116話 お出かけ

 一度、姉さん達のところに戻り……。


「なるほどねぇ……」


「どうしよう? 全員でぞろぞろ行くわけにはいかないし」


「そうよね……まず、セシリアは行くべきね」


「まあ、そうだよね」


 あちらの国の代表もいないとだもんね。


「私は、どうしようかし」


「お、俺が行くぜ!」


 ライル兄さんが、勇気を出して一歩前に出る!


 さあ! 姉さんの答えは!?


「……まあ、良いわよ。じゃあ、私が残るわね」


「おっしゃァァァ!」


「煩いわね……シルク」


「はい、ライラ様」


「貴族達には、私の代わりに話をしてきてくれる? 貴女なら、安心して任せられるから。ライルは馬鹿だし、マルスは経験が浅いから」


「おい? 言い方おかしくね? マルスだって馬——ぐはっ!?」


 あっ、吹っ飛んだ。

 俺が頭いいとは思わないけど……兄さんも大概だよね。

 黙っていれば良いのに……今の俺みたいに……クワバラクワバラ。


「はい、そうですわね。では、私が行きますわ」


「おふっ……シルク嬢ちゃん? 『はい』っておかしくね?」


「じゃあ、シルクも決まりだね。他はどうしよう?」


「マルス……お前もか」


「ラビとシロは置いていきなさい。子供に見せたくないものもあるかもしれないから」


「なるほど……」


 まあ、世の中は良い人ばかりじゃないからね。

 兄さん? なんか、悲しそうにしてたからか……セシリアさんが慰めてるみたい。

 ウンウン、俺たちはこれが狙いだったんだよねっ!

 ……冗談はともかく……ある種、初めての遠出だし……進展あるかなぁ。





 その後、話し合いを進めて……。


 俺とシルク、セシリアさんとライル兄さん。


 護衛としてリン、ベアとレオ、マックスさんと数名の兵士。


 ひとまず、この形となった。


 バランさんやゼノスさんがいれば、姉さんは安心だし。


 ……ここも、何やら色々ありそうだし……ワクワク。








 急いで準備を済ませ、昼食の後出発をした。


 馬車に乗って、街道を進んでいく。


 馬車には、リンとシルクが一緒に乗っている。


 馬車からの草原の景色は、見ているだけで心が安らぐ。


「いやぁ〜仕事だけど、たまには良いね。それで、この後はどうするの?」


「今回は、あえて村々を訪問しますわ」


「そうですね。セレナーデ王国に行くときは休暇でしたから」


「そういや、歓迎したいって言ってたっけ……ところで、アレはどうなんだろ?」


 俺は窓から、二人乗りをしてる二人の様子を見る。


「すまないな、ライル殿」


「い、いえ! の、乗り心地は如何ですか?」


「快適そのものだよ。随分と扱いが上手いのだな?」


「へへ……これでも、騎士学校を卒業してますからね」


「なるほど、立派なことだ」


「あ、ありがとうございます」


 おおっ……なんか、良い雰囲気だね。


 兄さんもセシリアさんも、肩の力を抜いている感じがする。


 いや……兄さんは、そうでもないかも。


「そうですわね……中々難しい問題です。ライル様は第二王子にして、暫定的な王太子ですので」


「そうだよね。ロイス兄さん達に子供が出来るまでは結婚出来ないもんね。さっさと作って貰わないと……あれ? 結婚式はやらないの?」


「いえ、そんなことはあり得ませんわ。確か、お父様のお手紙には……来月の予定と書いてありましたわ。一週間以内に正式に決定して、すぐに知らせると」


「そういえば、この間言ってましたね」


「あれ? リンは知ってたの? 俺……聞いてないよ?」


「はい、言ってませんから。まだ正式決定ではありませんので」


「マルス様の予定は、私達が把握してますから」


 ……領主とは、これいかに?


 いや、別に良いんですけどねー。


「あと、マルス様のことですから……逃げ出すかと思いまして」


「はい?」


「そうですね。ロイス様には、苦手意識がありますよね?」


「ま、まぁ……怒られるし」


 そ、そうかぁ……ロイス兄さんに会うのかぁ。


「あっ——俺は不参加とか……」


「「ダメです」」


 二人の冷たい視線と、強い言葉が重なる……。


「ほ、ほら! 俺は領主としての仕事があるし!」


「だからですわ。尚更、責任説明の義務があります」


「ぐっ……た、確かに……」


「その間は、ライル様とライラ様が残るということで調整が出来てますわ」


「ライル様はあっちの貴族を刺激しないためにですね。あと、万が一のことがあったら大変ですから。その間、ライラ様はお仕事を一手に担ってくれるそうです。あと……結婚について煩く言われそうだから嫌だと。何より、国王陛下のご指名らしいです」


「に、逃げ道が……」


 はぁ……憂鬱です。


 ロイス兄さん……怖いんだもん。





 ◇



 ふふふ、ようやく少し片付いたな。


「ご機嫌ですな?」


「それはそうだ。国の膿を少しは取り除けたからな」


「確かにそうですな。これで、ようやく結婚式が行えます」


「ああ、そうだ。マルスに手紙は出したな?」


「はい、国王陛下。しかし、ライラ様だけで良かったのでは?」


「いや、一度きちんと話をしたいと思ってな。それに、あいつらはマルスに甘い。俺が何か言っても、すぐに庇ってしまうはず」


「……まあ、そうですな」


 ライルとライラからは、すでに祝いの言葉は頂いている。


 それに、ローラとも会ったことあるし……マルスだけはないからな。


 まあ、それは建前として……。


 あいつらばかりずるいではないか。


 俺だって、マルスは可愛いというのに。


マルス、会えるのを楽しみにしているぞ。

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