~ライラ視点~

 ……ふふ、仲良いわね。


 マルスとシルクの寄り添う姿を見て……。


 少し、良いなぁと思う……自分がいる。


 あんな風に寄り添えるる相手がいたら……幸せよね。


 今までは、人に甘えたり寄り添ったりなんて考えたことなかったけど……


 お兄様のお手紙のこともあるし、これからは考えてみても良いわよね。


 ……私だって、憧れがないわけじゃないもの。


「良いのか? 声をかけなくて」

「良いのよ、ライル。お昼寝してるし、今はシルクの時間だわ」

「まあ、そうだな」


 マルスが帰ってきたと知らせを受けて、急いで視察から戻ってきて……。

 その途中で、ライルやセシリアと一緒になって、帰ってきたら……。

 ベンチで寝ている二人を発見したってわけね。


「とりあえず、生きているなら良いわ」

「ああ、その通りだな……一安心だぜ」


 私もライルも、ホッと一息つく。

 人は死ぬとき——あっさり死ぬことを知っているから。


「そういえば、セシリアは?」

「ああ、先に部屋に戻ったぜ」

「……どうだった?」

「あぁ? 何がだ?」

「だから……デートよ」


 男女が二人でお出掛け……それはデートよね?

 私はしたことないから……少し気になるわ。


「そりゃ……楽しかったぜ。ただ、ど緊張して……あんまり記憶がない」

「なにそれ? 情けないわね」

「う、うるせえ! 男もいたことない姉貴に言われたく——」

「な・に・か?」

「ヒィ!? わ、悪かった! 俺が悪かった! だから——手から火を出すな!」


 すると……。


「ライラ様、お静かにした方がよろしいかと」

「そうっすよ、あいつら起きちゃいますよ?」


 後ろで見守っていたゼノスとバランが、声をかけてくる。


「それもそうね……ところで、貴方達は相手いないのかしら? そして、年上の女性ってどう思うかしら?」

「はっ?」

「へぇ? それはどういう意味っすかね?」

「いえ、ただの一般論よ。私もお兄様に結婚を考えてと言われたけど……どうして良いかわからなくて」


 王都に帰れば、身分の高い人は沢山いるけど、大体年配の人ばかりだし……。

 同い年の人はとっくに相手がいるし……そうなると、少し年下になるのかしら?

 ということは……参考になるのは、今はここにいる彼らくらいだし。


「ああ、そういう意味っすね。歳が近い方はすでに相手がいるっすね。おい! バラン! しっかりしろ! 深い意味はないってよ」

「わ、わかってる! そ、そうですな……わ、私はそういう相手はおりません……と、歳上の女性は魅力的だと思います」

「俺はまだ遊びたいから特定の相手はいないっすね。あと、年上には年上の魅力がありますから」


 ……なんとまあ、正反対の二人よね。

 ゼノスと付き合う女の子は飽きないだろうし……。

 バランと付き合う女の子は安心出来そうね。


「姉貴? なに言ってんだ? おいおい、年増が俺の友達を狙うとか勘弁——」

「バカかっ!」

「何を言うのですか!?」


 二人が、ライルの口を塞ぐけど……もう遅いわ。


「フフフ……年増で悪かったわねぇぇ——!!」

「ぐはっ!?」


 風の球を受けて……ライルが吹っ飛ぶ!


「ライル様!?」

「平気かっ!?」

「グフッ……お、おう……オノレェェ……」

「フン! 火の魔法じゃなかっただけ感謝して欲しいわ」


 そもそも、貴方の好きなセシリアと同じ歳なんだけど?


 でも二人が、ライルを介抱している姿を見ながら……ふと思う。


 年増かぁ……そうよね……ムカつくけど、ライルの言う通りよねぇ。


 同世代は結婚して子供がいるのが当たり前……。


 家庭を作って家に入り、夫を支える……柄じゃないわね。


「はぁ……やっぱり、私には無理かしらね」

「姉さん? どうしたの?」

「あら? マルス?」


 いつのまにか、マルスが後ろに立っていた。

 隣には、頬を赤らめたシルクもいるわね。


「何やら騒がしいけど……ライル兄さんは生きてる?」

「平気よ、手加減したもの」

「わ、私! 様子を見ますわ!」


 シルクが駆け出して、ライルに向かっていく。


「悪いことしたわね」

「へっ?」


 マルスはわかってない様子だけど……。

 多分、みんなに見られていたことを恥ずかしがっているのよね。


「私も、あれくらい可愛げあったら……」

「何を言ってるのですか? 姉上は可愛いですよ! 美人だし、カッコいいけど……」

「でも、年増だし……」

「そんなこと言う奴は、俺がぶっ飛ばします! 歳上の女性は素敵ですよ!」

「平気よ、もう吹っ飛んでるから」


 私は、先程吹っ飛ばした無礼者を指差す……ライルと言う名の。


「あっ——それもそうですね。ライル兄さん……どうか安らかに眠ってね」

「勝手に殺すな!」

「もう!まだ動いちゃダメですわ!」

「止めるな! マルスゥゥ——!!」

「うひゃー!?」

「待てやコラァァ!!」

「待たないよォォ!!!」


 ライルがマルスを追いかける……。


 そして、マルスは必死に逃げている……。


「ふふ……懐かしいわね」

「ちょっ!?姉さん! 助けて!」

「おい!? 卑怯だぞ!?」


 私の後ろに、マルスが回り込んでくる。


 在りし日の思い出のように……。


 そうよね……今は焦らなくていいかな。


 可愛い弟達の恋愛を見届けてから、自分のことを考えましょう。


 それが——お姉ちゃんの役目だものね。

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