124話 戦い

 馬車を走らせ、数時間後……。


 森の近くに到着する。


入る前に、軽くお昼ご飯を食べ……。


「うし、いくか」


「うん。じゃあ、行こうか。みなさん、よろしくお願いしますね」


 馬車の護衛を兵士達に任せ、俺たちは森へと向かっていく。


「さて、どんな奴がいるのやら」


「黒い魔獣かぁ……目撃者の人も要領を得なかったしね」


 全体的に黒いから見辛いし、恐怖でそれどころじゃなかったんだろうね。

 とりあえず、今のうちに決めとくかな。


「フォーメーションはどうするの?」


「当然、俺が前だ。リンが真ん中、お前が後ろだ」


「やはり、私が前衛の方が……」


「リン、兄さんの好きにさせよう」


「……わかりました。ですが、何かあればすぐに前に出ますから」


「お前はマルスの守りに集中してろ。全く、お前の師匠は誰だ?」


「貴方でしたね……わかりましたよ」


「おう、それで良い。なに、俺とて簡単にやられはしないさ」


「フラグっぽいよぉ〜」


「あん?」


「う、ううん、何でもない」


 イケナイイケナイ……そうならないように頑張らないとね。






 十分ほど歩き……森の入り口に到着する。


「うし! 行くか!」


「じゃあ、シルク達は少し離れて来てね。二人とも、頼んだよ」


「はい、わかりましたわ」


「任せてください!」


「うむ、任せろ」


 そのまま、森の中に入っていく。




 それから時間が経つけど……。


「ふむ……なるほど、変だな」


「ええ、そうですね」


「うんと……魔物がいないね」


「あと肉食系の魔獣もな」


 歩いていても、静かなものだ。

 木々が揺れる音や、心地よい川のせせらぎの音がする。


「凶暴な魔獣がいるって話だったが……」


「待ってください。何か……聞こえますね」


 リンの耳が、なにかを捉えたようだ。


「どっちだ?」


「ここを……右上に進んでください」


「わかった」




 それから、リンの言う方向に向かうこと数分後……。


 俺の耳にも、くちゃくちゃという生々しい音が聞こえてくる。


「……いたぞ」


「……あれはなんですか?」


「相当でかいね」


 俺たちの視線に入って来たのは、背中しか見えない丸く太った黒い生き物だ。

 その体長は二メートルを超えている。


「グァ? ……アァァァァ!!」


「気づいたか! マルス!」


「うん! 準備してるよ!」


 すでに魔法は貯めてある。


エアバースト空気の爆弾!」


「グァァァ——!!」


 振り向いた生き物が吠えた瞬間——魔法がかき消される!


「うそん!?」


「ほう! やるな!」


「というか……アレはなんですか?」


「うーん……うさぎかな?」


 振り返った姿を見て……その全容を確かめてみる。

 丸々した黒くてでかい肉体、それに反して短い手足。

 頭には可愛いらしい耳があるが、耳と耳の間に鋭いツノが生えている。

 さらには、その口元からは鋭い歯が見えている。

 今は警戒しているのか、俺達をじっと見つめている。


「ホーンラビットの変異種か……」


「何それ?」


「ライラ様から聞いたことあります。突然変異と言われる個体ですね」


「いや、ホーンラビットってやつ」


「お前、本当に知識が偏ってるな……知ってて当然のことを知らないで、俺達が知らないようなことは知ってやがるし」


「ま、まあ! 良いじゃん! それで、本当ならどのくらいなの?」


「大体、50センチくらいですね」


「……そりゃあ、突然変異だね」


「おい、お喋りはそこまでだ——動くぜ」


 兄さんがそう言った瞬間——奴が姿勢を低くして、突進の構えを取る。


 そして……物凄い勢いで迫ってくる!


「はやっ!? アースランス土の槍!……うげぇ……!」


「マルス様! 失礼します!」


「あぶねぇな!」


 奴のツノは、俺の魔法を打ち砕き、そのまま木に突撃する。

 その木々さえも、あっさりと破壊された。


「グァァァ!」


「ははっ! こいつは良い! 俺が相手するぜ!」


 襲いかかってきた奴を、ライル兄さんが二本の剣を構えて、剣戟を繰り広げる!


「オォォォ!!」


「グァァァ!!」


 爪により、兄さんの身体から血が流れ出す!


