六章 マルス、障害を排除する
95話 冬が終わり……
あれから一ヶ月が過ぎて……。
状況も、色々と変化してきたかな?
一番大きいのは……これだよね。
「キュイ〜」
「きゃっ!? ルリちゃん! 危ないですわ!」
「キュイ〜」
ルリがシルクに体当たりしようとするので……。
「ルリ! いけない!」
「キュイ!」
ピタッと止まり、俺の前に来る。
……フゥ、何とか訓練の成果が出てきたね。
やっぱり、頭は良いんだよね……まだ子供なのが難点だけど。
「た、助かりましたわ」
「流石にね……一メートルくらいあるし」
「キュイ?」
そのつぶらな瞳や仕草は、相変わらず可愛いけど……。
もう、抱っこは出来ない大きさになっている。
流石は、ドラゴンといったところかな?
色々な意味で、成長率が高い。
「ルリ、良いかい? もう、人に体当たりしてはいけない」
「キュイ〜」
「そうだよ。その代わり、撫でてはもらえるから我慢しなさい」
「キュイ!」
姿勢を低くして『撫でて〜』とでもいうように、頭を下げてくるので……。
「よしよし」
「私も……よしよし」
「キュイ……」
やれやれ……そろそろ、お部屋で飼うのは限界かな?
「あとは、アレもだよね」
二階の窓から庭を眺めると……。
「くっ!?」
「そんなもんか!?」
「まだまだですぞ!」
「すごいね〜でも、やっぱり魔法には弱いね」
庭では、リンが三人と組手をしている。
どうやら、頼み込んだみたいだけど……少し心配だ。
もう一ヶ月も、ああやって鍛錬している……。
「リン、平気かしら?」
「うん、少し心配だね。でも、本人がやる気だから」
「私、癒しに行ってまいりますわ」
「うん、お願い」
シルクが去るのを見送り……。
「力が戻ってきたベアやレオも、ずっと二人で組手してるし……シロも体つきが変わってきたし、動きにキレが出てきた。ラビは相変わらずだけど……まあ、まだ十歳だからね」
冬が終わりを迎え、みんなの動きも活発になってきたってことだ。
「マルス〜!」
「キュイ!」
「はい! 姉さん!」
「部屋で待ってるからきてちょうだい!」
階段の下から、ライラ姉さんの声が聞こえる。
「ルリ、行くよ。今日も実験だ」
「キュイ〜!」
ルリを連れて、姉さんの部屋に向かうと……。
「キー!」
「キー!」
小さいワイバーン二匹が、出迎えてくれる。
「キュイ!」
「「キー!」」
「はい! 整列!」
姉さんが一声言うと、二匹が整列する。
これが、姉さんが実験したかったことだ。
姉さんが生まれるのを見届けて育てたら……どうなるのかを。
「やっぱり、言語が通じてるわ」
「うん、それにルリともね」
「まあ、高位魔獣の理論や仕組みはわかってないわ。ただ、同じ魔獣であること……鳴き声の特徴が似てるから通じるのかも」
まあ、翼竜と言われるくらいだしね。
森に連れて行ったけど、他の魔獣には通じなかったし。
……同じ人間でも、言語は通じないこともあるしね。
幸い、この大陸は共通言語だけど……もしかしたら、他にも大陸があるかもしれない。
そこには、外人がいたりして……まあ、今は良いか。
「なるほど……」
「まあ、違う理論もあるけど。ワイバーンは賢い生き物だから、私達の言葉も通じてるとかね」
「その可能性もあるかぁ……それで、このまま育てるの?」
「ええ、上手く育てば……色々と使い道があるわ」
荷物の運送、空の警戒、移動手段……確かに、色々ありそう。
「ルリも、これから頑張ろうね?」
「キュイ!」
「あら、今日から?」
「うん、ルリも大きくなってきたから」
「じゃあ、それも報告書にまとめておいて」
「……が、頑張る」
めんどくさいけど、自分のためでもあるしね。
それに、俺も頑張らないと……みんなに負けてられないよね!
組手をしていたレオとベアの元に行き……説明をする。
「ふむ……空を飛ぶか。ものすごい発想だな」
「ドラゴンに跨るっすか……聞いたことないですぜ」
やっぱり、そういう例はないらしい。
そもそも、ドラゴン自体がいないし……空を飛ぶ生き物が少ないからね。
「ルリ。今日から、俺を乗せて飛ぶことを覚えてもらうよ?」
「キュイ!」
しきりに頷いて、喜んでいる様子だ。
多分、遊んでもらえると思ってるのかも。
「じゃあ、跨る……よっと」
「キュイ〜」
何とか、ギリギリ跨ることが出来……。
「重くないかな?」
「キュイ!」
「おっ、平気そうだね。まあ、俺は軽いし……よし、飛んでみて」
「キュイ〜!」
翼を羽ばたかせ……ルリが宙に浮かぶ。
ちなみに翼で飛ぶというよりも、魔力で浮遊しているらしい。
「わわっ!?」
「キュイ!?」
ルリがふらつき……俺が落ちそうになる!
「主人!」
「ボス!」
「へ、平気! ただ、一応下で構えておいて!」
「「おう!」」
よし、これで万が一落ちても安心だ。
「ルリ、やっぱり重たい?」
「キュイキュイ」
首を横に振っているから、重くはないってことか。
「じゃあ、後は慣れるしかないか。あと、ルリも成長していくしね」
「キュイ!」
「おっ、気合い入ってるね」
もう少し大きくなれば、こっちもバランスが取れるし。
続けていけば、ドラゴンライダーになれるかも……。
やばい! 超かっこいい! 超楽しそう!
「よし……練習は続けるとして、先に仕事を始めるとしますか」
そう……いよいよ、魔獣飼育作戦開始です!
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