104話 ???

 その後も、上位種達を倒していくが……。


「みんな、少し待って」

「どうしたのですか?」

「ちょっと、考えたいことがあって」

「では、俺たちで警戒をしておこう」

「ごめんね、こんなところで」


 見張りをリンを除く者達に任せて……疑問を口にする。


「なんか、おかしいよね?」

「やはり、そう思いますか」

「うん……


 確かに、まだ調査が進んでないエリアだけど……。

 それでも、こんなに上位種がいるのはおかしい。

 それに、魔獣達もいない。

 別に乱獲というほど狩ってもいないのに。


「魔獣は、その例の魔物にやられたのでは?」

「うん、その可能性は高いね。もしくは、危険を感じて奥地に逃げ込んだのかも」

「あとは、強い魔物が多いですか……もしかしたら、我々が倒し過ぎたのでは?」

「どういうこと?」

「我々に例えると……魔の森の入り口付近にいる下っ端の兵がやられすぎて、奥地にいる上官が前線に出てきた感じとか」

「なるほど……」


 リンの言葉を聞いて……妙に納得した。

 部下がやられたから、らちがあかないと思って……上官が出てきたと。


「もしくは、餌がいないので探しに来たのでは?」

「そっか……俺達が魔獣を狩ってるからか」

「推測でしかありませんが……」

「いや、ありがとう。お陰で整理できたよ。うんうん、帰ったら姉さんに報告しなきゃ」


 リンと話を終えたら、移動を再開する。


 もしかして、例の魔物も……そういう一因があって、出てきたのかもしれないね。






 その後、軽食を食べつつ移動していると……。


「師匠……何か匂います!」

「シロ、なんの匂いだい?」


 俺の言葉に、シロの鼻がヒクヒクと動いている。


「これは……大量の血の匂いです」

「……アタリかな? みんな、気合い入れてね」


 俺の言葉に全員が黙って頷き……シロが指し示す方向に向かう。





 ……これはひどいや。


 目の前には、惨殺されたと思われる魔獣の死体が転がっている。

 切り刻まれたモノ、押しつぶされたモノなど様々な形で……。


「もはや、原形がないですね」

「うん、ぐちゃぐちゃになってる……」

「斬られたというよりは、潰されてたという感じですね」


 リンの言う通り……何か、とてつもない力で潰された感じだ。

 一体、どんな力で叩き潰せばこうなる?

 もはや、ミンチ肉のようになってるし……。


「さて、こっからどう」

「ブモォォォォ——!!」


 心臓を鷲掴みされたかのような声が鳴り響く!


「な、何?」

「ヒィ!?」

「きゃっ!?」


 俺とラビとシロが尻餅をつく中……三人が動き出す。


「ベア! 私と共に前に!」

「おう!」

「レオ! 三人を頼みます!」

「へい!」


 リンとベアが前に出た瞬間——それは現れた。


「ブモォォォォ!」

「……やっぱり、正解だったのか」


 三メートル近い大きさと、ボディービルダー顔負けの肉体。

 牛のような顔に、右手に大きな斧を持っている。


「ミノタウルス……!」

「ボス、知ってるので?」

「う、うん……名前だけはね」


 迷宮の番人……いや、今は魔の森の番人ってところかな。


「ブルァァ!」

「くっ!?」

「ベア! 私を庇うな!」


 目の前ではベアが攻撃を受け止めて、リンが攻撃を仕掛けている。

 でも、リンの攻撃でも傷一つ付いてない。


「怖がってる場合じゃないね……!」


 震える膝を押さえつけて……立ち上がる。


「レオ。君は不満かもしれないけど……」

「平気っすよ。オレが二人を守ります。こいつらも仲間っすから」

「ありがとう——行ってくる!」


 シロとラビの仕事は、あいつを見つけ出すこと。

 もう、十分に果たしてくれた。

 リンとベアは、時間を稼ぐこと。

 そして、俺の役目は……あいつを倒すこと!



 俺は駆け出しながら……すぐに魔法を発動する。


吹き飛べ!エアバースト

「ブガァァ!?」


 空気砲をくらい、奴は木々を薙ぎ倒しながら吹き飛んでいく!


「リン! ベア! お待たせ!」

「いえ! お気になさらずに!」

「きたかっ! 作戦はどうする!? あんなんで死ぬとは思えん!」


 ベアの言う通り……奴がすぐに立ち上がる。


「ブモォォォォ!」

「無傷……まいったね」


 実際に奴を目にして……一瞬だけ、頭の中でシミュレーションする。

 あの威力の魔法が効かないとなると、中々に厳しい。

 森を焦土にしていいなら別だけど、それでは本末転倒ってやつだし。

 ……よし、まずは確認だ。


「ベア、肉弾戦で時間を稼げるかい?」

「……やってみせよう。それが、俺の役目だ」

「リン、奴に傷を負わせられるかな? 僅かでもいいから」

「……必ずや」

「よし、二人を信頼するよ。じゃあ、行動開始!」

「おうっ!」「はいっ!」


 ベアが闘志を漲らせ、ミノタウルスの前に出る。


「かかってこい! 俺を倒さずに通れると思うなよ!」

「ブモォォォォ!!」

「ウォォォ!!」


 目の前では、ベアがデスマッチのように殴り合っている!

 口から血が流れ、ところどころが腫れ上がっても……一歩も退かない!


「ベア……凄いや」

「はい。おそらく、奴と殴り合えるのはベアくらいでしょう」


 その光景を見ながら、俺達はそれぞれ魔力と闘気を高める。


 ベア……もう少しだけ頑張ってくれ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る