53話 オークの群れ、そして……

 休憩をしたら、再び探索の開始だ。



「よし! しゅっぱーつ!」

「でも、帰りが遅くなりませんこと?」

「そうですね……日が暮れると魔物や魔獣も厄介ですね。私達獣人はともかく、人族には見え辛いでしょうし」

「うーん……」


(……でも、まだ卵を見つけてないしなぁ。これはこれでありだけど、卵違いだったし)


「いや、問題ないのではないか?」

「ベア?」

「主人の魔法は強力だ。あれなら、夜であっても平気だろう。幸い、俺とレオは力も戻ってきている。これなら、一晩くらいは余裕で起きていられる」

「おうよっ! ボス、俺らが見張りしますんで安心して寝て良いっすよ」

「なるほど……それならば問題ないですね。いざとなれば、私がどうにしましょう」

「待って。シルク、平気?」

「……少し怖いですけど……マルス様が守ってくださいますか?」

「うん、もちろん」

「じゃあ……頑張りますわ」


 ということで、探索を続けることになる。








 魔物を倒しつつ、奥へ進む。


「く、暗くなってきましたわ……」

「シルク、大丈夫だよ。みんないるから」

「は、はぃ……」


(やっぱり、侯爵令嬢であるシルクにはキツイよなぁ……でも、本人がついていきたいって言うし……俺に出来るのはしっかり守ることだね)


「ご主人様、何か聞こえます! ものすごい速さで、こっちに向かってます!」

「ベア! レオ!」

「「おうっ!!」」


 すぐさま二人が前に出る。


「リン!」

「ええ、お任せを。ラビ、貴方は警戒に専念しなさい」

「はいっ!」

「シルク、俺の背中から離れないでね」

「は、はぃ」


 そして……現れたのは。


「ブホェ!」

「ブベェ!」


「オークの群れか!」

「十じゃきかないぜ!」

「問題ないよ——アイシクルエッジ」


 空中に氷の刃を出現させ……それらを飛ばす!


「フゴォ!?」


 手や足に当たり、奴らの動きが鈍る。


「今のうちに!」

「レオ!」

「おうよっ!」


 その隙をついて、二人が前に出て……なぎ倒していく。


「ふぅ……やっぱり、威力調整が難しいなぁ」


(魔獣たちのために、なるべく自然を破壊したくないし……大技を使ったら、遠くにいる魔獣達ごと殺しちゃうかもだし……)


「魔力は平気ですの?」

「うん、全然余裕だね。そういや、そういうのも姉さんに調べてもらおうかな」

「あれ? ……大きい生き物が……きます!」


 ラビの言葉に、リンが反応する。


「レオ! ベア!」

「むっ!」

「うおっ!?」


 次の瞬間——体当たりによってベアが吹き飛ぶ!


「ぐはっ!?」

「ブルァァ——!!」

「ベア!? ちくしょーが!」


 レオが相手をしているその魔物は……。

 オークを一回り大きくした、お相撲さんみたいなやつだった。


「ひっ!?」

「ジェネラルです! ランクはD級です!」

「なるほどね……ここまで進むと、こういうのも出てくるわけね」


 シルクの手を握りつつ、俺は魔法を唱える。


「アースランス」


 俺の魔法が奴に当た……らない。


「ブルァ!」

「へぇ……加減したとはいえ、俺の魔法を拳で砕いたのか」

「流石に、あの辺りになると強いですね——私がやります」

「じゃあ、牽制してくれる? そしたら、トドメを刺すから」

「ええ、お願いします。ベア殿! レオ! 交代です!」


 二人が下がってきて、俺たちの守りにつく。


「むぅ……すまぬ、主人よ。良いのをもらってしまった」

「チッ、今のオレではタイマンはきついぜ」

「気にしなくて良いよ。君たちは、まだ万全の状態じゃないんだからさ。それに、リンがいるからね」


 リンの様子を伺うと……。


「ブルァ!」

「甘いですね——シッ!」


 拳や棍棒の攻撃を的確に躱し、居合斬りでカウンターをくらわせる。


「ゴキァ!?」

「まだまだです! セアッ!」


 目にも留まらぬ速さで、刀を振り抜く!

 その度に、オークジェネラルから血が流れていく。


「あ、姐さん……すげぇ」

「これが最強種と言われる炎狐族の力か……見事だ」

「わぁ……かっこいいですねっ!」

「リン……綺麗……やっぱり、貴方が羨ましいですわ」

「これ、俺いらないかもね」


(強くなったなぁ……あんなに弱々しかったのに。全部、俺のためになんだよね……)


 昨日記憶を思い出したから、強く思う。


「なら……俺もリンが仕えるに恥じない男にならないとね」

「マルス様?」

「ちょっと行ってくるね!」


 俺は駆け出して、ジェネラルに迫る!


「マルス様!?」

「ほら! 俺を守って! 至近距離からくらわせるから!」

「ふふ——もちろんです!」


 リンは満面の笑みで応える。


「ゴァァァァ!」


 棍棒が振り下ろされるが……。


「やらせません!」


 刀を斜めにして、棍棒を受け流しつつ——すれ違いざまに一太刀!


「ゴァ!?」


 俺はその隙を逃さず近づき……。


「ウインドブレード!」


 魔力を圧縮し、手刀をイメージして振りぬく!


「ゴァ!? ………ァァァ!」


 少し遅れて……奴の体が真っ二つなり……大きな魔石となる。


「ふぅ……イメージ通りにいったね」

「お見事です、マルス様」

「リンこそね。本当に強くなって……ありがとね」

「な、何を?」

「俺のために強くなってくれて……リンには感謝してるんだ」

「わ、私は……その言葉があれば充分です」

「そっか……」





 その後、魔石を回収して……。


 ラビが反応した方に向かうと……。


「いた……ゲルバだ」

「何やら、木の陰に座ってますね」


 一頭のゲルバがいて、木の陰に座っている。


「確か、卵はオスが温めると聞いたことがありますわ」

「ということは……あの下にあるかもしれないってことか」

「どうする?俺が引きつけるか?」

「いや、万が一卵が割れると嫌だから俺がやるね」


(土や風だと、余波で卵が割れる恐れがある。破片とかも落ちたらやだし……水魔法を圧縮させて……)


「水の刃よ、全てを切断せよ——アクアブレード」


 俺の水の刃が、ダチョウのように伸びてる首に吸い込まれ……。

 次の瞬間——地面に首がずれ落ちる。

 おそらく、相手は死んだことにすら気づいていないだろう。


「よし、上手くいった」

「み、水魔法であんな威力を?」

「ふふ、リン。要は、使い方次第ってことさ」

「マルス様……凄いですわね」

「主人は底なしか……」

「オレたちも頑張んねえとな!」

「わぁ……何もせずに勝っちゃった」



 その後、調べると……やっぱりあった。


「ふふふ、卵ゲットだぜ!」


(これで、色々作れるぞぉ〜!)


 そのうちケーキとかも作りたいし……夢が広がるねっ!




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