86話 調査から帰還

 おお! レオが強くなってる!


 三メートル近い巨体を背負い投げするなんて……。


 しかも、離れた位置からだから、相当な力がないと出来ない。


 なるほど……これが獅子族が最強の腕力を持つと言われる所以なんだね。


「へへっ」

「レオ、良くやった」

「ああ、良いものを見せてもらった」

「姐さん、ベア……嬉しいっす」


 リンのベアが、それぞれ肩を叩いている。

 前衛同士、何か通ずるものがあるのかも。


「すごいです!」

「わぁ……!」

「ハハッ! 見たか! ほら! ぶら下がると良い!」


 シロとラビは、レオの両腕にぶら下がり……楽しそうにしている。


「リン」

「なんでしょう?」

「君の見る目に感謝するよ。みんな、良い子達だ」


 ベアを除く三人は、リンが連れてきてくれた。

 お陰で、こんな短期間で開拓を進めることができる。


「あ、ありがとうございます……でも、それはマルス様だからです」

「そうなの? ……よくわかんないや」

「ふふ、それで良いんですよ。貴方は、そのままで」


 すると……みんなが温かい視線を向けてくる。

 なんだか照れくさいので……。


「こ、こいつって美味しいのかな!?」

「俺の聞いた話では、極上の味と聞いたことがある」

「へぇ! それは楽しみだね! じゃあ、レオ悪いけど……」

「へいっ! オレに任せてください!」


 その巨体を担いで、レオが歩き出す。

 本当に、本来の力が戻ってきたみたいだね。

 これなら……俺の望んだ役目を任せることが出来るかも。







 その後、川の中にいたサーモスもベアが仕留め……。


 その結果、ベアとレオは身動きができないので……。


 シロとラビが最大限に警戒して、俺とリンで魔物を仕留めていく。


 そして、日が暮れる頃……何とか無事に、バーバラに帰還する。


「つ、着いた〜!」

「さ、流石に疲れたぜ」

「俺もだ。卵もわさびとやらも担いだしな」

「ぼ、僕も……初めて戦ったから」

「みなさん、お疲れ様でした」

「わぁ……リンさんだけ平気そう」

「ふふ、鍛え方が違いますから」


 すると……いつものがやってくる!


「あ、姉上! ストップ! ドンドムーブ!」

「マルスゥゥ〜!!」

「ぎゃァァァ!」


 疲れて身動きが取れない俺は、あっけなく捕まり……。

 おっぱいによる洗礼を受ける!


「く、苦しい………!」


 あぁ……意識が朦朧としてきたなぁ……。


「マ、マルス!?」

「姉貴は学習しねえな!」

「う、うるさいわよ!」

「クク、良いではないか。仲が良くて」

「ま、マルス様ぁぁ〜!」

「キュルルー!」


 出迎えてくれたみんなの声を聞きながら……。

 闇の中へと沈んでいく……。









 ん? ああ……気を失ったのか。


 ちょっと無理しすぎたかなぁ……。


 獣人族の中に一人だけ人族だから、足を引っ張らないように頑張ったけど……。


 魔法チートはあっても、それ以外は普通の人間だってことを忘れちゃいけないね……。


「マルス様?」

「キュイ!」


 目を開けると、シルクの綺麗な顔と、ルリのくりっとしたお目々ちゃんがある。

 どうやら、膝枕をされているようで……俺の腹の上にルリが乗ってるらしい。

 銀の髪先が頬に触れ、少しくすぐったい。


「やあ、シルク……気持ち良いね」

「そ、そうですか? こちらに来てからご飯が美味しくて……少し太ってしまいましたわ」

「良いことだよ。女の子は、少しぽっちゃりしてるくらいがちょうど良いさ」


 前世でもそうだったけど、痩せているのが正義!みたいな風潮は好きじゃなかった。

 男子は……多少肉づきがあった方が好きなんだァァァ!


「えへへ……じゃあ、いっぱい食べますわ。その方が、マルス様はごにょごにょ……」

「はい?」

「な、何でもありませんわ!」

「そ、そう」


 何で頬を染めてるんだろう?

 俺、変なこと言ったかな?


「それはそうと……マルス様、ご無事でなによりですわ」

「うん、ありがとう。ただいま、シルク」

「はい、お帰りなさいませ」


 どうやら、死亡フラグは回避できたらしい。

 ……最後の最後で危なかったけどね。


「ところで、何でみんな正座してるの?」


 先程から、目に入ってたけど……姉さんまでしてるし。

 ライル兄さんと、セシリアさんは立ってるけど。



「マルス、ごめんね!」

「マルス様、すいません!」

「師匠、ごめんなさい!」

「ボスッ、すまねえ!」

「主人よ、申し訳ない」

「御主人様、ごめんなしゃい——あぅぅ……舌噛んだよぉ〜」


 はい? なんなんだ?

 とりあえず……ラビは平気かな?


「みんな、マルス様がお疲れなことに気づかなかったので……それで、正座してますわ」

「ああ、そういうことね。別に、みんなが謝ることないよ。俺の体力がなかっただけだし」

「し、しかし! 私が担げば!」

「オレが!」

「俺もだ」

「それはダメだよ、フォーメーションが崩れるから。それに、みんなだって頑張ったし、疲れていたはずだ。何より、俺は君たちと対等でいたい。もちろん、助け合うことは大事だけどね」

「ふふ……本当に大きくなって」


 そう言って、姉さんがみんなを立たせていく。

 俺もシルクにお礼を言って、ルリを抱きかかえて起き上がる。


「うん、それで良いよ。さて……じゃあ、まずは宴と行きますか!」

「キュルルー!」


 カエル料理かぁ……怖いけど、楽しみでもあるね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る