「マルス様!」


「リン、もう少し様子見よう……ほら、あんなに楽しそう」


「ははっ!」


 血を流しながらも、その顔は歓喜に染まっている。


 正直言って倒すだけなら問題はない。


 俺の最大火力を使えばいい。


 でも、それじゃあ意味がない。


 数少ない兄さんと戦える機会だ。


 何より——ウサギ肉を食べたいじゃん!


「なら、粉々にするわけにはいかないし——俺も楽しまないとね!」


「ははっ! わかってるじゃねえか! いい気分だ——オラァ!」


「グァ!?」


 傷を負いながらも、剣を握りしめて、爪の一部を叩き折った!


「グァァァ………ガァァァ」


「兄さん! 魔力を感じる! 下がって!」


「おう!」


 俺と兄さんはスイッチをし、場所を入れ替わる。


「ガァァァ!!」


 次の瞬間、奴から緑色の玉が吐き出される!


「さっき俺の魔法を防いだ技か! リン! 隙を作る!」


「マルス様!?」


 俺は魔法を貯めつつ、両腕をクロスし……玉を受け止める!


「ぎぎ……そいや!」


 両手を上に押し上げ、玉を弾く!


「グァ!?」


「魔法耐性あるんですよ! 今度は相殺させない——風の弾丸エアライフル!」


 指先から、圧縮した風の玉を発射する。

 そのままツノに吸い込まれ……奴のツノを叩き折る!


「グァァァ!?」


「ナイスだ! あのツノは邪魔だからな!」


「もう! 心配かけないでください! あちこちかすり傷ができてるじゃないですか!」


「平気だよ! 魔法には強いから! ほら! 早く!」


「わかってますよ——しっ!」


 間合いを詰め、リンの連続斬りが決まる。


「グァァァ!?」


「ちっ! 硬いですね!」


「グァ!」


 不利と見たのか、奴がうさぎ本来の動きを始める。

 大きいのに、とてもすばしっこい!


「くっ! はえぇな!」


「カウンターを決めるしかないですね!」


「いや、待って」


 森の中は、敵の庭だ。

 ジグザグに動き回る奴をカウンターで仕留めるのは危険だね。

 なんとか、動きを止めれば……。


「大規模な炎や風じゃあ、森を破壊しちゃうから……よし」


「マルス様?」


「どうするんだ?」


「俺が動きを止めます。兄さん、トドメをお願いします。リンは万が一のために、後詰めをしてね」


「了解です」


「おう! 任せろや!」


 森の中を動き回る奴を、よく観察する……。


「マルス様!」


「わかってる!」


 そりゃ——動きが鈍い俺を狙ってくるよね!


「グァァァ!」


「ツノがないなら——これでもくらえアースウォール!」


「グァ!?」


 奴が、俺の土壁に激突し……スピードを落とした。


「今だ! 土よ! 敵を閉じ込めろ——アースジェイル土の檻!」


「ガァァ!?」


 四方を土壁に囲まれ、奴が暴れ出す!


「これなら避けられないよ——ストーンフォール!」


「ガァァ…ガ……ガァァ」


 頭上から降ってきた岩の塊をくらわせる!


「魔法解除! 兄さん!」


「おうよ! スゥ——オラァァァァ!」


 脳震盪を起こしていた奴は、兄さんの攻撃を避けれずに……。


 双剣によって、その首を落とされた。







~あとがき~


皆さま、こんにちは。


昨日、近況報告には報告いたしましだが……。


本作品は、カクヨムコンテスト特別賞を受賞いたしました!!


昨日から、喜びを噛み締めております。


カクヨムコンテスト二年目で受賞できたこと……。


これも、応援してくださった皆様のおかげでございます。


誠にありがとうございました。゚(゚´Д`゚)゚。


色々と書きたいことは山ほどございますが、まだ言えない部分もございますので、詳細は追ってお知らせ致します。


ひとまず、今後の更新予定をお伝えいたします。


よく、書籍化すると更新が途絶えるみたいなことがあるらしいですが……。


ひとまず、それはないと断言いたします。


作業によって頻度は下がるかもしれないですが、定期的に更新してまいります。


今言えるのは、こんな感じですかね。


最後に、改めて——受賞できたのは皆様のおかげでございます。


本当にありがとうございました!







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