五章 マルス、仲間たちと絆を深める

74話 話し合い

 都市バーバラに帰ってきて、数日が過ぎ……。


 俺がいない間にも、少しずつ改革は進んでいたみたいだ。


 ただ今、王族中心の会議をしている。


というか、王族多くない? これって良いの?


 もちろん、他のみんなもいるけど聞いてるだけだ。


「へぇ、冒険者たちの中に氷の魔法を使える人が……」

「ええ、そうよ」


姉上が、俺に変わって稽古をつけてくれたらしいけど……。


「お、鬼だったぜ」

「うわぁ……想像がつくや」

「二人とも——何か?」

「な、なんでもねえ!」

「な、なんでもないよ!」

「ふふ、相変わらず愉快な兄弟だな」


……なんか、すっかり馴染んでるよね?

やっぱり、本人が言うように変わり者だからかな?


「それで、私は何をすれば良い?」

「うーん……正直言って、特にはないですよ」

「むっ? そうなのか?」

「流石に、森に連れて行って怪我でも負わせたら責任問題になりますし……」

「私は気にしないが……仕方あるまい」


ほっ……とりあえず道理のわかる人で良かった。


「俺が守るからご安心ください!」

「馬鹿は黙ってなさい」「兄さん、黙ってて」

「ふふ、そう言ってやるな。ライル殿、ありがとう。その時は、頼りにさせてもらうよ」

「ぐはっ!? 我が人生に一片の悔いはなし——」


 セシリアさんの微笑に、ライル兄さんが崩れ落ちた!


「レオ、ベア」

「へいっ、またっすね」

「はぁ、またか」


 ライル兄さんは、二人に運ばれていく。

 二人も含めて、最早誰も突っ込まない。

 何故なら……。


この光景も何度目だろう? ……もう慣れてきちゃった。


「セシリア……少し楽しんでない?」

「ふふ、ばれたか……実は少し楽しい。女姉妹で育ったし、歳下の男性に好かれるなど経験がないからな」

「なるほどねぇ……私も、そろそろ考えようかしら?」

「ふふ、お互いに売れ残りというやつだな」

「あら、違うわよ。こっちから選んでないだけよ」

「ハハッ! それは良いセリフだ」


うん……こっちも、随分と仲良くなったよね。

姉さんと対等に話せる人って少ないから、本当に連れてきて良かった。





 その後、真面目な話に戻して……。


「しかし、それではただ飯ぐらいになってしまう。こんなに美味しい食事と温泉、暖かい部屋で過ごさせてもらってるんだ。何かしないと気が済まない」


相変わらず、カッコいい女性だこと。

全く、どっかの穀潰しに聞かせてあげたいよ……俺のことですねー。


「うーん、とりあえず姉上のお茶の相手をしてください。お姉ちゃんは、割と甘えることが下手くそなので」

「マ、マルス!」

「そんなことならお安い御用だ。私も楽しいからな」

「そ、そう……まあ、別に良いわよ」


姉上がデレてる……なんだろう……百合に目覚めたりしないよね?


「あとはライル兄さん……を適当に相手してください」

「ふふ、わかった」


こっちは、もう知らないっと。

まさか……ライル兄さん対ライラ姉さんとかにならないよね?


「あとは剣の稽古とか、魔法の鍛錬とか指導してくれると助かります」

「うむ、それなら役に立てそうだな」

「あとは……まだ先の話ですけど、セレナーデからくる人員の責任者とまとめ役をお願いします」


 これから街道を整備して、セレナーデとバーバラを繋げる作業をする。

 そのためには、双方の責任者が権限を持ってないといけない。


「ああ、もちろんだ」

「そしたら、こちら側は私が適任ね。ライルじゃ、セシリアの言いなりになっちゃうし」

「おやおや、これは手強そうだ」

「じゃあ、その辺りの調整は私達でするわ。マルス、貴方は思う通りにやりなさい。お姉ちゃんとして、しっかり補佐してあげるから」

「姉さん! ありがとう!」

「ふふ、素直でよろしい。じゃあ、いきましょ」


 姉上はセシリアさんを連れて、部屋から出て行く。


 すると……。


「マルス様」

「リン、どうしたの?」

「王族が……こんな一箇所にいて良いんですかね?」

「確かに……主要人物が集まりすぎですわね」

「やっぱり、みんなもそう思う?」


 マックスさんやヨルさん、ラビやシロまで頷いている。


「しょ、正直申しますと……我々では荷が重いです」

「ヨル殿のいう通りです……面目無い」

「い、いや! 謝ることないから! こっちが悪いし……ちょっと考えるね」


そうだよね、無理もないよね。

庶民が王族の警護を担当するとか……。

守られるような人たちじゃないけど、それとこれとは話が別だし。


 「というか……」


ライル兄さんはいつまでいるんだろ?

 あれ? そもそも、なんでいるんだっけ?

 ……まあ、良いや。






 その後、俺は手紙を書く。


「ロイス兄さんに報告と……ライル兄さんについてと……護衛についてだね」


 それが終わったら、リンとシルクと話し合う。


「それで、何から始めますの?」

「うーん……やりたいことが多すぎる!」

「それなら、優先順位を決めてみては?」

「そうだね……まずは整理してみよう」


 俺は紙を用意して……。


「まずは食料自給率の向上を目指して……」

「それは進んでおりますわ。マルス様の魔法によって作物の育ちも良いですし、狩りの方も順調ですわ」

「ということは衣服類も解決に向かってると……住処はあるし、賃金の上昇も解決に向かって……冒険者達も狩りの仕事や、村々の警護の依頼をしてるから不満も減ってきたし」


あれ? ……もしかして、意外と良い感じ?


「とてつもない速さで改革が進んでますわ」

「まだ一ヶ月と少しですからね」

「じゃあ……いよいよ、森を開拓していこうかな」


 これから住民も増えていくし、魔物が来たらわかるように見張り台とか建物を設置したり……。


 川への道を作って、サーモスをとったり……それをセシリアさんに譲らないとだし。


 さて……ここからが本番だね!

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