130話 マルスくん、頑張る

 ……さて、野菜も無事に?切り終わったし……。


 時間がかかるから、さっさと作っていかないとね。


 これ以上お腹が空いたら、ライル兄さんが暴れちゃうし。


「うぅぅ……形が悪いですの」


「気にしなくていいよ、この野菜たちは煮込むから。少し形がバラバラの方が良かったりするし」


「そ、そうですの?」


「うん、そうだよ。大丈夫、また今度作ろうね」


「……はい!」


 そう言い、ようやく笑顔を見せてくれた。


 ウンウン、やっぱり好きな子には笑ってて欲しいよね。


 ……このセリフを本人に言えないマルス君なのでした。





 まずは、仕込みからやっていこうか。


「鍋にうさぎの骨と脂身を入れて、水を入れて火にかけます」


「弱火ですの?」


「そうだよ。じっくり火を通すと、良い味を出してくれるんだ」


「そういうものですの……この後はどうするのですか?」


「二時間くらいかかるし、ここは放置で良いよ。とりあえず、俺はソースを作るかな。シルクはどうする? 今のうちにお風呂入ってくる?」


「見てても良いですの?」


「別に良いけど……じゃあ、手伝ってもらおうかな」


「はいっ!」


「う、うん」


 はて? 何がそんなに嬉しいのだろうか?


 相変わらず、女の子は謎がいっぱいです。




 場所を変えて、新しいコンロの前に来る。


「フライパンに薄力粉を入れて火にかけて……」


 まとまってきたら、馬のバターを入れる。

 本当なら、牛……バイスンの乳があれば良いんだけど。

 やっぱり、早く取り掛からないとなぁ。


「シルク、そこにあるミルクを入れてくれる?」


「わ、わかりましたわ」


「少しずつ、ゆっくりとね」


「は、はい……」


「そうそう。俺が混ぜるから、同じようにお願い」


「……えへへ」


 真剣な表情になったり、ニヤニヤしたり……可愛いので飽きないですね!





 その後、いい感じになったので……。


 ひとまず、仕込みが終わる。


「よし、これで良いかな……あれ? シルク?」


「……ふぇ?」


 振り返ると、眠そうなシルクがいた。

 そりゃ、そうだよね。

 朝から森に行って、こうして慣れないことして、疲れないわけがないよね。


「良いよ、休憩してて」


「で、でも……みんな動いてますの」


「そりゃ、セシリアさんとかリンとは違うし……」


「むぅ……」


「あの? シルクさん?」


「やりますわ!」


「ダメです。料理は危ないからね。火傷でもしたら大変だし」


「や、やりますの……」


「睨んでもダメだよ……仕方ないなぁ」


 ウトウトしているシルクを……優しく抱っこする。

 いわゆる、お姫様抱っこってやつだ。

 それよりもカッコつけたのは良いけど……もってくれぃぃ! 俺の両腕ぇぇ!

 ……あっ! シルクが重いとかじゃないからね!?

 ただ……うん、ある部分は重そうですけど。


「マ、マルス様!?」


「じっとしててね。自慢じゃないけど、腕力には自信がないんだから」


「……ほんとに、自慢じゃないですわ」


 そう言い、俺の胸に体を預ける。


 ……柔らか! 甘い香りがする!


 ……ぉぉォォ!?目覚めるな! 我が下半身よ!





 何とか、プルプルしつつも……ライル兄さんがいるベンチに到着する。


「おっ、マルス……へぇ? やるな、よく持てたもんだ」


「うむ、やはり殿方なのだな。シルク嬢、羨ましい限りだ」


「あぅぅ……下ろしてください」


「も、もちろん」


 言われなくても——俺の腕が限界を超えて悲鳴を上げているのでぇぇ!!


あーあ、俺もライル兄さんみたいなマッチョだったら……いや、それはそれで嫌かも。






 無事に、シルクを下ろし……。


「じゃあ、ここでゆっくりしててね。ライル兄さん、頼んだよ」


「おう、任せとけ」


「ライル様? 先ほどの発言についてお話がありますわ」


「はっ?」


「よく持てたなとか何とか……どういう意味ですの?」


「ま、待て! それはマルスが力がないと思ったからで……」


ゴゴゴと……気のせいか、シルクの後ろに鬼が見える


 そしてジリジリと、ライル兄さんに迫っていく。


 ……しーらないっと。


 触らぬシルクに祟りなしってね! ……巻き添え食らう前に退散しよっと。


「セシリアさんも、邪魔してすみません」


「な、 なっ——!? 邪魔などではない!」


「……へぇ」


「な、何だ? その顔は」


「いえ〜別に〜」


「……ほう?」


「ご、ごめんなさいぃぃ! それじゃぁ!」


「待て! ……ったく、仕方のない兄弟だ」





 制止を無視して、その場を離れる。


「なるほど、脈なしってわけでもなさそうだね。後は、ライル兄さんが頑張るのと……国同士の問題があるのかぁ……面倒だなぁ」


 でも、小さい頃からライル兄さんには世話になった。


 俺にできることがあるなら、手伝ってあげたいな。


「さて、次の準備を進めないとだけど……少し休憩しないと」


 ……腕が上がらないのです……とほほ、情けない。







 ~あとがき~


 皆さま、いつも本作品を読んでくださりありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))


 先日、初めて担当様と本格的な打ち合わせを行いました(この1ヶ月はご挨拶や、お互いの作品についての意思疎通を図る期間でした)


 まずは本作品は特別賞ですが、『電撃の新文芸様』から出版されることが決定しております(書籍化予定ではなく、)


担当は恐れ多くも、数々のヒット作を手がけた電撃文庫の副編集長様になりました。


 そして私の作品を選んだ理由として、『追放=ザマァ』を覆したことと、徹底した優しい世界観に惹かれたと言って頂きました(´∀`*)


 これから、それらを前面に押し出しつつ、共に頑張っていきましょうと。


 人見知りな私にも優しく接してくださり、とても良い方です。


 今後の情報も、担当様に許可が下り次第、伝えていこうと思います。



 それとアルファポリス様から、私の書籍化デビュー作である「はぐれ猟師の異世界自炊生活」という作品が「おとら」名義にて6月22日より発売しております。


 Amazonや楽天でもご購入できます。


詳しいことは近況ノートや、プロフィールの作者名の下にあるtwitterをご覧下さいませ。


 本作品と似通う部分もございますので、興味のある方は見て頂けると嬉しいです。


 それでは、引き続き宜しくお願い致します。





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