97話 作戦計画の前に……

 翌日の朝……久々に、みんなを呼び出す。


 獣人達、人族の仲間達だ。


 ちなみに、セシリアさんや、バランさんとゼノスさんもいる。


 みんなにも、それぞれ関係がある話だしね。


「コホン! みなさん、お疲れ様です」

「マルス? どうしたの? 珍しく、はりきって……」

「姉さん、心外ですよ。俺だってやる気を出す時はあります……たまに」

「ふふ、そうね。私達は、黙って聞いていれば良いの?」

「いえ、みんなも疑問があればお願いします。ただ、姉さんが中心だと助かります」

「わかったわ」


 全員が頷くのを確認したら……。


「さて、いよいよ一大行事に取り掛かろうと思います——魔物飼育作戦計画です!」

「なるほど……前に言ってたわね。でも、どうやって?」

「俺の魔法で、この地まで誘導します。そのために、この一ヶ月の間に鍛錬しましたから」


 姉さんの魔法実験のおかげで、自分の魔法の扱いにも慣れてきた。

 今ならチートに振り回されずに、上手くコントロールできるはず。


「魔法で? ……どうやって?」

「うーん……説明し辛い。とりあえず、魔物達の群れがある場所は判明しましたよね?」

「ええ、そうね。以前リンが見つけた位置に調査隊を派遣したら、バイスンの群れがあったらしいわ」

「ひとまず、バイスンから始めようと思います」


 俺が牛乳が飲みたいから!

 ……栄養価も高いし!

 ふぅ、言い訳しとかないとね。


「それで、何処におびき寄せる……なるほどねぇ、あの指示はそういう事だったのね?」

「はい、そういうことです。獣人達の住んでいたスペースを使います」


 俺の政策の一つとして、獣人と人族の和解がある。

 ここに来てからの頑張りもあって、それは順調に進んでいた。

 なので思い切って……獣人族と人族を分けずに生活させる事にした。

 二週間くらい経つけど……確認しとかないとね。


「ベア、レオ、獣人族達から不満は?」

「へい、今のところはないっす」

「ああ、俺も問題ないと思う。何かあれば、すぐに俺かレオに言うように徹底している」


 獣人族側からは、レオとベア仲裁役に立ってもらった。

 そうすれば、すぐに俺にも情報が上がってくるからね。

 その逆で……。


「マックスさん、ヨルさん、そちらはどうですか?」

「こちらも問題ありません」

「マルス様が言うならばといったところです」

「うんうん、良かった」


 近衛騎士達が護衛に来てくれたから、その分の負担が減った。

 だから、レオ達やマックスさん達に新しい仕事を与えたってわけさ。

 その四人が中心となって、街の治安を守ってくれている。


「それに、宴も無駄じゃなかったって事だ。あれは、交流の意味もあったし。みんな、知らないから怖いんだよね。接していけば、何ら変わりないことがわかったはずだよね」


 すると……。


「ただマルス様がやりたいだけでしたよね?」

「そうですわよね?」

「キュイ!」

「はい! 聞こえません!」


 都合の悪いことはシャットダウン!

 ……それだけ聞くと、悪代官みたいだけど。


「幸い、まだまだ住居スペースは余ってたわ。使っていない家を立て直したり、新たに家を建てたり……でも、増えてきたらどうするの?」

「街道沿いに中継点として、村を作ろうかと思っています。今現在作成している、セレナーデ国に続く道ですね」

「なるほど……森近辺の魔物も排除したし、安全は確保できるわね」

「はい、それに冒険者達の仕事も増えますし」


 腕に自信がある者は、森で魔物や魔獣を倒し……。

 そうでない者は、護衛や警備の仕事に就いて貰えば良い。

 それらを、領主として依頼を出して……そうすれば、彼らも生活ができるはずだ。

 結果的に経済も回って、領主としても助かるし。


「……悪くないわね。色々と甘い点はあるけど」

「それは、私達の仕事ですわ」

「シルク……そうね、その通りだわ」

「うん、悪いけどお願いするよ。後は、気になることあるかな?」


 全員を見回すと……リンが手を挙げる。


「どうしたの?」

「いえ……群れを見つけた者達からの報告で気になることが」

「……何かあったけ? 俺も聞いてたはずだけど」

「数が少ないかと思って」

「……うん?」

「群れをなしているにしては、数が少ないと思います」

「……なるほど」


 確かに、森の調査を進めているけど……もっと目撃情報があっても良いはずだ。

 ブルズ然り、ゲルバ然り、バイスン然り……意外と群れは発見されてない。

 大体、単体か番で発見されている。


「あっ——いや、しかし……」

「ヨルさん? 何か気になることが? もしあれば、遠慮なく言ってね」

「……実は、魔獣が惨殺されていたそうです」

「……食われていたわけでもなく?」

「はい……見るも無惨な姿で」


 おかしい……戦って勝ったなら、普通は食べるはず。

 それが魔獣であっても、魔物であっても……。


「その者は怖くなって逃げたそうなので、信憑性が薄かったのですが……」

「なるほどねぇ……調べる必要がありそうだね」


 作戦の途中で、そんなモノが現れたら……台無しにされちゃうし。


 後顧の憂いは断つに限るよね!

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