122話 その頃、女子会では……

 ふぅ……なんだかんだ言って、私も疲れていたようですわ。


 セシリアやリンと違って、私は体力がないので……。


 やっぱり、少しは鍛えた方がいいのかしら?


 ……二人は綺麗な体をしています……良いなぁ。


 お腹とか引っ込んでるし、全体的に引き締まっている感じで……。


「シルク様、どうかしたのですか? 先程から、視線を感じるのですが……」


「ふむ、気のせいではなかったか。私も感じていたのだが……」


「ふえっ!?」


 い、いけませんわ! 見ているのがバレていましたの!

 やっぱり、戦う人は敏感なのですね……どういたしましょう?

 いや、ここは思いきって聞いてみた方がいいのかしら?


「その……お二人は、とっても綺麗な身体をしていますわ。本当に羨ましくて……どうしたら、そんな感じになれるのでしょうか?」


「「……はっ?」」


「へっ?」


 何やら、二人の声に怒りを感じますわ……。


「セシリアさん、聞きましたか?」


「ああ、もちろんだ。なんとも、聞き捨てならないことを言ったな」


 すると、私の体を眺めてきます……は、恥ずかしぃ。

 女性とはいえ、思わず両手で身体を隠してしまいます……。


「な、なんですの?」


「はぁ……どこに私達を羨む要素があるのですか? そんなに女性らしい体つきをしておいて……しかも、無意識に強調して……全く、相変わらずというか……」


「全くだ。こんな身体より、シルク嬢のようなふんわり感がある体の方が羨しいが」


「そ、そんなことありませんわ! お二人共、引き締まってますし……」


 私は少し肉づきがあるというか……むちむちしてるのですわ。

 もっとスリムになりたいのに、中々なれませんし……。


「まあ、無い物ねだりってやつですかね」


「そういうことか。確かに、私とリン殿は武人だ。故に、体は自然と引き締まるが……文官寄りであるシルク殿には、そういったことは向かないか」


「そうですの! 実は武道の鍛錬をしたいと思ったことがあったのですが……お父様に止められてしまいまして」


「それは……そうでしょうね。侯爵令嬢には必要ないですし」


「私は男子がいなかったことと、適性があった故に学んできたが……普通はそうだろう」


「それにしても、どうしたんです? 急にそんなことを気にして……」


「えっと、その……マルス様ががっかりしないかなぁって……」


「……へぇ?」


「……ほう? 見せる気満々というわけか」


「ち、ちがっ! いえ! 違くはなくて……あぅぅ」


 か、身体から火が出そう……。

 べ、別に、そういうわけじゃなくて……!

 ただ、どうなのかなぁって……。


「つまり、マルス殿の好みがどうかという話か?」


「そ、そういうことですの!」


「マルス様は……難しいですね。あの人、そういう話はしませんし。男の友達もいませんから、そういった会話をしないのかと」


「ふむ……しかし、シルク嬢の胸はたまに見ているが?」


「……ふえっ? ……えぇ!? そ、それは知ってますけど……」


「なんだ、気づいているのか。それに彼はしっかりと男の子だ。私が夜這い……まあ、その時も反応はしていたしな……おい! 怖い顔をしないでくれ! もうしないから!」


「「当たり前です!!」」


「ま、まあ、最近は弟のように見えてきたし……えっと、話を戻すと……つまり、シルク嬢の身体を気に入ってるということだ」


「はい、そういうことですよ。もっと自信を持ってください」


「……えへへ」


 恥ずかしいけど……嬉しぃ。







 そのあと、話は変わり……。


「それにしても……相変わらず、マルス様特製風呂は気持ちいいですわ」


「ええ、そうですね」


「うむ、これは凄い……魔法で風呂を作るなど、一体どんな魔力量なのか見当もつかない」


「セシリアさんでも、無理ですの?」


「まあ、お風呂を水でいっぱいにすることは可能だ。しかし、それだけで魔力を相当持っていかれる。だというのに、マルス殿は……三属性を行使したのに、魔力がまるで減った様子がない」


「やはり、そうなのですか……」


「慣れたとはいえ、未だに驚く事ばかりですね」


 リンの言う通りですわ。

 先程マルス様は、あっさりと地面に穴を開けて、周りを石で囲い……。

 そこに水を流し込み、さらに魔法で高温にしていましたが……。

 それはとても異常だということを、改めて実感いたします。


「まあ、隠すのは当然だな。あれでは、周りが放っておくまい」


「ええ、その通りですわ。おそらく、様々な思惑が飛び交ったでしょう」


 貴族達の争いに巻き込まれることは必至ですわ。

 女の子を充てがわれたり、重要職を務めてたり……。


「理由はなんだったかな? 確か、跡目争いにならないためだったか?」


「そう聞いてますね。ただ、少し怪しいですけど」


「やっぱり、何か隠しておりますわよね。魔法もそうですが、料理などの知識も……」


 マルス様は古書を調べたとおっしゃっていますが……。

 幾ら何でも、無理がありますわ。


「たまに、はぐらかす時がありますものね」


「ふむ、そうなのだな」


「ええ、そうなんです」


 ……いつか、話してくれるのかしら?

 その時が来たら良いなぁと思います。

 マルス様にとって、特別でいたいから。


「はぁ……でも、困った人ですわ」


「困った方です」


「困った殿方のようだ」


 三人で同じことを言い、微笑み合う。


 こういうのも、たまには悪くないですわね。


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