわ」
「……ああっ! あれかっ! 忘れてた!」
「マ、マルス様!」
「だ、だって!」
「くははっ! 流石は英雄殿! 恩に着せないということですか……ふむ、国王陛下が認めるわけですな」
い、いや……単純に忘れてただけなんだけど。
あの時は米と魚とお酢という、素晴らしい食材を求めた結果だし。
まあ、好感度上がったみたいだし……結果オーライってやつだね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます