69話 事の顛末

 さて、翌朝になりましたが……。


 俺とレオの顔には、腫れた跡があります。


「ご、ごめんなさいですの〜!!」

「い、いや、平気だから」


 ほっぺが痛いけどね。


「姐さん、酷いっす」

「す、すまない!」


 はい、レオなんか五メートルくらい吹っ飛んだもんね。

 年末行事のフットンダとか目じゃないくらいに。

 良かったよ、俺があんなの食らったら……ブルブル。


 さて……なんでこうなったんだろうか?








 ◇



 結局、大して眠れなかった俺は……朝早くから庭に出ていた。


 もちろん、俺は元の部屋から出て……レオは下の階から出てきた。


(その際にセシリアさんが寝ていた部屋を通ったけど……めちゃくちゃ良い匂いしたし)


「ボス、早起きですな」

「いや、顔が笑ってるけど?」

「クク、すいやせん」

「仕方ないじゃん……俺だって年頃だし」


(あぁー惜しいことしたかなぁ……でもなぁ……)


 そのまま、日向ごっこをしていると……。


「マ、マルス様ぁぁ〜!」

「やあ、シルク。俺がこんな朝から起きてるからって、そんなに驚かな——イタイ!?」


(思いっきりビンタされたよ!?)


「レオ! 貴様がついてながら、何をしていた!?」

「ま、待ってくれ! 話を——グヘェ!?」


(レオが五メートルくらいぶっ飛んだよ!?)


「むぅ〜! どうしてですの!?」


 そう言って、ぽかぽかと俺を叩いてくる。


(ふくれっ面も可愛いなぁ……いかんいかん、とりあえず誤解を解かないと)


「し、シルク、どうしたの?」

「セシリア様がマルス様の部屋から出てきたって!」

「ああ、そういうことね」


(あれ? 事情は説明してくれてない感じ?)


「マルス様、そこで正座を」

「いや、リン……」


 すると……。


「ま、待ってくれ! は、速すぎるぞ!」


 息を切らしたセシリアさんがやってくる。





 ◇




 そして別室に移動し、誤解を解いてくれたってわけだね。


「マルス殿! 申し訳ない!」


 今にも土下座をする勢いで、セシリアさんが謝ってくる。


「い、いえいえ、俺も悪かったです」


 どうやら、リンとシルクにセシリアさんが説明しに行ったら……。

 二人がすでにいなく、メイドから俺とセシリアさんのことを聞いたらしい。

 そして、そのまま突撃をしてきたってわけだ。


「うぅ……ごめんなさい」


 シルクが俺の頬に手を当てて、癒しの力を使う。


「だから、平気だって。ただ、なんで早起きしたの?」

「なんか、嫌な予感がしましたの……それで、起きたら……」

「なるほどね」


(……女の勘って恐ろしい……)


「マルス様、すみません」

「良いよ、リンも。まあ、信用されてないのは辛いけど」

「「はうっ!?」」


 二人が気まずそうに俯いてしまう。


(まあ、俺も勝手に出てきちゃったしね。それに、そういうのは信用されてないとは少し違うしね。感情が抑えきれなかっただけだと思うし……それだけ、俺を想ってくれてるってことかなと思うし)


「はいはい、もう良いよ」

「よくありませんわ!」

「そうです!」

「えぇ〜じゃあ、罰を命じます」

「「ゴクリ」」

「ほっぺにチューを所望します!」

「「へっ??」」


 二人がポカンとした顔をする。


「ほら、早く」

「は、はぃ……」

「わ、わかりました」


 二人に挟まれ……柔らかな唇が、俺に触れる。


「はぅ……」

「あぅぅ……」


(オォォォ!! キタァァ!! 憧れのダブルほっぺにチュー!!)


 実は密かに憧れていた!

 某ビストロスマッ○の勝者へのキスを!

 まさか異世界にて叶うとは!


「はい、これで終わりです!」

「あのぅ……オレは?」

「「「あっ——」」」


 そこには、未だに頬が腫れているレオがいた。


 もちろん、シルクが癒してくれましたとさ。









 その後、国王様と面会する。


「す、すまなかった!」

「い、いえ! 頭を下げないでください!」

「事前に言っておくべきだった……しかし、そうすると」

「いえいえ、分かってます。リアリティがなくなりますからね」

「そういうことだ……」

「ただし……見返りは求めますよ?」


(敵対されたわけじゃないけど、流石になにも言わないのは国としてもまずい)


「もちろんだ。なにを望む?」

「では——ありったけの米とワインを。そして、それを積む馬車を」

「わ、分かった……だから、シルク嬢……そんなに睨まんてくれ」

「コホン! この後のお話し合いで……誠意を見せてくれますわよね?」


 そこには氷の表情を浮かべるシルクがいた。


「も、もちろんだ。幸い、大臣達は引き下がった。これで邪魔をする者もいまい」

「なら良いですわ」

「ほかに望みがあるならいうと良い」


 すると、シルクが頬を染め……俺に視線を向ける。


「な、なら……マルス様と同じ部屋が良いですわ」


(ナニィ!? 無理無理! 寝れないよ! 野営とは状況が違うし!)


「なに? しかし、淑女たるそなたが……」

「父上? その淑女に夜這いを命じたのは誰です?」

「いや、お主は淑女という年齢じゃ……」

「ナニカ?」

「い、いや……余が悪かった」


(なんか……もっと色々文句を言おうかと思ったけど、可哀想になってきたなぁ)


 もちろん、言いたいことはまだある。

 でも、国王様だって綺麗事だけじゃやっていけないだろうし……。

 ここらが引き時かな?


(そうなると……この空気を変える必要があるね)


「はい、シルクとは無理です」

「マ、マルス様!? や、やっぱり、歳上がよろしいですの……?」

「違うよ、シルク。君みたいな可愛い女の子と一緒の部屋じゃ……ドキドキして眠れない」

「へっ……? ……っ〜!!」


 シルクが耳まで真っ赤になり、両手で顔を隠す。


 すると……全員の視線が物語っていた。


『マルス殿(様)、グッジョブ!!』と……。


(ふふふ、俺だって決める時は決めるのさ!)


「キュン?」


 俺の腕の中で眠っていたルリが目を冷ます。


「あら、今更起きたの?」

「キュイ!」

「ルリ、シルクのところに行ってあげて」

「キュイー!」


 ふわふわと浮いて、シルクの腕に収まる。


「ふふ、おはようございますわ」

「キュイキュイ!」

「可愛い……」


 仕上げはルリによる可愛げアタック!


(少し痛い目にあったけど、良いこともあったし……正直言って、買いたい物が多すぎて予算には不安があったし……これで、ただで米が大量に手に入るし……)


 これにて……一件落着だねっ!




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